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黒の場合
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僕はじっとその写真を見た。
色白な肌の、紅色の目の少年。
特徴的な見た目に、決定的なのは彼が夜、星の光に光り輝く体質だということ。
「恒星の様なその姿から、星人の名で呼ばれているんだ。」
若い書記官は、自分よりも若いその人物を探すのに、相当な労力を使っているようだ。
期待薄といった様子で、僕に向かって軽く手を振ると、疲れた表情で言う。
「と、言う訳で、君には魔法幽体都市に出向いてもらう。頼んだよ。」
結局僕は、二つの組織から、同じ人物の捜索を依頼されてしまったのだった…。
魔法幽体都市ことメイルノータは、想像以上に広大な場所だった。
北には巨大な山が聳え、東には広範囲に及ぶ妖精の森と迷宮。南には星々が輝く町があり、西には何処まで続くかも分からない海岸が広がる。
こんな広い土地に、一人の人物を見つけ出すのは、並大抵の努力じゃ無理だった。
取り敢えず僕は、最も手前の町から探していくことにした。
「灰色の髪に、赤い目の男の子?さあ、分かんないねぇ。人間の子供はこの辺沢山いるんだけど…。」
宝石商の女性は首を傾げてそう言った。
「そうですか。忙しいところすみません。」
僕は宝石店を後にした。
やっぱり、すぐには見つからないか………。
「しかも希少種なら、誰かに見つかるのを怖れて、何処かで隠れているかもしれない。それだと、僕にはとても見つけられない………。」
近くを走り去る子供達を見て、僕は嘆息した。
子供達は皆、七色の光を纏わせていて、それが思念によるものだと気付く。
そう言えば、ルーナさんの仲間っていうのは、一体誰なのだろう。
ひょっとしたら、その人達に会えば何か分かるかもしれない。
僕は急ぎ足で、次の町に向かった。
その町は、いつも夜空の星が光っていて、町の光はまるで蛍のようで、幻想的な雰囲気に包まれていた。
星、光。
この町なら、何か手掛かりがあるかもしれない。
根拠もなく、そんな事を思いながら、僕は町を探索し始めた。
手始めに、手の前の酒場に入ることにする。
「いらっしゃい。」
ドアベルの独特な音に迎えられ、僕は店内に入った。
店内には、僕以外に客は居ないようだった。
「お好きな席にお座りください。」
店主にそう勧められ、僕は会釈して、カウンター前に座った。
「あの、人を探しているんです。」
水を持ってきた店主に、僕はそう用件を伝えた。
いきなりの事に黙る店主に、更に僕は言葉を重ねる。
「あの、灰色の髪に赤目の少年なんですが、見たことありませんか?」
焦りからか、どもる僕の唇。
店主はまじまじと僕を見ていたが、突然ぷっと口を緩ませた。
「お客さん。この町には初めて来たのかい?それなら知らなくて当然だが。まずは水でも飲んで落ち着いた方が良い。」
そう言って店主は、僕の目の前にグラスを差し出した。
「成る程、政府の役人さんでしたか。」
これは失礼しました、と頭を下げる店主に、僕は慌てて手を振ることしか出来ない。
「いえ………役人とは言っても、つい先日就いたばかりの新参者です。」
「そうですか。最近選出された外交官とは、貴方の事でしたか。」
意外にも店主はそんな事を言ってのけた。
僕の事を知っている?
いや、僕と言うよりは外交官という職が有名なのか。
「失礼ですが、お客さん。名前は何と言いますか?」
突然そう言われた僕は、ぴたりと動きを止めた。
目前に立つ、小太りの男性を凝視する。
そんな僕の様子に、警戒されたと思ったのか、店主は自分の禿げた頭を掻きながら、言い訳するように言った。
色白な肌の、紅色の目の少年。
特徴的な見た目に、決定的なのは彼が夜、星の光に光り輝く体質だということ。
「恒星の様なその姿から、星人の名で呼ばれているんだ。」
若い書記官は、自分よりも若いその人物を探すのに、相当な労力を使っているようだ。
期待薄といった様子で、僕に向かって軽く手を振ると、疲れた表情で言う。
「と、言う訳で、君には魔法幽体都市に出向いてもらう。頼んだよ。」
結局僕は、二つの組織から、同じ人物の捜索を依頼されてしまったのだった…。
魔法幽体都市ことメイルノータは、想像以上に広大な場所だった。
北には巨大な山が聳え、東には広範囲に及ぶ妖精の森と迷宮。南には星々が輝く町があり、西には何処まで続くかも分からない海岸が広がる。
こんな広い土地に、一人の人物を見つけ出すのは、並大抵の努力じゃ無理だった。
取り敢えず僕は、最も手前の町から探していくことにした。
「灰色の髪に、赤い目の男の子?さあ、分かんないねぇ。人間の子供はこの辺沢山いるんだけど…。」
宝石商の女性は首を傾げてそう言った。
「そうですか。忙しいところすみません。」
僕は宝石店を後にした。
やっぱり、すぐには見つからないか………。
「しかも希少種なら、誰かに見つかるのを怖れて、何処かで隠れているかもしれない。それだと、僕にはとても見つけられない………。」
近くを走り去る子供達を見て、僕は嘆息した。
子供達は皆、七色の光を纏わせていて、それが思念によるものだと気付く。
そう言えば、ルーナさんの仲間っていうのは、一体誰なのだろう。
ひょっとしたら、その人達に会えば何か分かるかもしれない。
僕は急ぎ足で、次の町に向かった。
その町は、いつも夜空の星が光っていて、町の光はまるで蛍のようで、幻想的な雰囲気に包まれていた。
星、光。
この町なら、何か手掛かりがあるかもしれない。
根拠もなく、そんな事を思いながら、僕は町を探索し始めた。
手始めに、手の前の酒場に入ることにする。
「いらっしゃい。」
ドアベルの独特な音に迎えられ、僕は店内に入った。
店内には、僕以外に客は居ないようだった。
「お好きな席にお座りください。」
店主にそう勧められ、僕は会釈して、カウンター前に座った。
「あの、人を探しているんです。」
水を持ってきた店主に、僕はそう用件を伝えた。
いきなりの事に黙る店主に、更に僕は言葉を重ねる。
「あの、灰色の髪に赤目の少年なんですが、見たことありませんか?」
焦りからか、どもる僕の唇。
店主はまじまじと僕を見ていたが、突然ぷっと口を緩ませた。
「お客さん。この町には初めて来たのかい?それなら知らなくて当然だが。まずは水でも飲んで落ち着いた方が良い。」
そう言って店主は、僕の目の前にグラスを差し出した。
「成る程、政府の役人さんでしたか。」
これは失礼しました、と頭を下げる店主に、僕は慌てて手を振ることしか出来ない。
「いえ………役人とは言っても、つい先日就いたばかりの新参者です。」
「そうですか。最近選出された外交官とは、貴方の事でしたか。」
意外にも店主はそんな事を言ってのけた。
僕の事を知っている?
いや、僕と言うよりは外交官という職が有名なのか。
「失礼ですが、お客さん。名前は何と言いますか?」
突然そう言われた僕は、ぴたりと動きを止めた。
目前に立つ、小太りの男性を凝視する。
そんな僕の様子に、警戒されたと思ったのか、店主は自分の禿げた頭を掻きながら、言い訳するように言った。
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