鈍色(にびいろ)

カヨワイさつき

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朝焼け

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バイト終わり夢に向かって
動き出そうとしたともに
携帯電話のバイブが震えた。
名前が目に入り、バイブで震えているのか
すでに震えていたのかわからない
指先で通話のシルシに触れた。
「……。」
「………。」
なぜか、通じた途端どちらともなく
息を飲む音が聞こえた気がした。
「…お久しぶりです。華名目です。
お元気ですか?」
「……は、はい、げ、元気です。」
「…よかった。」
「……はい。」
「と、ともちゃん、どおしてるのか
気になってしまって、何度も電話かけて
ごめんね。」
「……い、いえ。」
「情け無いことに、何から話せば
いいのかわからないんだ。」
「……。」
「ともちゃんの声が聞けたことだけでも
うれしいのに、声を聞いたら顔をみたいし
会いたくなるし、欲深い自分が情け無いんだ。
ごめん、ともちゃん。」
「……。」
しばらくこんな会話が続いた気がした。
"ごめん"と呟かれるたび
不安になっていった。
会話はぽつぽつと途切れながらも続いて
私はなぜか、何度も潤さんに
謝られているんだろうか?
心の底ではやはり嫌われたからだろうか?
いつものように謝られたりしながら
別れを切り出されたり、私自身が
この恋なのか何なのかわからないモノに
決着をつけなければいけない時が
きたのだと思った。
息を吸い込み、耳障りの良い
潤さんの声を遮ろうとした。

「ともちゃん、俺は君と一緒にいたい。」
「……えっ?」
ともは無意識のうちに、吸い込んだ息を
止めてしまった。
「俺は…かなり酷い男かもしれない。
ズルいと思っている。俺の気持ちと
プロフィールを今からともちゃんの
メールに入れる。それを読んで欲しい。
俺は君が好きだ。ともちゃんが好きだ。」
「…わ、私も、私も潤さんが好きで
…忘れようとしたけど、忘れませんでした。」
「……えっ?忘れようとしたの?」
「……ごめんなさい。私には相応しくない
もったい人だから。」
「ちがう。俺の方こそ、ともちゃんが
素敵すぎて、もったいないお化けが
出てきそうだと思った。」
「ぷっ。もったいお化けって、懐かしい。」
「あっ……子どもっぽいよな、俺。」
とりとめない会話が続いた。
「ともちゃんに今すぐ逢いたいよ。」
「私も潤さんに、逢いたい。」
「……わかった。」
「えっ?」
そこからは何故か急速に動き出した。
気づけば、家の前の高級車に
乗り込んでいた。運転手付き。
真夜中に空いている所はなく
会話も少ないまま、華名目さんの
お部屋にいた。
広いリビングに、高級なテーブルと
落ち着いた色のソファー。
座ると立ち上がりたくなくなるような
座り心地だった。
よくいう人間をダメにする
座り心地の良すぎるソファーって
いう感じだった。

高級なテーブルの上には無造作に
置かれたコンビニの袋が4袋。
2人で宝箱の様に取り出していくと
コンビニスイーツが各種
お菓子には地域限定や季節限定と
書かれた気になる文字が目に入った。
ポテトチップ系からチョコレート系
コンビニおにぎりとかもあった。
珍しいまだ、食べたことがない
高級なおにぎりまであった。
牛めし、かきめし、かやくごはん
ホタテバターしょうゆ
びんちょうまぐろ
いくらしょうゆ……。
定番の梅、昆布、たらこ、明太子
ツナますはもちろんある。
おにぎり全種類?まさかね?
いつのまに買ったのだろうか?
「潤さん、いつの間に買ったの?」
「……んっ?さっきだよ?ともちゃんが
来てくれるのにお店も空いてないし
外食ばかりで冷蔵庫とかに、恥ずかしながら
何もないんだよね。」
「……。」
「アルコールや、コーヒーの類いは
一通りのストックはあるけどね。」
「す、すごい。」
聞くと、運転手さんにテキトーに
買ってもらったそうだ。
とてもじゃないけど、二人分にしては
多すぎる量だった。
駄菓子系のお菓子まであり、
運転手さんの好み?
それとも潤さんの好みかはわからないけど
ともも、夢中になりながらたくさんある
コンビニの食べ物を分けながら食べていた。
お互いの夢や趣味、好みの食べ物など
話した。気づけば空は明るくなっていた。
暗闇から赤く染まり始めた空は
朝焼けなのか夕焼けかわからないくらい
綺麗だった。
方向音痴に私にはこのお日様が
どの方角にあるかなんて分からない。
ただそこに潤さんがいて、ここは
潤さんの家だということに
まちがいわなかった。

「ともちゃんさえよければ
一緒にこれからも朝を迎えて欲しい。」
「……はい。」


           おわり

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