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第十一章 ほふられた子羊こそは
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『人間だったのだ、神は。
しかも人間と自我のみじめな一かけらに過ぎなかった。
私自身の灰と灼熱から、この幽霊は現れた。
金輪際、彼岸から来たのではなかった。
ーーフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ』
雪花海杜様
こうして改めてお手紙を差し上げるのは、はじめてのことですね。
初めてのお手紙がお別れのご挨拶になるなんて、なんという運命の皮肉でしょうか。
わたしが右手を負傷して入院している間にお見舞いに来て下さったそうですね。
槌谷先輩から伺いました。
ありがとうございました。そして、お会いできなくてごめんなさい。
槌谷先輩も決して悪気があってあなたを遠ざけた訳ではなく、わたしのためを想っての行動だったのだと思います。
彼もわたしに何度も謝ってくれて……だから、海杜さんもどうか、ご容赦下さいね。
病室で静かに移り変わる空を見ていると、様々なことが思い出されました。
あなたと出会った夕暮れのことや、全日本ピアノコンクールで優勝した時のこと、あなたに愛して頂いたこと。
そのどれもが儚くわたしの両手から砂のように溢れ去ってしまいました。
でも、これで良かったのかもしれません。
あなたに愛されるということも、ピアニストとして活躍するということも、わたしには過ぎた夢だったに違いないのですから……。
そんな時、わたしは夕貴君からあのレコードの存在を知らされたのです。
そこで微笑んでいたのは、わたしと瓜二つの一人の女性でした。
「城崎美咲」
あのレコードを見た時のわたしの驚き。
あなたが初めてわたしと通じた晩、わたしの髪を撫でながら譫言のように呟いた言葉。
そして、会長がわたしを誰かと混同して呼んだ名。
全てがそのレコードで微笑む女性に収束していくようで、目眩がしたほどでした。
わたしは友人で記者の伊山凛さんにこのレコードの女性・城崎美咲さんについての調査を依頼しました。
伊山さんはすぐに城崎美咲という女性が十年以上前に活躍したピアニストであったこと。
舞台俳優と駆け落ちし、今は日本にいないことなどを調べて下さいました。
そして、わたしたちは城崎美咲さんと駆け落ちをしたという舞台俳優・杉羅夜斗さんの元を訪ねたのです。
そこで知らされた事実。
わたしは雪花幸造の娘であり、あなたの妹であったという事実。
ああ、なんということでしょう。
既に莢華さんという伴侶を得たあなたへ赦されない想いを抱いたわたしをきっと神様が罰したに違いありません。
*
退院後、この小さな家へと連れて来られました。
会長に与えて頂いたここは、母が過ごした家なのですね。
ひとりぼっちでこの小さな家に取り残されたわたしは、今までの事件のあらましを一人考えていました。
そうして、取り留めない思索に耽るうち、わたしはあなたが真犯人だという恐ろしい結論に至ってしまったのです。
どれほど、自分の浅はかな考えが間違いであることを願ったかしれません。
でも、考えれば考えるほど、わたしの思考はあなたが全てを仕組んだという疑念から逃れることができなくなっていました。
一度沸いた疑惑は、わたしを絡め取り、暗い暗い思考の底へとわたしを沈めました。
わたしはそこから這い上がることができませんでした。
とうとう昨晩、わたしはあなたにその旨を告げましたが、それはその悲しい運命を念押ししただけでした。
では、動機は何なのだろう。
わたしはその一点だけがどうしてもわかりませんでした。
今でもそれだけは、はっきりとはわかりません。
ただ、あなたは雪花家の人々を抹殺しようとしているのだと、それだけはわかりました。
何の罪もない菊珂ちゃんを無残に殺害したという事実に、それは如実に表れています。
それを鑑みれば、あなたの標的が一個人ではなく、この雪花家であることは容易に想像がつきました。
わたしがそのことに気がついた段階で、雪花家の血を引く人間は、まだ会長、そして夕貴君がいました。
復讐を遂げるため、あなたは間違いなく、この二人を手にかけることでしょう。
おお、いけません。
あなたがその手であの夕貴君を殺めるなど……わたしには耐えられないのです。
なんとしてもそれだけは、止めなければ。
でも、わたしは同時にあなたを殺人犯として告発することなど、思いもよりませんでした。
何より、証拠がありません。
ネメシスに捉えられたあなたの行動を止める術など、わたしにはありませんでした。
ただ、どうしてもあなたにこれ以上、誰かを殺めては欲しくなかったのです。
そうなれば、あなたを阻止する方法はただ一つ。
あなたが二人を殺める前に、わたしが二人を殺害する。
これ以外に方法はありません。
何より、このわたしもあなたの憎むべき雪花家の血を引いているのですから。
わたしもあなたのターゲットの一人なのですから、わたしほどこの役目に適当な人間もいないでしょう。
あなたに代わって夕貴君と会長を殺害し、そして、最後にわたし……それに関しては、あなたの手をわざわざ煩わせる必要はありません。
そう。あなたが昨夜おっしゃった通り、夕貴君はわたしが殺しました。
わたしは、あんなにも無邪気であんなにも可愛らしかったあなたの大切な弟をこの手で殺してしまったのです。
いいえ、「あなた」のという表現は正しくはありませんでしたね。
「わたしたち」の大切な弟の命の灯火を、わたしはこの手で消してしまいました。
(作者注:この段階で咲沼美麻は雪花夕貴が雪花海杜の息子であり、雪花幸造の実子でないことを知らなかったと思われる)
わたしはその晩、行動を起こしました。
*
その晩。
里香さんの通夜の晩、わたしは夕貴君を雪花家の浴場に呼び出しました。
浴場の脱衣所には、おあつらえむきの太い梁が走っていたから……。
脱衣所に現れた夕貴君は、いつものようにわたしの顔を見ると、にっこりと微笑みました。
わたしはその無垢な笑顔を見つめたまま、そっと身に付けていた着物の帯を解きました。
今でもわたしはその瞬間に彼が上げた声を忘れることができません。
「ねえ、美麻お姉ちゃん。美麻お姉ちゃんもお風呂に入るの?でも、僕、一緒に入るのは……恥ずかしいな」
そうもじもじと夕貴君は顔を赤らめて、背を向けました。
わたしは、彼に気づかれないよう梁に帯をかけると、そっと背後から夕貴君の首に帯を巻き付けました。
夕貴君は、きょとんとした顔で振り返りました。
無邪気であどけないその顔。
どこか海杜さんに似たその顔。
ごめんなさい。
ごめんなさい。夕貴君。
こうするしかないの。
あの人にこれ以上罪を重ねさせないためには……わたしの手であなたを殺すしか……。
ごめんなさい……!!
わたしは左手で思い切り帯を引きました。
滑車の原理で帯は容赦なく幼い首筋を締め上げ、夕貴君は声も上げずに逝きました。
わたしは恐ろしい人間に成り下がってしまいました。
いいえ、わたしはもう人間ではないのかもしれません。
わたしは右手を使うことができません。
だから、絞殺となれば、きっと嫌疑から外される。
実際、わたしは事情聴取のときにも何の疑いも持たれず、すぐに釈放されました。
わたしはまだ捕まるわけにはいかなかったから……。
あなたのもう一人のターゲットを殺めるまでは……。
*
あなたのもう一人のターゲット。
それは、雪花会長。
あなたは最後に会長を殺して全てを終わらせようとしている。
だから、わたしは雪花会長を殺害することを決意しました。
会長はこの小さな家に毎晩のように足を運んで下さいましたから、彼を殺害する機会に困ることはありませんでした。
夕貴君が亡くなって二日目の夜。
その晩もわたしは会長に抱かれました。
わたしはそっと毛布とシーツの合間にナイフを隠し持っていました。
今回は特に犯行を隠し立てする気はありませんでした。
会長殺害後、わたしもそのままここで果てようと考えていたからです。
ですが、刃が会長を貫こうとした瞬間。
お父さん……!!
ダメ……できない……!!
わたしはそのままナイフをそっと仕舞い込みました。
わたしはどうしても父を殺すことができませんでした。
おかしいですね。
わたしはあんなに無邪気で可愛らしい夕貴君を殺害した悪鬼だというのに。
父へ刃を向けたあの瞬間、何かが……いいえ、誰かがわたしを留めました。
それは、今思えば、哀れな母の遺志だったように思われてなりません。
お願い、海杜さん。どうか、お父さんのことを赦してあげて下さい。
どうか、お父さんのことは殺さないで下さい。
あなたが愛した可哀想なお母さんのためにも。
*
海杜さん。
わたしは、あなたが本当はわたしを愛して下さっていたのか、それとも母を愛していたのか、ずっと思い悩んでいました。
そのことだけがただ怖かった。
でも、昨晩、わたしにははっきりと確信できました。
あなたは確かにわたしを愛して下さっていたのだと……。
だから、わたしはもう何も怖くないのです。
不思議ですね。
これから死ぬというのに、実の子でもないのに慈しんでくれた義父や義母、そして、母のところにいけると思うと、ちっとも怖くないのです。
今、わたしの心は信じられないくらいに落ち着いています。
そう、丁度、静かな凪の海のように。
わたしは、これまでの犯行の全てを記した手記を持っています。
最期、それを傍らに置いておくつもりです。
それは警察の方が、わたしの亡骸と共に発見することでしょう。
あなたの罪は全てわたしが連れていきます。
許されない憐れなこの子のことも……。
私があなたにできるのは……ただこれだけだから……。
あなたはもう何も苦しむことはないのです。
どうか、わたしのことはもうお忘れ下さい。
そして、全てを忘れ、幸せになって下さい。
それが今のわたしの唯一の願いです。
わたしは悪い「妹」でした。
最期にあなたにお会いできて、良かった。
どうか、お元気で。
さようなら。
咲沼美麻
*
「もう全て語り終えたのではないかな?名探偵君」
彼――雪花海杜はそう戯けたように口元を歪めると、恭しく礼をした。
「カーテンフォール」
「いいえ。まだ終わりではないですよ」
「ん?」
「更級恭平と美麻の件が残っています」
「ああ、あれはただの無理心中なのだろう?実に愚行だね。まあ、この上なく、彼らに相応しい末路だったかもしれないが」
「違いますよ。社長。あれは、殺人事件です」
「殺人……?君は何でもそこに結びつけたいようだね。まあ、無理心中というのも一種の殺人行為には変わりないだろうが。恭平君も馬鹿なことをしたものだね」
「社長。あなたには申し訳ないと思います。でも、僕は暴こうと思うんですよ。あの子のためにも、あなたの仕掛けた最後のフェイクをね」
「何を言い出す気かな?英葵」
そう笑った彼の語尾が微かに震えたのは気のせいだろうか。
「確かにあの件は、美麻が長剣を胸から背中まで貫通するように突き刺された状態で発見されたことにより、当然、更級恭平が美麻を殺害した後自殺を図った。
つまり無理心中だったという顛末で落ち着いた。
だが、事実は真逆なんですよ。
そうですね。社長」
僕は続ける。
ただまっすぐに彼を見つめながら。
「そう。更級恭平を殺害したのは、美麻ですね?社長」
その瞬間、初めて彼の顔に影が差した。
たっぷりの沈黙の後、彼は怪訝そうに答えた。
「美麻に?馬鹿な。あの子は右手を負傷しているんだ。どうやって恭平を刺殺できる」
「可能ですよ。被害者の体重を使えば。そう。美麻だからできたんですよ。
口に出すのもつらいですが……美麻は彼女を暴行するために自分に覆いかぶさってきた恭平の体重を利用したんです。
この方法ならば、美麻は力を使う必要などない。
勝手にナイフは彼の下腹部をえぐることになる」
そうだ。この人は、美麻を守ろうとしている。
そして、僕は美麻を疑っている。
あの哀れなたった一人の妹を。
僕たちの妹を。
「そう。美麻は恭平さんを殺害した後に自殺したんです」
*
恭平の部屋に来て、美麻が二度目のシャワーを浴びた後だった。
彼女を迎えて二度目の朝を迎えたその部屋には、麗らかな日差しが差し込んでいた。
前の晩、衝動に任せて美麻に全てを明かした恭平は、どこかばつが悪かった。
その話を耳にした美麻がなぜか狂ったように笑い出し、同時に泣き出した真相は、未だに彼にはわからずじまいだった。
ベッドを椅子代わりに手持ちぶさたでいると、スリッパの足音がした。
顔を上げると、少女が立っていた。
彼女はなぜか台所に行っていたようだった。
恭平は立ち上がり、美麻の腕を取り、彼女を引き寄せた。
まだ包帯の残るその痛々しい手をそっと取る。
どこか虚ろなその瞳。
ふいに吸い込まれそうになるほどに深い漆黒を湛えるその瞳。
その瞳を目にする度、恭平は感じる。
溺れているのは自分なのだ。
だが、恭平にとって上下関係など今更無意味だった。
ただ、今目の前にいる少女と……。
彼女を抱き締めたままベットに倒れ込む瞬間、美麻の唇が何か呟いた。
恭平の耳に、それは「ごめんなさい」と聞こえた。
どうしてお前が謝る?
そう笑いながら口にしようとした瞬間、恭平は腹部に感じたことのない衝撃を受けた。
焼け付くような感覚。
何かがとめどなく溢れていく。
それが自分の血だとわかった時、彼の中に渦巻いたのは、怒りでも憎しみでもなく、「疑問」だった。
「み……美麻……?どうして……どうしてだ……?」
恭平の目にあるものが映った。
恭平は必死にそれを掴み、そして美麻に差し出した。
それは、彼が衝動買いした指輪だった。
指輪の入った小さな箱だった。
綺麗にラッピングされたそれを恭平は美麻に差し出したのだ。
だが、その小さな箱は感覚を失った恭平の手から離れ、そのまま床に落ちた。
「美麻……」
プレゼントの落ちた冷たい床に、今度は恭平が落ちた。
その拍子にナイフが一層深く恭平を抉った。
声にならない叫びを上げながら、恭平は手を伸ばした。
己の血に染まり、ひしゃげた小さな箱に。
彼はやっとの思いでそれを手にすると、最期の力を振り絞るように美麻の方にかざした。
だが、頭上の美麻は、ただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
その虚ろな瞳は、どこもとらえてはいなかった。
恭平は祈りを込めるように、ただその箱をかざし続けた。
彼女のその細い指先(今は自分の血で穢れてしまったが)に光る指輪。
それを見て、無邪気に喜ぶ少女の姿を。
ただ、その姿が見たい。
一目でいいから……。
「美麻……俺は……お前を……あい……して……る」
ごぼごぼという音を立てて、血と共に吐き出されたその愛の言葉は、彼が吐いた最初で最期の真実のその言葉は、美麻の耳には届いていなかった。
彼は初めて自分が泣いていることに気が付いた。
涙を流すなんて、本当にどれくらいぶりのことなのか。
彼はなんだか笑い出したいような泣きたいような不思議な気持ちだった。
もう何年も失っていたあらゆる感情が、今、彼の全身を貫いていた。
「み……ま……」
恭平は、美麻の本当に笑った顔を見たかった。
彼が目にしてきた彼女の姿は、いつも悲しげなものばかりだったから。
だから、どうか、その指輪を……。
恭平はそのまま動かなくなった。
自分の血に塗れた最愛の少女の姿を網膜に焼き付けたまま。
*
「ひとつだけ、わからないことがあります」
僕がそう声を上げると、彼もまた僕に瞳を向けた。
その瞳には、相変わらず何の感情も表れていなかった。
「この件で、あなたは美麻が殺されたというようにわざわざ細工した。
それだけじゃない。
どうしてあなたは、血のつながりもない里香さんまで手にかけたのです?」
その瞬間、彼の顔にはっとしたような何とも形容のしがたい表情が上った。
それは、僕が今日、この部屋を訪れて初めて目にした彼の感情だった。
彼は自覚したのか、さっと背を向けた。
「あなたの殺しの目的が『雪花家』の血の断絶だとしたら、なぜ血のつながりのない里香さんまで殺す必要があったのですか?それもあんなに残虐な方法で……」
僕は答えを発しない彼の代わりに答えた。
「それは、美麻のためだったのではないのですか?」
彼の背中が微かに震えた気がした。
「莢華さんが収容された医療刑務所の所員から聞き込みをしたのです。
美麻を負傷させるよう唆したのは、里香さんだと莢華さんが毎日譫言のように証言していると」
「それが……どうかしたのかな」
「あなたはその事実を知って里香さんを許すことができなかったのではありませんか?
あなたはだからあんなにも非道な方法で彼女を葬った。
違いますか……?
無理心中の件もそうです。
あの子が殺人者という汚名を着ないようあなたは取り計らったのではありませんか?」
彼は突然、爆発するように笑い出した。
「ははは……ははは……君も滑稽なことを言い出すね。
……美麻のため……?ふっ……馬鹿な。
どうして私が君の妹のために人殺しをしたり骨折りをしなければならない」
「あなたが、本当にあの子を……美咲さんの代わりとしてではなくあの子を……美麻を愛していたからですよ」
彼はふっと笑った。
「君は私が美麻の遺体に長剣を突き刺し、自殺を他殺に細工したと主張しているね。
だが、英葵、君は間違っている」
次に怪訝な顔をするのは、僕の番だった。
彼はそんな僕に少し笑いかけた。
それはそれまでの不貞不貞しい不敵なものではなく、どこかもの哀しいものだった。
「美麻は自殺じゃない。美麻を殺したのは、私だ」
しかも人間と自我のみじめな一かけらに過ぎなかった。
私自身の灰と灼熱から、この幽霊は現れた。
金輪際、彼岸から来たのではなかった。
ーーフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ』
雪花海杜様
こうして改めてお手紙を差し上げるのは、はじめてのことですね。
初めてのお手紙がお別れのご挨拶になるなんて、なんという運命の皮肉でしょうか。
わたしが右手を負傷して入院している間にお見舞いに来て下さったそうですね。
槌谷先輩から伺いました。
ありがとうございました。そして、お会いできなくてごめんなさい。
槌谷先輩も決して悪気があってあなたを遠ざけた訳ではなく、わたしのためを想っての行動だったのだと思います。
彼もわたしに何度も謝ってくれて……だから、海杜さんもどうか、ご容赦下さいね。
病室で静かに移り変わる空を見ていると、様々なことが思い出されました。
あなたと出会った夕暮れのことや、全日本ピアノコンクールで優勝した時のこと、あなたに愛して頂いたこと。
そのどれもが儚くわたしの両手から砂のように溢れ去ってしまいました。
でも、これで良かったのかもしれません。
あなたに愛されるということも、ピアニストとして活躍するということも、わたしには過ぎた夢だったに違いないのですから……。
そんな時、わたしは夕貴君からあのレコードの存在を知らされたのです。
そこで微笑んでいたのは、わたしと瓜二つの一人の女性でした。
「城崎美咲」
あのレコードを見た時のわたしの驚き。
あなたが初めてわたしと通じた晩、わたしの髪を撫でながら譫言のように呟いた言葉。
そして、会長がわたしを誰かと混同して呼んだ名。
全てがそのレコードで微笑む女性に収束していくようで、目眩がしたほどでした。
わたしは友人で記者の伊山凛さんにこのレコードの女性・城崎美咲さんについての調査を依頼しました。
伊山さんはすぐに城崎美咲という女性が十年以上前に活躍したピアニストであったこと。
舞台俳優と駆け落ちし、今は日本にいないことなどを調べて下さいました。
そして、わたしたちは城崎美咲さんと駆け落ちをしたという舞台俳優・杉羅夜斗さんの元を訪ねたのです。
そこで知らされた事実。
わたしは雪花幸造の娘であり、あなたの妹であったという事実。
ああ、なんということでしょう。
既に莢華さんという伴侶を得たあなたへ赦されない想いを抱いたわたしをきっと神様が罰したに違いありません。
*
退院後、この小さな家へと連れて来られました。
会長に与えて頂いたここは、母が過ごした家なのですね。
ひとりぼっちでこの小さな家に取り残されたわたしは、今までの事件のあらましを一人考えていました。
そうして、取り留めない思索に耽るうち、わたしはあなたが真犯人だという恐ろしい結論に至ってしまったのです。
どれほど、自分の浅はかな考えが間違いであることを願ったかしれません。
でも、考えれば考えるほど、わたしの思考はあなたが全てを仕組んだという疑念から逃れることができなくなっていました。
一度沸いた疑惑は、わたしを絡め取り、暗い暗い思考の底へとわたしを沈めました。
わたしはそこから這い上がることができませんでした。
とうとう昨晩、わたしはあなたにその旨を告げましたが、それはその悲しい運命を念押ししただけでした。
では、動機は何なのだろう。
わたしはその一点だけがどうしてもわかりませんでした。
今でもそれだけは、はっきりとはわかりません。
ただ、あなたは雪花家の人々を抹殺しようとしているのだと、それだけはわかりました。
何の罪もない菊珂ちゃんを無残に殺害したという事実に、それは如実に表れています。
それを鑑みれば、あなたの標的が一個人ではなく、この雪花家であることは容易に想像がつきました。
わたしがそのことに気がついた段階で、雪花家の血を引く人間は、まだ会長、そして夕貴君がいました。
復讐を遂げるため、あなたは間違いなく、この二人を手にかけることでしょう。
おお、いけません。
あなたがその手であの夕貴君を殺めるなど……わたしには耐えられないのです。
なんとしてもそれだけは、止めなければ。
でも、わたしは同時にあなたを殺人犯として告発することなど、思いもよりませんでした。
何より、証拠がありません。
ネメシスに捉えられたあなたの行動を止める術など、わたしにはありませんでした。
ただ、どうしてもあなたにこれ以上、誰かを殺めては欲しくなかったのです。
そうなれば、あなたを阻止する方法はただ一つ。
あなたが二人を殺める前に、わたしが二人を殺害する。
これ以外に方法はありません。
何より、このわたしもあなたの憎むべき雪花家の血を引いているのですから。
わたしもあなたのターゲットの一人なのですから、わたしほどこの役目に適当な人間もいないでしょう。
あなたに代わって夕貴君と会長を殺害し、そして、最後にわたし……それに関しては、あなたの手をわざわざ煩わせる必要はありません。
そう。あなたが昨夜おっしゃった通り、夕貴君はわたしが殺しました。
わたしは、あんなにも無邪気であんなにも可愛らしかったあなたの大切な弟をこの手で殺してしまったのです。
いいえ、「あなた」のという表現は正しくはありませんでしたね。
「わたしたち」の大切な弟の命の灯火を、わたしはこの手で消してしまいました。
(作者注:この段階で咲沼美麻は雪花夕貴が雪花海杜の息子であり、雪花幸造の実子でないことを知らなかったと思われる)
わたしはその晩、行動を起こしました。
*
その晩。
里香さんの通夜の晩、わたしは夕貴君を雪花家の浴場に呼び出しました。
浴場の脱衣所には、おあつらえむきの太い梁が走っていたから……。
脱衣所に現れた夕貴君は、いつものようにわたしの顔を見ると、にっこりと微笑みました。
わたしはその無垢な笑顔を見つめたまま、そっと身に付けていた着物の帯を解きました。
今でもわたしはその瞬間に彼が上げた声を忘れることができません。
「ねえ、美麻お姉ちゃん。美麻お姉ちゃんもお風呂に入るの?でも、僕、一緒に入るのは……恥ずかしいな」
そうもじもじと夕貴君は顔を赤らめて、背を向けました。
わたしは、彼に気づかれないよう梁に帯をかけると、そっと背後から夕貴君の首に帯を巻き付けました。
夕貴君は、きょとんとした顔で振り返りました。
無邪気であどけないその顔。
どこか海杜さんに似たその顔。
ごめんなさい。
ごめんなさい。夕貴君。
こうするしかないの。
あの人にこれ以上罪を重ねさせないためには……わたしの手であなたを殺すしか……。
ごめんなさい……!!
わたしは左手で思い切り帯を引きました。
滑車の原理で帯は容赦なく幼い首筋を締め上げ、夕貴君は声も上げずに逝きました。
わたしは恐ろしい人間に成り下がってしまいました。
いいえ、わたしはもう人間ではないのかもしれません。
わたしは右手を使うことができません。
だから、絞殺となれば、きっと嫌疑から外される。
実際、わたしは事情聴取のときにも何の疑いも持たれず、すぐに釈放されました。
わたしはまだ捕まるわけにはいかなかったから……。
あなたのもう一人のターゲットを殺めるまでは……。
*
あなたのもう一人のターゲット。
それは、雪花会長。
あなたは最後に会長を殺して全てを終わらせようとしている。
だから、わたしは雪花会長を殺害することを決意しました。
会長はこの小さな家に毎晩のように足を運んで下さいましたから、彼を殺害する機会に困ることはありませんでした。
夕貴君が亡くなって二日目の夜。
その晩もわたしは会長に抱かれました。
わたしはそっと毛布とシーツの合間にナイフを隠し持っていました。
今回は特に犯行を隠し立てする気はありませんでした。
会長殺害後、わたしもそのままここで果てようと考えていたからです。
ですが、刃が会長を貫こうとした瞬間。
お父さん……!!
ダメ……できない……!!
わたしはそのままナイフをそっと仕舞い込みました。
わたしはどうしても父を殺すことができませんでした。
おかしいですね。
わたしはあんなに無邪気で可愛らしい夕貴君を殺害した悪鬼だというのに。
父へ刃を向けたあの瞬間、何かが……いいえ、誰かがわたしを留めました。
それは、今思えば、哀れな母の遺志だったように思われてなりません。
お願い、海杜さん。どうか、お父さんのことを赦してあげて下さい。
どうか、お父さんのことは殺さないで下さい。
あなたが愛した可哀想なお母さんのためにも。
*
海杜さん。
わたしは、あなたが本当はわたしを愛して下さっていたのか、それとも母を愛していたのか、ずっと思い悩んでいました。
そのことだけがただ怖かった。
でも、昨晩、わたしにははっきりと確信できました。
あなたは確かにわたしを愛して下さっていたのだと……。
だから、わたしはもう何も怖くないのです。
不思議ですね。
これから死ぬというのに、実の子でもないのに慈しんでくれた義父や義母、そして、母のところにいけると思うと、ちっとも怖くないのです。
今、わたしの心は信じられないくらいに落ち着いています。
そう、丁度、静かな凪の海のように。
わたしは、これまでの犯行の全てを記した手記を持っています。
最期、それを傍らに置いておくつもりです。
それは警察の方が、わたしの亡骸と共に発見することでしょう。
あなたの罪は全てわたしが連れていきます。
許されない憐れなこの子のことも……。
私があなたにできるのは……ただこれだけだから……。
あなたはもう何も苦しむことはないのです。
どうか、わたしのことはもうお忘れ下さい。
そして、全てを忘れ、幸せになって下さい。
それが今のわたしの唯一の願いです。
わたしは悪い「妹」でした。
最期にあなたにお会いできて、良かった。
どうか、お元気で。
さようなら。
咲沼美麻
*
「もう全て語り終えたのではないかな?名探偵君」
彼――雪花海杜はそう戯けたように口元を歪めると、恭しく礼をした。
「カーテンフォール」
「いいえ。まだ終わりではないですよ」
「ん?」
「更級恭平と美麻の件が残っています」
「ああ、あれはただの無理心中なのだろう?実に愚行だね。まあ、この上なく、彼らに相応しい末路だったかもしれないが」
「違いますよ。社長。あれは、殺人事件です」
「殺人……?君は何でもそこに結びつけたいようだね。まあ、無理心中というのも一種の殺人行為には変わりないだろうが。恭平君も馬鹿なことをしたものだね」
「社長。あなたには申し訳ないと思います。でも、僕は暴こうと思うんですよ。あの子のためにも、あなたの仕掛けた最後のフェイクをね」
「何を言い出す気かな?英葵」
そう笑った彼の語尾が微かに震えたのは気のせいだろうか。
「確かにあの件は、美麻が長剣を胸から背中まで貫通するように突き刺された状態で発見されたことにより、当然、更級恭平が美麻を殺害した後自殺を図った。
つまり無理心中だったという顛末で落ち着いた。
だが、事実は真逆なんですよ。
そうですね。社長」
僕は続ける。
ただまっすぐに彼を見つめながら。
「そう。更級恭平を殺害したのは、美麻ですね?社長」
その瞬間、初めて彼の顔に影が差した。
たっぷりの沈黙の後、彼は怪訝そうに答えた。
「美麻に?馬鹿な。あの子は右手を負傷しているんだ。どうやって恭平を刺殺できる」
「可能ですよ。被害者の体重を使えば。そう。美麻だからできたんですよ。
口に出すのもつらいですが……美麻は彼女を暴行するために自分に覆いかぶさってきた恭平の体重を利用したんです。
この方法ならば、美麻は力を使う必要などない。
勝手にナイフは彼の下腹部をえぐることになる」
そうだ。この人は、美麻を守ろうとしている。
そして、僕は美麻を疑っている。
あの哀れなたった一人の妹を。
僕たちの妹を。
「そう。美麻は恭平さんを殺害した後に自殺したんです」
*
恭平の部屋に来て、美麻が二度目のシャワーを浴びた後だった。
彼女を迎えて二度目の朝を迎えたその部屋には、麗らかな日差しが差し込んでいた。
前の晩、衝動に任せて美麻に全てを明かした恭平は、どこかばつが悪かった。
その話を耳にした美麻がなぜか狂ったように笑い出し、同時に泣き出した真相は、未だに彼にはわからずじまいだった。
ベッドを椅子代わりに手持ちぶさたでいると、スリッパの足音がした。
顔を上げると、少女が立っていた。
彼女はなぜか台所に行っていたようだった。
恭平は立ち上がり、美麻の腕を取り、彼女を引き寄せた。
まだ包帯の残るその痛々しい手をそっと取る。
どこか虚ろなその瞳。
ふいに吸い込まれそうになるほどに深い漆黒を湛えるその瞳。
その瞳を目にする度、恭平は感じる。
溺れているのは自分なのだ。
だが、恭平にとって上下関係など今更無意味だった。
ただ、今目の前にいる少女と……。
彼女を抱き締めたままベットに倒れ込む瞬間、美麻の唇が何か呟いた。
恭平の耳に、それは「ごめんなさい」と聞こえた。
どうしてお前が謝る?
そう笑いながら口にしようとした瞬間、恭平は腹部に感じたことのない衝撃を受けた。
焼け付くような感覚。
何かがとめどなく溢れていく。
それが自分の血だとわかった時、彼の中に渦巻いたのは、怒りでも憎しみでもなく、「疑問」だった。
「み……美麻……?どうして……どうしてだ……?」
恭平の目にあるものが映った。
恭平は必死にそれを掴み、そして美麻に差し出した。
それは、彼が衝動買いした指輪だった。
指輪の入った小さな箱だった。
綺麗にラッピングされたそれを恭平は美麻に差し出したのだ。
だが、その小さな箱は感覚を失った恭平の手から離れ、そのまま床に落ちた。
「美麻……」
プレゼントの落ちた冷たい床に、今度は恭平が落ちた。
その拍子にナイフが一層深く恭平を抉った。
声にならない叫びを上げながら、恭平は手を伸ばした。
己の血に染まり、ひしゃげた小さな箱に。
彼はやっとの思いでそれを手にすると、最期の力を振り絞るように美麻の方にかざした。
だが、頭上の美麻は、ただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
その虚ろな瞳は、どこもとらえてはいなかった。
恭平は祈りを込めるように、ただその箱をかざし続けた。
彼女のその細い指先(今は自分の血で穢れてしまったが)に光る指輪。
それを見て、無邪気に喜ぶ少女の姿を。
ただ、その姿が見たい。
一目でいいから……。
「美麻……俺は……お前を……あい……して……る」
ごぼごぼという音を立てて、血と共に吐き出されたその愛の言葉は、彼が吐いた最初で最期の真実のその言葉は、美麻の耳には届いていなかった。
彼は初めて自分が泣いていることに気が付いた。
涙を流すなんて、本当にどれくらいぶりのことなのか。
彼はなんだか笑い出したいような泣きたいような不思議な気持ちだった。
もう何年も失っていたあらゆる感情が、今、彼の全身を貫いていた。
「み……ま……」
恭平は、美麻の本当に笑った顔を見たかった。
彼が目にしてきた彼女の姿は、いつも悲しげなものばかりだったから。
だから、どうか、その指輪を……。
恭平はそのまま動かなくなった。
自分の血に塗れた最愛の少女の姿を網膜に焼き付けたまま。
*
「ひとつだけ、わからないことがあります」
僕がそう声を上げると、彼もまた僕に瞳を向けた。
その瞳には、相変わらず何の感情も表れていなかった。
「この件で、あなたは美麻が殺されたというようにわざわざ細工した。
それだけじゃない。
どうしてあなたは、血のつながりもない里香さんまで手にかけたのです?」
その瞬間、彼の顔にはっとしたような何とも形容のしがたい表情が上った。
それは、僕が今日、この部屋を訪れて初めて目にした彼の感情だった。
彼は自覚したのか、さっと背を向けた。
「あなたの殺しの目的が『雪花家』の血の断絶だとしたら、なぜ血のつながりのない里香さんまで殺す必要があったのですか?それもあんなに残虐な方法で……」
僕は答えを発しない彼の代わりに答えた。
「それは、美麻のためだったのではないのですか?」
彼の背中が微かに震えた気がした。
「莢華さんが収容された医療刑務所の所員から聞き込みをしたのです。
美麻を負傷させるよう唆したのは、里香さんだと莢華さんが毎日譫言のように証言していると」
「それが……どうかしたのかな」
「あなたはその事実を知って里香さんを許すことができなかったのではありませんか?
あなたはだからあんなにも非道な方法で彼女を葬った。
違いますか……?
無理心中の件もそうです。
あの子が殺人者という汚名を着ないようあなたは取り計らったのではありませんか?」
彼は突然、爆発するように笑い出した。
「ははは……ははは……君も滑稽なことを言い出すね。
……美麻のため……?ふっ……馬鹿な。
どうして私が君の妹のために人殺しをしたり骨折りをしなければならない」
「あなたが、本当にあの子を……美咲さんの代わりとしてではなくあの子を……美麻を愛していたからですよ」
彼はふっと笑った。
「君は私が美麻の遺体に長剣を突き刺し、自殺を他殺に細工したと主張しているね。
だが、英葵、君は間違っている」
次に怪訝な顔をするのは、僕の番だった。
彼はそんな僕に少し笑いかけた。
それはそれまでの不貞不貞しい不敵なものではなく、どこかもの哀しいものだった。
「美麻は自殺じゃない。美麻を殺したのは、私だ」
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