この世界が乙女ゲームの舞台だとは知らない俺の物語

ユキさん

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閑話 ~孫から息子へ…。 ークルゼイsideー

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フェルミナ王国が最強と誉れ高い精霊騎士団を辞して、ファライオ侯爵家の当主を息子に譲り渡した俺の名はクルゼイ・ファライオ。若き日から精霊達と共に己を磨き上げ、『黒炎のクルゼイ』と呼ばれる程の勇名を各国に轟かせた人生であった。目を閉じれば思い出される栄光の日々…、何て思うことはなくただただ安堵する。愚かな同僚と糞餓鬼達から解放された、…俺は自由だ! と城門の前で大きく伸びをした。門を守る衛兵達が目を剥いているが、全てを辞した俺には関係ない。



我らが王へ全てを辞したと伝えれば、渋りながらも俺の頑なさに折れてくれた。自由となった俺は、城の側にて控えていた従者と共に馬へ跨がり自領へ戻る。自領と言っても全てを息子に委ねた為、正確には生まれ育った侯爵領へ戻ると言った方がいいか。…そんなことを思いながら、当主の座を譲った息子のことを考える。出来が良いとも言えぬが悪いとも言えぬ、全てにおいて普通の我が子であるが真面目であった。そんな息子は妻を持ち、真面目にこれから生きていくことだろう。…そう思っていたのだが、愚か者達の悪影響をその身に刻んでしまった。



素質があれば選民であるが為、何をやっても許される。努力する必要はない、精霊を使えばいいのだから。精霊は燃料である、枯渇することのない燃料。………そんな戯言を信じてしまい、そして勘違いをしてしまった。これまでの行動に問題があった、なれど当主の座を譲った。当主となり苦労をすれば、真面目であった頃に戻るだろうと。親であるからか、そう信じていたのだ……。













俺は侯爵を辞してから、妻と共に領地の片隅にて生活をしている。悠々自適とでも言おうか、勝手知る数少ない使用人達と共にな。離れることで第三者のような立場となり、そこから息子を…息子夫婦のことを見ていた。…行動を見て失望していく、…自分達優先の政、…散財に次ぐ散財、…精霊を蔑視する姿勢。…変わっては、…戻ってはくれなんだか息子よ。



そして決定的なことがあった、久しぶりに顔を見せたかと思ったら、



「生まれてから一度も目を覚まさずにこの状態なのです、妻が気持ち悪いと…。捨てようにも人の目があります故、コイツをお譲り致します。」



とぬかして赤子を手渡してきた。妻が言葉を失う、…俺自身も息子の所業に呆然とする。そんな俺達の様子を気に掛けることもせず、息子はそそくさとこの館を出ていった。…ここまで腐っていたのか、…息子よ。



これがきっかけとなり、息子夫婦とは絶縁を決意。侯爵領より出奔し、この赤子と共に庶民として生きようと思った。…が何処で聞き付けたのか、王より横槍を入れられてしまった。たまたま空位である男爵家を再興せよと、…余計なことをと思ったわけだがそれを飲むことにした。妻の胸に抱かれる孫…、この子を養子として認めさせるのを条件にな。…にしてもロゼッタ男爵家か、精霊と共にあったが為に潰えた家。余生を注ぎ込むに相応しい家かもしれんな、…王もまた小賢しいものよな。













王の命によりロゼッタ男爵家を再興することとなった俺は、時間が空く度に赤子…息子の様子を見るという日常を送っている。引き取ってから今まで眠り続けており、食事を取らずとも衰弱することは決してない不思議な子。来る日も来る日も眠り続けていた子なのだが、ある日突然目を覚まして大泣きをした。そのことに俺達は大いに喜んだ、最愛の子となる赤子が目覚めたのだからそうもなるだろう。



俺達の息子となるこの子の名はミュゼとした、妻がその名以外を認めようとしなかったからだ。男の子なのだから勇ましい名にしたかったのだが残念、まぁミュゼという名の響きがいい為に文句はないが。そのミュゼが目覚めてからが怒涛の日々だった、毎日が忙しくも充実した日々。すくすくと育つミュゼを見ては目尻が下がり、幸せを感じることが出来る。



そんな日々の中で、近年稀に見る大きな出来事があった。…ファライオ侯爵家当主である息子が、度重なる失態の末に侯爵家から追放となったのだ。ミュゼと同じくらいの子がいた為に保護しようとしたらしいのだが、それを拒否されて親子三人…姿を消したらしい。ファライオ侯爵家は俺の弟が継ぐこととなり安泰、…追放された元息子には未練も何もない。ただ…、子供の行く末は心配である。



…済んだことはいいとして、我が息子のミュゼはとても賢い子である。教えたことを理解し、それらについて自らの考えを俺達に言う。たどたどしい言葉に愛らしさを感じ、それと同時に頼もしさも感じる。考え方がやや異端的ではあるが、俺達も共感出来るような内容故にただ嬉しく思う。願うならばこのままで、…あの愚か者のようにならないでほしい。













ミュゼも俺達と同じように幼いながらも忙しない、彼独自の鍛練があるらしく数人のメイドを引き連れて駆け回っている。そのお陰なのかどうなのか、ミュゼの纏う空気に精霊の姿が見え隠れしているような気が…。俺の目ではその姿を見ることが出来ない、出来ないが感じる。…俺の魔力も上がっているのか?



ミュゼの可笑しな鍛練に付き合っている数人のメイド、その者達の魔力も増しているような気がする。そしてミュゼに対する忠心もまた同じように増しており、ミュゼ命! とでも言いそうな具合だ。子供の成長は早いというが、知らぬ内にカリスマ性を身に付けたか? それはそれで嬉しいことなのだが、妻がメイド達に嫉妬している。…………ミュゼに妻へ構うよう頼むか、……俺の為に。













…王国国内で奇人と呼ばれているミュゼ、それを気にも留めないで駆け回る彼も遂に五歳となった。神殿にて素質調べをする歳であり、俺達夫婦も心待ちにしていた重要な祭事である。…だというのに参加すること叶わず、…精霊騎士団の糞餓鬼共め! しょうもないしくじりをした為に、その尻ぬぐいとして俺達に白羽の矢が立ったのだ。俺達を疎ましく思うゴミ貴族の嫌がらせだ、…そのせいで息子の晴れ姿を見ることが出来ない。……ククククク、…己らに地獄を見せてくれるわ! 覚悟するといい糞餓鬼共! そしてゴミクズ共!!













存分に地獄を見せた後、男爵領へと戻った俺達を迎えてくれたのは愛する息子のミュゼ。軽く会話をした後に、素質調べの結果を聞いたのだが……、













………………は? ………十二属性?
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