鈍色(にびいろ)

カヨワイさつき

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雷注意報

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憂鬱(ゆううつ)な気分のまま部長たちと
タクシーで接待という残業代が出ない
残業に出かけることとなった。
「動きやすい格好、パンツスーツ的な服装
役職は主任クラスの同行者希望か?
好みのタイプってことなのか?
昨年から取引してるんだが、よくわからん
パソコンのメンテナンスとか
セキュリティーとか胡散臭いんだが、
うちの社長とか秘書課とかが
気に入ってるみたいでな……。
取引先からの指示だ。君にピッタリだろ?」
はっ?
秘書課?社長は、会長の娘という事で
女社長、あんまり会社にはいなくて
あちこち飛びまくりで忙しいみたいだわ。
イケメンの男なのかな?
潤さんみたいな人なら、社長も
秘書課も騒いでるはずよね?

「君はこの場では勇逸の紅一点だからな、
相手に粗相のないようにな。」
タクシーの運転手さんと目があった。
私はなんだかわからないうちに
会釈していた。
「……はい。」
ともは、昨夜からの精神的ダメージで
今にも泣きそうだった。
車には部長たちを上座の後部座席に
押し込めることに成功した。
自分自身は助手席を確保出来たのだった。
後部座席の部長たちは、いつもの
菓子折りと何かのの資料を手に持ちながら
下品な会話をしていた。
「……大変ですねー。」
「……い、いえ。」
前を見つめたまま、タクシーの運転手さんは
ボソっいった。
部長たちには、聞こえていないのか
バカ笑いしていた。
曖昧(あいまい)な笑みを浮かべ数分。
会社の接待でよく使う
いつものホテル内の料理屋さん。
フグ料理のお店に到着した。

部長たちは、毒舌というか毒そのものの
ような気がする。
体型も上司が来ると小さくなり
イエスマンに成り下がる。
下のものには威張るように
丸い身体をさらに膨らませ
何かネチネチ言う部長たち。
たぬきときつねとふぐを混ぜたようなかんじ。
この接待が早く終わりますように。

「君はあまり食べないようにな。」
「……はい。」
最低!!
こちらは後輩とお前らのせいで
昼ごはん食べ逃したのに……。
「少し早すぎたか?」
約束の時間20分前だった。
部長がともの肩に手を触れた。
「相手がもしも君を気に入って貰えたなら
わかってるよね?!」
「!!」

普段は秘書課や接待の為の
営業の者が担当していた。
営業の場合、ちゃんと接待費として
給与もでるのだが、ともは
初接待ということで、部長たちの
嫌がらせなのか、まるっきり
サービス残業だった。
初めから相手2人、部長と次長の
2人の4人でしか予約をしていなかったのだ。
急遽、その場しのぎでお店の人が
対応してくれたので、おまけのような
ともに、お皿や箸も準備してくれたのだった。

「お連れ様がいらっしゃいました。」
「ああ、わかった。」
「……。」
ともは立ち上がり自分の真新しいシンプルな
靴下とたたみを見つめていた。
ふんわりと香る懐かしい匂い?
この香り、あれ?
つい最近、書いだ気がする?
「よくぞ、いらっしゃいました。
さぁさぁ、どうぞどうぞ。こちらに。」
「いやぁー。お二人共お若いですな。
背も高いですな。」
「いつもの担当の長谷部さんでは
ないのですね。初めまして、
ご招待といつも我が社をごひいきして
いただきありがとうございます。
代表取り締まり役の
華名目 潤(かなめ じゅん)です。」
「…!!」
「初めまして。華名目 潤(かなめ じゅん)です。」
ま、まさか!!
じゅ、潤さん?!
部長と次長は名刺を出し交換していた。
私も慌ててだしたけど、
「よろしければ、携帯にすぐ登録
しておきたいのでこの場で登録
よろしいでしょうか?」
「ははは、さすがですな。」
「携帯は、今だに操作がわかりにくくて……。」
「パソコンや携帯もですが、我が社の
お得意分野ですから、お任せ下さい。
交換していただけますか?」
「……。」
「別所(べっしょ)君、彼たちが
かっこいいからって、ボサっとしてないで
早くやりなさい。」
「……は、はい。す、すみ…申し訳ございません。」
「全くなってないなあ、最近の
若い子は気が利かなくて、すいませんね。
この別所は初めてですが勉学のため
連れてきましたが、やはり
別の者がよろしかったようで
申し訳ございません。」
「いいえ。彼女は想像以上に素晴らしい
方ですよ。パンツスーツに、動きやすい服装。
仕事も柔軟にこなしていそうですし
あとは。周りの環境さえ整っているならば
彼女はすごくよくなりそうですね。」
「ははは、彼女を気に入ったのなら
まあ、よかったです。さあ、夜は
長いですし、料理もきましたし
さあ、いただきましょうか?」

部長たちはビールを頼み、
潤さんたちはノンアルコールビール。
私は…ノンアルコールビールを
頼もうとしたけど、部長に
こっそり耳打ちをされ、
1番安いソフトドリンクにした。

その後も事あるごとに耳打ちされ
にやけた酒くさい顔が近づいて
私の肩に触れそうになっていた。
潤さんは素早く行動し、部長の手を掴んだ。
「そう言えば、私に整体師の友人が
いるんですがデスクワークしていると
背中も肩もこりますよね。」
「そ、そうですね。」
「よろしければ、ストレッチのような
簡単なもので良ければ教えますよ。」
「いいですな。是非お願いします。」             
「全て自分でしますか?それとも素人ですが
整体っぽいのを一部私がして、
それを真似ながら一緒にします?」
「やってもらえた方が、私どもは
楽ですから、ぜひお願いするよ。」
                 ***
「ほらこの腕を上にして、ココ、
自分の手でここの脇のとこを
軽く抑えたら……。」
「痛たたた…!」
「すごく軽く触れているだけで
痛いのですか?それは大変ですね。
リンパの流れや悪いものが溜まっている
証拠ですね。悪いものはとらないと
大変なことになりますからね。」
潤さん?
潤さんは、私と目を合わしにっこり
笑っていた。
言葉巧みに部長の両手を自分たちで
動かさせ、部長たちは自分たちの手で
整体?脇や背中を押さえていた?

「友人から、仕事の合間に出来る
リンパの流れを良くする運動とか
教えて貰ってるんですよ。よろしければ
皆様もご一緒に、悪いものを
追い出しましょうか?」
少しニヤリと笑った気がする潤さん。
部長と次長に、整体の話をしていた?
整体は勉学に例えると芸術だと言う人が
いるとか、潤さんの友人は
数学だ言ってるらしい。
話をしながら、部長と次長の
腕や背中をポキポキさせ、
リンパの流れ?
すごく痛いと訴える部長と次長に
首や肩、腕を押さえていた……。
*素人の整体技術は相手に対して
大変危険ですのでおやめ下さいませ。

潤さんの友人の整体師さんの話では
骨格、筋肉を適切な位置にはめると
答えや結果が出る 数学のようだと
公式を当てはめると、スッキリ
ハッキリと差がでるとの事だった。
マッサージは国語。
マッサージする人とされる人の相性で
答えが分かれる、曖昧(あいまい)なもの。
「数学も、国語も好きですが、
人間関係も公式のようにスッキリした
関係を築きたいですね。」
と潤さん言っていた。
涙目の部長と次長は、
「な、なんだかスッキリしたようだよ。」
「肩が楽になった気がする。」
「そうですか、それは良かった。
よろしければ、もう少ししましょうか?」
「い、いや、我々はスッキリ、すっかり
気持ちよくなったからな、あ、ありがたい。
そ、そうだ。別所君、君も
してもらったらどうだね?」
「……えっ。」
「そ、そうだ。せっかくだし、別所君
君も華名目さんにしてもらいなさい。
なんなら別室でもいいんだよ。」
「別室で、ですか?」
「そ、そうだ。華名目さんさえ
よければ、うちの別所がこの後も
お付き合いしますよ。我々は
そろそろお暇させていただきます。」
「そ、そうです。あとは、若い2人で
ゆっくりとして下さい。よろしければ
部屋を取りますよ。」
「そうですか。それはそれは
ご丁寧に……。」
潤さんは、にこやかな笑みをやめて
スッと真顔になった。
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