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リラとのデート 前編

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カルナとの予定を済ませた周は、翌日のレーネとの予定を繰り越した分、丸一日爆睡して過ごした。
久しぶりにいい運動をしたので、よく寝むれた。
そして、次の日のリラとの予定に万全で挑むことが出来た。
朝目を覚ますと、リラはいつものように机に向かって何か作業をしていた。

「おはようリラ、いつも熱心だな?」

「おはようございます。少しでも夜ト神さんの役に立ちたいので!」

なんていい子なんだ、他の奴にも見習ってもらいたいものだ。
心の中で1人感動している周。

「今日なんだけどさ!」

「覚えててくれたんですね」

「当たり前だろ!」

周が予定を覚えていただけで、とても喜ぶリラ。
二人で出掛けれることを、とても楽しみにしていたのだろう。

「うちのギルドは、女ばっかりだから、リラとのお出かけは、俺も楽しみにしてたぞ!」

「それは光栄です!」

目に見て分かるほど、喜ぶリラ。
出かけるだけで、これ程喜んでくれるなら、出掛けがいがあるってものだ。

「何処に行くか決まってるのか?」

「はい!新武器の素材を一緒に取りに行きたいんですけど、いいですか?」

「採掘とかか?」

「いえ、モンスターからのドロップ品です」

「リラも一緒に行くのか?」

「ダメですかね?」

「別にいいぞ?」

「本当ですか!?」

少し予想外の事に、驚く周。
だが、特に問題は無いので了承する。

「久しぶりに、夜ト神さんの勇姿を見たくて!」

「そういう事か」

そう言えば、リラは俺のファンなんだったな。
実際にファンを持つと、なんだか照れくさいもんだな。
一般人の周からすれば、体験することの無いこと感覚だった。
照れている周だが、それと同時に、少しの嬉しさも感じていた。

「それで、肝心の場所は何処なんだ?」

「この街を出て、直ぐにある渓谷です」

「あそこか!」

周はこの数日間で、何度も街の外に出ていたので、移動の最中に、何度もその渓谷を見ていた。

「あそこならすぐだから、歩いて行くか!」

「なら早速行くか?」

「そうだな!」

こうして、俺とリラは宿を出て、渓谷に行くべく、街の出口に向かおうと歩いていた。

「まさか、夜ト神さんとこうして歩けるなんて、考えても無かったです!」

「一緒に歩いてるだけで、そんなに喜んで貰えるなんて、俺も嬉しいよ!」

気持ち程度だが、いつもより誇らしげに歩く周。

「一緒に歩いてるだけなんて、言わないでください!今や、夜ト神さんは超有名人ですよ?!」

「そうなのか?!」

「知らなかったんですか?」

そう言って、リラはノートのようなものを取り出し、周に見せる。

「これを見て下さい」

周は、言われるがままに、リラが差し出してきたノートを見る。
そこには、新聞のような物の切り抜きが貼ってあった。

「なになに?」

周は、その記事に目を通す。
そして、その内容に驚愕する。
その記事の見出しには、こう書かれていた。

新星登場!
SSSランカー  夜ト神 周
冒険者に登録してから1ヶ月ほどで、SSSランカーに上り詰めた期待の新人!
その実力は、SSSランクのボスを倒すほど?!
なんと、17歳!
今後の活躍にも期待!!!

周が、さらっと目を通しただけでも、これだけのことが書かれていた。

「プライバシーの侵害だ!!!」

当然ながら、周はこんな記事が書かれるなんてことは知らない。

「今や、ファンクラブが出来るほどの人気ですよ!」

「ファンクラブ?!」

ここで周は、思い出した。
ココ最近、知らない人達に追いかけ回されたことを。
全てが、結びつく。

「そういう事だったのか.......」

「どうしたんですか?」

「いや、こっちの話だ.......」

何もしていないのに、激しく疲労を感じる周。
今後の生活に不安が残る。
只、気にしたところで、どうにもならないのも事実だ。

「本当に大丈夫ですか?」

あまりにも気を落としている周を、リラが気遣う。

「あぁ、先を急ごう.......」

周は、落ち込みながらも、街を出るまでに、再び人に囲まれたくない一心で、足を進める。

「待ってください~」

少し早足になった周に、駆け足で追いつくリラ。
周は、せっかくリラが楽しみにしてくれていたのに、このままではいけないと、一旦冷静になり、急激にテンションを上げる。

「早いとこ街を抜けるぞ!」

周は、リラの手を取り急に駆け出す。

「えっ、わぁ~~~」

リラは、周に引っ張られながら、何とかついて行く。
走った分、直ぐに街の外に出る門まで到着する。

「急に走り出して悪かったな」

「いぇっ.......はぁ.......大丈夫..............です.......はぁはぁ」

かなり息切れをしているリラ。
普段から、宿に篭もって武器の制作ばかりしてる分、運動不足なのだろう。

「森で少し休むか!」

「その方が助かります.......」

街を出たことによって、周は身の安全と心の安心を取り戻す。
2人は、木陰で少し休むことにした。
メインイベントを残して疲れてしまったが、一日はまだまだ長い。
普段の感謝も込めて、リラに楽しんで貰えるように、頑張ろう!
周は、1人気合を入れるのであった。
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