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第5話 ~少し考える、そして父上達戻る。

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ロゼッタ男爵領へと戻ってきた俺、…まだ父上達は帰ってきていない。さて、…これからどうすべきか。素質調べによって判明したのが十二属性であること、されどそれを偽り三属性とした。それでも多属性、世間から見たらかなり優秀な人材である俺。精霊騎士団からの勧誘、一部貴族からの突っ掛かり。そこは避けられないというが、…はて?



そもそも素質調べの結果を公表しなければいいのでは? …と思ったのだが、思い出してみれば神殿長がこんなことを言っていたな。



『騎士団の方々に貴族の方々…それらの方々は恐ろしいことに、誰がいつ素質調べをしたのかをほぼ把握しております。後々根掘り葉掘り調べられるよりは、最初から公表しておいた方が不快とならずに宜しいかと。特にミュゼ様は義理とはいえクルゼイ様のご子息ですからね、確実に把握されていると考えた方が良いでしょう。』



…と。貴族って面倒だね、騎士団も同じく。そして親が有名人であると個人情報を調べられる可能性が高まる、由々しき事態といえよう。…がロゼッタ男爵家はガードが固いから、細かい所までは知られることはないだろう。詳しく調べようものなら、…たぶん父上と母上が!













まぁそこら辺は慣例だ何だってなると思うからいいとして、俺自身はどうすべきか? 十二属性と判明したからには自重した方がいいかね? 主に鍛練的な方で。やればやる程自身の力が増していることが分かる、このまま続けたらマジで規格外となりそうだ。だが男として生まれたからには、自身が何処まで強くなるか試したいという気持ちもある。前世が喧嘩無双の男だったからか、そこの精神に引っ張られているということもあると思う。



この悩みを、王都の神殿へ付き添ってくれた二人のメイドに相談したところ、



「お気にすることなく続けた方が宜しいかと。ミュゼ様がお強くなることは、ロゼッタ男爵家としては望むところであると愚考致します。旦那様と奥様も、ミュゼ様がお強くなることをお望みするかと存じます。」



「ミュゼ様と共に鍛練を致しました私達も、ミュゼ様と同じく力を増していると実感しております。一人お強くなることをご不安に思うのでしたら、私達も合わせて強くなりましょう。どんなことがあろうとも、私達はミュゼ様と共にありますから。」



俺が強くなることはいいことであるのか、…言われてみればそうかもしれない。俺自身が強ければ何とでもなる、聞く限りだと強ければいいとした脳筋的考え方がある世なのだから。…最終判断は父上達にも相談してからだな、それがいい。



…にしても、この二人のメイドの想いは嬉しい。何か俺を第一に、そして共にあるとかってさ。前世があるにしてもまだまだ子供である俺、不安になるのも仕方がないことなのである。そんな俺に対してそんなことを言うなんて、…罪深いメイドだぜ! …何だか泣けてきたよ。そんな俺の反応を見て、メイドの二人が抱き締めてくれた。………お陰様で落ち着いたよ、…ちょいと恥ずかしいね。













素質調べから数日後、父上達が帰ってくるとの報せが。それを受けて俺は、ソワソワしながらその帰りを待っている。一週間以上も顔を合わせない事態なんて初めてだし、…思いの外子供だよね俺。前世を合わせれば二十歳過ぎよ? …本当に恥ずかしい。そんなわけでソワソワしつつもウロウロしながら待つ姿に、家の使用人達…特にメイドの二人が微笑ましく俺を見ていた。



それから暫くして、仕事から帰ってきた父上達を笑顔で迎える。その瞬間、俺の身体が突然空へと浮かんだ。テンパり掛けたが、父上に抱き掲げられているのだと気付き安心した。…というか父上、喜びすぎじゃありませんかね? 威厳のある顔がだらしなく緩んでいますよ? 続いて母上の方へと手渡された俺は、愛情表現MAXの頬擦りを受けました。恥ずか死んでしまいますから止めてください、母上!!



ほっこり家族イベントが終了後、食堂に移動してまずは団欒。仕事はどうだったのかと聞いてみれば、父上はニヤリと笑って…、



「精霊騎士団の糞餓鬼共が仕損じたゴブリン達は殲滅してきた。あの程度の集団を討伐出来ないというのは情けない、故に鍛えてやったわ。王の命を受けてみっちりと、黒炎仕込みの狩猟組み手をな!!」



どれくらいの規模かは分からんけど、騎士団であるのにゴブリンを討伐しきれなかったの? …弱っ! 五歳児の俺とメイド二人で百体は倒せるぞ? やっぱり驕り高ぶる奴等はダメだね、常に慎ましく努力しないと。へっぽこ騎士団はいいとして、父上仕込みの狩猟組み手が気になる。暇があったら教えて貰おうかな? 血気盛んな男の子として興味がある。



上機嫌な父上の次は母上、父上と共に暴れたのは分かっているんですよ? そして何をしたのかが気になるのです。期待の眼差しで母上を見れば…、



「クルゼイと一緒にゴブリン達を殲滅させたんだけれどね? その集団にはキングになりかけていたジェネラルがいたの。…一応言っておくとね? ガキンチョ達は下っぱゴブリンでズタボロよ? 精霊騎士団(笑)よね。まぁそれはいいとしてね? 討伐したそのジェネラルの首、それをイヤ~な貴族の皆さんが集まるパーティーに持っていってあげたのよ♪ とても喜んでくれたわ、せっかくのパーティーが阿鼻叫喚の宴に早変わり! オホホホホホ♪」



上品に笑ってとんでもないことを言う。パーティーに生首、しかもゴブリンという醜悪な魔物の…。そりゃあ阿鼻叫喚にもなるよ、ゴブリン…臭いからね。母上は怒らせたらダメな人だ、…俺も気を付けないと。まぁ怒らせることはないと思うけど、普段はとても優しいし。それよりもゴブリンにボコられた騎士団だよ、…もはや誉れ高いとは過去の栄光だね。













二人の話が終わったら次は俺、素質調べの結果を聞かれたので言いました。十二属性であることと、三属性と偽ることを。何かあった時は神殿長、神殿が助力してくれるというのもきちんと報告。全てを言った後に気付いたけど、…父上と母上が固まっている。ついでに言うと、付き添ってくれたメイドの二人を除く使用人達も。その反応を見る限り、やっぱり凄いどころか規格外なんだね。



…硬直から元に戻るまでにはもうちょい時間が必要っぽい、…早く戻ってきておくれよ父上達。
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