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白い手と黒い手
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俺の膝の上で丸くなっているふわふわは、すっかりお昼寝タイムを謳歌していた。時折、み、みぅ、などと何やら寝言のような鳴き声を上げてはいるものの、規則正しい寝息を漏らしている。
可愛らしさに和みはすれど、俺の胸中は決して穏やかではない。なんせ、今日知り合ったばかりの宇宙人であり、命の恩人からとんでもないお願いをされてしまったのだから。
俺の番になる為にはどうしたらいいのか教えて下さい、だなんて。
「リアム……取り敢えず、じっくり話し合いたいっていうか……俺からも色々と聞きたいことがあるんだけど……」
「構いませんよ。先ずは、お互いに話し合うことが大切だと教えてもらいましたから」
「……ありがとう」
……良かった。話し合いの余地はあるようだ。まぁ、そもそもの話、俺がその……方法? とやらを教えられたとして、急にどうこうなる話でもないからな。要は、あれと同じだろう。好みのタイプってどんな人なんですかって聞かれているみたいな? うん。やっぱり、すぐにどうこうなる様なものじゃないな。
ふと俺の左頬を何かがつついてきた。
ちょん、という効果音が似合いそうな触れ方は恐る恐るというか、興味津々というか。
触れてきた温度は冷感クッションの様にひんやりとしている。その温度も相まって少し驚いたもののイヤな気はしない。夏場であれば寧ろ触れていたい、こっちから触れさせてもらいたいくらいだ。
横目でそれとなくその正体を伺えば、見えたのは影のように薄ぼんやりとした黒。リアムのコートの裾から伸びてきていた二本の手、その内の一つが触れてきていたらしい。
頬から少し離れた位置で人差し指だけを伸ばした格好で固まっているそれは、よくよく見れば彼の瞳と似ていた。星々の煌めきのような光が見えたり。宇宙の色のように赤や黄色や緑やらが黒に滲んでいたり。やっぱり不思議でキレイな色をしている。
俺が見ていることに気が付いたのか、指を差し出したまま微動だにしない。まるで動物と触れ合う前に挨拶をしようとしているかのような。自分は安全なのだと俺に示そうとしているような。
「それで、カイト様は何をお聞きしたいのでしょう?」
「え、あー……この手も……リアムの手ってことであってるのか?」
手の方ばかりに気を取られていたもんだから、咄嗟に尋ねてしまっていた。そんでもって、触れてしまってもいた。指し示そうとした際に、うっかり。それでも手は俺の側から離れない。驚きにビクついたりもしなかった。
……やっぱりひんやりしてるな。感触も不思議な感じだ。ふにふに柔らかいような。でも。ぷにっとした弾力があるような?
最初はそのつもりはなかったものの、興味が勝ってしまっていて、ついつい無遠慮に何度も触れてしまっていた。それでも彼のもう一つの手はされるがまま。俺の好きにさせてくれている。
「はい。私の手です」
頷いたリアム自身も平然としている。向かいの席からでも俺の行動は、見えているだろうに。
お互い様って感じなのかな? 向こうも俺に触ってきたから、俺が触ってきても構わないみたいな?
「何か気になることがありましたか?」
「ああ、うん……」
いまだに動かない大きな黒い手を見てから、今はテーブルの上で行儀よく重ねられている小さな白い手を見る。
「そっちの手とは違ったりするのか?」
「違う、とは?」
「あー……そう、だな……感覚とか? 触ったときの」
ぱっと思いついたままに尋ねれば、リアムはますます不思議そうに首を傾げてしまった。
分からないよな。俺にとっては不思議なことでも、彼にとってはごく普通のこと。そうして今まで生きてきたんだからさ。俺だって自分の右手と左手とで、どう感覚が違う? だなんて聞かれても、よく分からないし。違いがあるのかないのかも。
「ごめん、俺から聞いておいて……」
「いえ」
考えるようにリアムは軽く目を伏せた。
質問を変えた方がいいだろうか。俺も考えようとしていたところで、今度は頭の右側を撫でられた。覚えのあるひんやりとした心地はもしかして。
右を見れば、やっぱり黒。宇宙の何処かの景色を切り取ったような、不思議な色をした手がすぐ側にいた。俺が反対の手に触れていたことで良いと判断したのか、俺の頭をそうっと撫でている。
驚きはしたけれど、やっぱりイヤな気はしない。手つきが優しいからだろうか。
可愛らしさに和みはすれど、俺の胸中は決して穏やかではない。なんせ、今日知り合ったばかりの宇宙人であり、命の恩人からとんでもないお願いをされてしまったのだから。
俺の番になる為にはどうしたらいいのか教えて下さい、だなんて。
「リアム……取り敢えず、じっくり話し合いたいっていうか……俺からも色々と聞きたいことがあるんだけど……」
「構いませんよ。先ずは、お互いに話し合うことが大切だと教えてもらいましたから」
「……ありがとう」
……良かった。話し合いの余地はあるようだ。まぁ、そもそもの話、俺がその……方法? とやらを教えられたとして、急にどうこうなる話でもないからな。要は、あれと同じだろう。好みのタイプってどんな人なんですかって聞かれているみたいな? うん。やっぱり、すぐにどうこうなる様なものじゃないな。
ふと俺の左頬を何かがつついてきた。
ちょん、という効果音が似合いそうな触れ方は恐る恐るというか、興味津々というか。
触れてきた温度は冷感クッションの様にひんやりとしている。その温度も相まって少し驚いたもののイヤな気はしない。夏場であれば寧ろ触れていたい、こっちから触れさせてもらいたいくらいだ。
横目でそれとなくその正体を伺えば、見えたのは影のように薄ぼんやりとした黒。リアムのコートの裾から伸びてきていた二本の手、その内の一つが触れてきていたらしい。
頬から少し離れた位置で人差し指だけを伸ばした格好で固まっているそれは、よくよく見れば彼の瞳と似ていた。星々の煌めきのような光が見えたり。宇宙の色のように赤や黄色や緑やらが黒に滲んでいたり。やっぱり不思議でキレイな色をしている。
俺が見ていることに気が付いたのか、指を差し出したまま微動だにしない。まるで動物と触れ合う前に挨拶をしようとしているかのような。自分は安全なのだと俺に示そうとしているような。
「それで、カイト様は何をお聞きしたいのでしょう?」
「え、あー……この手も……リアムの手ってことであってるのか?」
手の方ばかりに気を取られていたもんだから、咄嗟に尋ねてしまっていた。そんでもって、触れてしまってもいた。指し示そうとした際に、うっかり。それでも手は俺の側から離れない。驚きにビクついたりもしなかった。
……やっぱりひんやりしてるな。感触も不思議な感じだ。ふにふに柔らかいような。でも。ぷにっとした弾力があるような?
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「はい。私の手です」
頷いたリアム自身も平然としている。向かいの席からでも俺の行動は、見えているだろうに。
お互い様って感じなのかな? 向こうも俺に触ってきたから、俺が触ってきても構わないみたいな?
「何か気になることがありましたか?」
「ああ、うん……」
いまだに動かない大きな黒い手を見てから、今はテーブルの上で行儀よく重ねられている小さな白い手を見る。
「そっちの手とは違ったりするのか?」
「違う、とは?」
「あー……そう、だな……感覚とか? 触ったときの」
ぱっと思いついたままに尋ねれば、リアムはますます不思議そうに首を傾げてしまった。
分からないよな。俺にとっては不思議なことでも、彼にとってはごく普通のこと。そうして今まで生きてきたんだからさ。俺だって自分の右手と左手とで、どう感覚が違う? だなんて聞かれても、よく分からないし。違いがあるのかないのかも。
「ごめん、俺から聞いておいて……」
「いえ」
考えるようにリアムは軽く目を伏せた。
質問を変えた方がいいだろうか。俺も考えようとしていたところで、今度は頭の右側を撫でられた。覚えのあるひんやりとした心地はもしかして。
右を見れば、やっぱり黒。宇宙の何処かの景色を切り取ったような、不思議な色をした手がすぐ側にいた。俺が反対の手に触れていたことで良いと判断したのか、俺の頭をそうっと撫でている。
驚きはしたけれど、やっぱりイヤな気はしない。手つきが優しいからだろうか。
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