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【新婚旅行編】十一日目:随分と、善がっておられましたね……?
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穏やかな波が引いていくように、時間が経つにつれて心地のいい余韻も、熱を持った昂りも自然と収まっていく。そうして残ってしまったのは。
やってしまった……
思わず俺の抱き枕に顔を埋めたくなる後悔だった。
服越しでも柔らかな胸板はその程よい弾力で、遠慮なく額をぐりぐり押し付けてしまっている俺を優しく受け止めてくれている。
優しいフォローはそれだけではない。大きな手のひらが宥めるように撫でてくれている。頭を、背中を。時には幼ない子供をあやすように、ぽん、ぽん、と。お陰で波立った気持ちが徐々に和らいできてはいるんだけれども。
何で、俺まで……? バアルのこと、前みたいにバアルさんって呼んじゃって……敬語まで……それどころか、自分から恥ずかしいことを……いっぱい、言っちゃって……
「アオイ」
「ひゃいっ」
ただただ優しく俺を甘やかしてくれていた抱き枕。バアルからの呼びかけに、返事が情けなくひっくり返ってしまう。
弾かれるように鍛え抜かれた胸板から顔を離し、広い背を抱き締めていた腕の力を緩めれば、見下ろす緑の瞳とかち合った。途端に瞳が満足そうに細められて、緩やかに口角が上がっていく。
「随分と、善がっておられましたね……?」
「あ、ぅ……」
楽しげな声で紡がれたひと言が、鋭い矢となって俺の胸のど真ん中に深く突き刺さる。
絶対に言われちゃうって分かってはいた。とはいえ、一番指摘されたくなかったことだけに、俺は何よりも先に言い訳を口にしてしまっていた。
「だっ、だって……バアルの演技、上手だったから……」
言葉遣いだとか、表情だけじゃない。彼から漂う雰囲気にのまれてしまっていたんだ。目の前に居るバアルは、あの時の俺が選択しなかったバアルなんだって、そう思い込まされてしまっていたんだ。
何かで、演技力のスゴい人ってのは、周りの人達も巻き込んじゃうとか何とか聞いたことがあったけど……実際に体験することになろうとは。
いや、その一端を見たことはあったな。あの時は読み聞かせっていう形だったけれども。
昔々、ホントにあった神様のお話。幼いヨミ様の演技指導の元、何度も読んでいたという物語を聞かせてもらった時も、俺は彼の気迫のこもった台詞に惹き込まれていた。物語にのめり込み、心を揺さぶられていた。
悲しげな台詞を聞けば、苦しいくらいに胸を切なく締め付けられたし、不穏な展開になってしまうと未来は幸せなのだと分かっていてもハラハラしていたのだ。
「……何か、その……ホントに初めて会ったばかりの時に、してもらっちゃってるみたいだなって、思っちゃって……その……」
笑みを深めた唇が、それはそれは嬉しそうに俺が言おうとしている言葉を先取りしてきた。
「昂って、しまわれましたか?」
「っ、言わないでっ!! 分かってるならっ、言わないでよ!!」
「ふふ、申し訳ございません」
そうは言っても、彼の口角は悪戯っぽくゆるりと上がったまま。くすくすと楽しげな笑みも止まることはなく、目尻のカッコいいシワですらも笑っている。
触角だってご機嫌そうに頭の上で揺れっぱなし。背中の羽だって満開の花のように大きく広がっていて、ぱたぱたとはためいている。
全っ然、絶対に、悪いって思ってない。こればっかりは、そう断言出来る。
やってしまった……
思わず俺の抱き枕に顔を埋めたくなる後悔だった。
服越しでも柔らかな胸板はその程よい弾力で、遠慮なく額をぐりぐり押し付けてしまっている俺を優しく受け止めてくれている。
優しいフォローはそれだけではない。大きな手のひらが宥めるように撫でてくれている。頭を、背中を。時には幼ない子供をあやすように、ぽん、ぽん、と。お陰で波立った気持ちが徐々に和らいできてはいるんだけれども。
何で、俺まで……? バアルのこと、前みたいにバアルさんって呼んじゃって……敬語まで……それどころか、自分から恥ずかしいことを……いっぱい、言っちゃって……
「アオイ」
「ひゃいっ」
ただただ優しく俺を甘やかしてくれていた抱き枕。バアルからの呼びかけに、返事が情けなくひっくり返ってしまう。
弾かれるように鍛え抜かれた胸板から顔を離し、広い背を抱き締めていた腕の力を緩めれば、見下ろす緑の瞳とかち合った。途端に瞳が満足そうに細められて、緩やかに口角が上がっていく。
「随分と、善がっておられましたね……?」
「あ、ぅ……」
楽しげな声で紡がれたひと言が、鋭い矢となって俺の胸のど真ん中に深く突き刺さる。
絶対に言われちゃうって分かってはいた。とはいえ、一番指摘されたくなかったことだけに、俺は何よりも先に言い訳を口にしてしまっていた。
「だっ、だって……バアルの演技、上手だったから……」
言葉遣いだとか、表情だけじゃない。彼から漂う雰囲気にのまれてしまっていたんだ。目の前に居るバアルは、あの時の俺が選択しなかったバアルなんだって、そう思い込まされてしまっていたんだ。
何かで、演技力のスゴい人ってのは、周りの人達も巻き込んじゃうとか何とか聞いたことがあったけど……実際に体験することになろうとは。
いや、その一端を見たことはあったな。あの時は読み聞かせっていう形だったけれども。
昔々、ホントにあった神様のお話。幼いヨミ様の演技指導の元、何度も読んでいたという物語を聞かせてもらった時も、俺は彼の気迫のこもった台詞に惹き込まれていた。物語にのめり込み、心を揺さぶられていた。
悲しげな台詞を聞けば、苦しいくらいに胸を切なく締め付けられたし、不穏な展開になってしまうと未来は幸せなのだと分かっていてもハラハラしていたのだ。
「……何か、その……ホントに初めて会ったばかりの時に、してもらっちゃってるみたいだなって、思っちゃって……その……」
笑みを深めた唇が、それはそれは嬉しそうに俺が言おうとしている言葉を先取りしてきた。
「昂って、しまわれましたか?」
「っ、言わないでっ!! 分かってるならっ、言わないでよ!!」
「ふふ、申し訳ございません」
そうは言っても、彼の口角は悪戯っぽくゆるりと上がったまま。くすくすと楽しげな笑みも止まることはなく、目尻のカッコいいシワですらも笑っている。
触角だってご機嫌そうに頭の上で揺れっぱなし。背中の羽だって満開の花のように大きく広がっていて、ぱたぱたとはためいている。
全っ然、絶対に、悪いって思ってない。こればっかりは、そう断言出来る。
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