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僕と源は、麻樹の墓参りをした後に天馬の墓前に来た。
この前のように、秋の風が竹林をざーっと鳴らした。ずっと強い風だ。すっかり秋の色が深まった空を僕は見上げた。どこまでも高く青い空だ。
風が揺らす竹林のてっぺんに鷹が止まっていた。
――あの時の鷹か……?
鷹は一瞬バサリと翼を広げた。翼と尾羽に縞模様が見えた。力強く美しい。
ふと気づくと、源の隣りに麻樹が立っていた。僕は一瞬息を呑んだがたぶん源には見えていない。彼女が空を仰ぐと、鷹は羽音も立てずに宙に舞った。そして風に乗りどんどん高く舞い上がって行った。
「天馬、麻樹……ごめん……」
僕は未だに出ない涙にとまどいながら、二人に謝罪の言葉を述べた。
すると麻樹は音もなく源の身体をすり抜け、僕の胸に手を当てた。そのぬくもりを、僕は確かに感じた。
――麻樹。天馬には逢えたのか?
と同時にあの鷹が、風をつかみながら竹林近くまで降りてきて、ゆっくりと優雅に旋回し始めた。
それを見た僕は急に胸が苦しくなり、喉元を締め付けていた何かがするりとほどけたような気がした。そして知らぬ間に、天馬の墓前で声を上げて泣いていた。
「ごめん! ごめん……天馬……麻樹……ごめん……」
源が地面に突っ伏して泣く僕の肩を強くつかんだ。そして言った。それは天馬の声だった。
『陽太。おまえのせいじゃない。だからもう自分を責めるのはやめろ』
天馬の声に顔を上げると、目の前の源は微笑んだ。
「陽太。俺らはこれから生きていかなきゃダメなんだ。もちろん天馬と麻樹も一緒だ」
涙でぐしゃぐしゃの僕と源は空を見上げた。そこには、僕らが手を伸ばしても届かない遥か上空を旋回する二羽の鷹と、果てしなく高く青い秋の空があった。
**おわり**
この前のように、秋の風が竹林をざーっと鳴らした。ずっと強い風だ。すっかり秋の色が深まった空を僕は見上げた。どこまでも高く青い空だ。
風が揺らす竹林のてっぺんに鷹が止まっていた。
――あの時の鷹か……?
鷹は一瞬バサリと翼を広げた。翼と尾羽に縞模様が見えた。力強く美しい。
ふと気づくと、源の隣りに麻樹が立っていた。僕は一瞬息を呑んだがたぶん源には見えていない。彼女が空を仰ぐと、鷹は羽音も立てずに宙に舞った。そして風に乗りどんどん高く舞い上がって行った。
「天馬、麻樹……ごめん……」
僕は未だに出ない涙にとまどいながら、二人に謝罪の言葉を述べた。
すると麻樹は音もなく源の身体をすり抜け、僕の胸に手を当てた。そのぬくもりを、僕は確かに感じた。
――麻樹。天馬には逢えたのか?
と同時にあの鷹が、風をつかみながら竹林近くまで降りてきて、ゆっくりと優雅に旋回し始めた。
それを見た僕は急に胸が苦しくなり、喉元を締め付けていた何かがするりとほどけたような気がした。そして知らぬ間に、天馬の墓前で声を上げて泣いていた。
「ごめん! ごめん……天馬……麻樹……ごめん……」
源が地面に突っ伏して泣く僕の肩を強くつかんだ。そして言った。それは天馬の声だった。
『陽太。おまえのせいじゃない。だからもう自分を責めるのはやめろ』
天馬の声に顔を上げると、目の前の源は微笑んだ。
「陽太。俺らはこれから生きていかなきゃダメなんだ。もちろん天馬と麻樹も一緒だ」
涙でぐしゃぐしゃの僕と源は空を見上げた。そこには、僕らが手を伸ばしても届かない遥か上空を旋回する二羽の鷹と、果てしなく高く青い秋の空があった。
**おわり**
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