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同級生の僕と天馬と源、そして麻樹の四人は、夏休みに僕の軽自動車でドライブに行くことに決めた。天馬の提案だった。
「おまえだけ彼女連れかよ。つまんねえなぁ」
源がぼやいた。でも顔は楽しそうに笑っていた。
ドライブ当日、運悪く麻樹は断れないバイトが入り、一緒に行けなくなってしまった。それでも僕たちは、男だけってのも悪くないかもなと、出発した。
絵の具で塗りつぶしたような水色の空には、真綿のように真っ白な雲。ジリジリと灼けるような太陽がまぶしい。
カーステレオから流れる音楽に合わせて天馬と源は大声で歌い、ギリッと喉を刺す炭酸で渇きを潤した。
「でも麻樹、来れなくて残念だったな」
後部座席の源が、運転席と助手席のシートの間から頭を出して天馬を見た。
「陽太、今度この車貸してよ。麻樹と二人きりでドライブに行くからさ」
「ぶつけんなよ」
僕はニヤケる天馬にそう返した。
車は海の見える拓《ひら》けた国道に出た。
「おおーー! 海だーー!」
源が、まるで初めて海を見た子どものように身を乗り出して叫んだ。
「おまえ、声がでけーんだよっ!」
耳元で叫ばれた天馬が耳を塞いだ。
ゆるい大きなカーブが続く。
僕は二人のはしゃぐさまを楽しみながらもしっかりとハンドルを握り、次々と繰り出す連続カーブを慎重に運転した。
左に海、右に山の片側一車線。道は弧を描いて山の陰へと延びている。路面の状態が良いだけにスピードを出しがちだが、見通しが悪い。
運転に集中する僕を置いてけぼりに天馬と源が景色を満喫していたその時、車は先の見えない大きな右カーブにさしかかっていた。
次の瞬間、突如山の陰から黒い大型SUV車が、まるで軍用装甲車が突進してくるかのように現れた。それはスピードを落とすことなく、まっすぐこっちに襲い掛かってきた。僕は咄嗟にアクセルを戻しハンドルを左に切った。左側には心もとない薄っぺらいガードレールと海、所々等間隔に立つ電柱。一つ間違うと、ガードレールを突き破り海に転落するか、それとも電柱に激突するかもしれないなどと、僕には考える余裕はなかった。迫りくる大きな黒い塊を避けなければ。ただそれだけだった。そこから僕の視界はスローモーションに変わった。
想像を超えるものすごい衝撃と、車が切り裂かれ叩き潰される破壊音。それと同時に、聞いたこともないような人間の叫び声が聞こえた。狭い車内に振られたサイコロのように身体が揺さぶられた。地獄のようなスロー映像の中で僕は、エアバッグってこんな一瞬でしぼむんだなどと思っていた。そして二度目の衝撃。天馬の姿が一瞬にして消えたのはその時だった。僕はその瞬間を見た。天馬がいた場所には折れ曲がった電柱があった。それを最後に、僕の視界と意識はスイッチを切った。
「おまえだけ彼女連れかよ。つまんねえなぁ」
源がぼやいた。でも顔は楽しそうに笑っていた。
ドライブ当日、運悪く麻樹は断れないバイトが入り、一緒に行けなくなってしまった。それでも僕たちは、男だけってのも悪くないかもなと、出発した。
絵の具で塗りつぶしたような水色の空には、真綿のように真っ白な雲。ジリジリと灼けるような太陽がまぶしい。
カーステレオから流れる音楽に合わせて天馬と源は大声で歌い、ギリッと喉を刺す炭酸で渇きを潤した。
「でも麻樹、来れなくて残念だったな」
後部座席の源が、運転席と助手席のシートの間から頭を出して天馬を見た。
「陽太、今度この車貸してよ。麻樹と二人きりでドライブに行くからさ」
「ぶつけんなよ」
僕はニヤケる天馬にそう返した。
車は海の見える拓《ひら》けた国道に出た。
「おおーー! 海だーー!」
源が、まるで初めて海を見た子どものように身を乗り出して叫んだ。
「おまえ、声がでけーんだよっ!」
耳元で叫ばれた天馬が耳を塞いだ。
ゆるい大きなカーブが続く。
僕は二人のはしゃぐさまを楽しみながらもしっかりとハンドルを握り、次々と繰り出す連続カーブを慎重に運転した。
左に海、右に山の片側一車線。道は弧を描いて山の陰へと延びている。路面の状態が良いだけにスピードを出しがちだが、見通しが悪い。
運転に集中する僕を置いてけぼりに天馬と源が景色を満喫していたその時、車は先の見えない大きな右カーブにさしかかっていた。
次の瞬間、突如山の陰から黒い大型SUV車が、まるで軍用装甲車が突進してくるかのように現れた。それはスピードを落とすことなく、まっすぐこっちに襲い掛かってきた。僕は咄嗟にアクセルを戻しハンドルを左に切った。左側には心もとない薄っぺらいガードレールと海、所々等間隔に立つ電柱。一つ間違うと、ガードレールを突き破り海に転落するか、それとも電柱に激突するかもしれないなどと、僕には考える余裕はなかった。迫りくる大きな黒い塊を避けなければ。ただそれだけだった。そこから僕の視界はスローモーションに変わった。
想像を超えるものすごい衝撃と、車が切り裂かれ叩き潰される破壊音。それと同時に、聞いたこともないような人間の叫び声が聞こえた。狭い車内に振られたサイコロのように身体が揺さぶられた。地獄のようなスロー映像の中で僕は、エアバッグってこんな一瞬でしぼむんだなどと思っていた。そして二度目の衝撃。天馬の姿が一瞬にして消えたのはその時だった。僕はその瞬間を見た。天馬がいた場所には折れ曲がった電柱があった。それを最後に、僕の視界と意識はスイッチを切った。
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