目は見えなくなったけど、この世界で頑張りたい。

いがむり

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▲お話△

戸惑って、ちょっと驚いて。

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ジークスの口付けで目を覚ました優真。ジークスの突然の告白に戸惑い、想いが受け止められない様子だった。その一方、ジャイールら家族の優真を包み込むほどの優しさに、少しの申し訳なさと大きな温もりを感じた。

《ユーマの顔を見れたことだ。俺はそろそろ帰るとしようか》

ジークスはすっくと立ち上がる。

《長》

ジャイールが呼び止め、ジャイールとミューラはジークスに深くお辞儀をする。

《ありがとう》

《ありがとうございました》

優真も立ち上がろうとするがジークスは遮り、ジークスは再び屈んで優真の耳元で囁いた。

《俺の想いは変わらんからな》

「……はい」

優真は笑って見せる。ジークスは優真を撫で、立ち上がる。

《ユーマ、また来たときに話そう》

「はい。ありがとうございました、ジークスさん」

《おささま~!》

《さま~!》

ジークスを玄関まで見送ろうとジャイールとミューラ、その後にメルとニルが続く。ジギルもついて行こうとしたが、優真のことが心配になり隣をを見た。

「……」

優真は、唇に手を添えて戸惑った顔をしていた。ジギルは自身が誤って唇に口付けをしたことを思い出した。

《ユーマっごめん!》

「え」

ジギルは優真に頭を下げた。

《ユーマの額にまじないかけようとしたんだけど、間違えて……く、くく口に……》

「(多分、キスしたんだろうね。全然気づかなかったし、まあいっか)おまじないをかけてくれたんでしょう?形はどうであれ、嬉しい。ありがとう、ギル」

お礼を言われ、驚きつつ心なしか安堵するジギル。顔を上げると優真との距離が近かったからか、顔を真っ赤にして何でもない壁に目をやった。

「ギル、僕の代わりにジークスさんを見送って来て?(多分もう終わっているだろうけど)」

《わ、分かった!》

焦りと緊張混じりのジギルの声に少々疑問を持ったが、優真はあまり気に留めなかった。ジギルの駆けた足音が遠のいていくのを聞きながら、ジークスの先ほどまでの言動に悩まされる。無意識に唇に手を置き、呟く。

「あれも、ただのおまじないなら良かったのになあ……」

 

 

 

《ユーマ》

「ジル兄さん」

暫く経って、ジャイールが優真の元へやって来た。何か聞きたいのだろう、ジャイールは優しく優真の名前を呼んだ。

「(どうしたんだろう?)」

《ユーマ、一体何があったんだ?》

「えぇっと……」

初めて魔法を使って倒れたって言っていいのか?この村に魔法を使う人はいなかった。話してしまったら、怪しまれるだろうか。

《ああ!急に聞いて悪かった。叱りに来た訳じゃないんだ》

それから僕の倒れて寝込んでいた二日間のことをジル兄さんから聞いた。誰かを呼んでいたこと、ペティさんも僕の看病に来てくれたこと、村の人たちがまじないをかけてくれたこと、特に驚いたのはガロスさんと御神木様が夜中に見舞いに来てくださったこと。僕の知らない間に色々な出来事があった。

《だが薬師に聞いても、誰に聞いても原因が分からないと言われてな。病だったなら同じことが起こらないとは言えないらしいし、倒れる前に何か原因になる物事があるかもしれないと思ってな》

そんなことを言われては、言わない訳にはいかないか……しかし、信じてもらえるだろうか。いや、信じてもらうしかない。

「僕、魔法使いなんだ」

《そうなのか!》

嘘。魔法なんて使ったこともなかった。

「魔法を使えば、僕もジル兄さんたちの役に立てると思って」

これは本当。誰かに頼ってばかりいては、いつか迷惑になってしまう。

《ならどうして夜中に?》

「夜なら、誰にも迷惑は掛からないから」

これは、半分本当だ。デリーに教わる約束だったからとは言えないし、複数ある理由の一つでもある。

「ここ最近は使ってなかったから、感覚を取り戻そうと思って……」

嘘をついている分、罪悪感を強く感じる。

《そうだったのか》

「ごめんなさい」

俯く優真にジャイールは優しく頭を撫でた。

 

 

 

優真の目が覚めたことは、村中に広まるのもあっという間で、体を休めるため優真との対面は無かったものの、お祝いの品物が夜まで続いた。

《ユーマにいちゃん、お花いっぱいある~!》

《木の実もたくさんあるぞ!》

《いっぱい!たくしゃん!》

三兄弟は家に届いた品物を見て大はしゃぎ。

《しばらくはご飯も豪華になるわね!》

《《》》

三兄弟に混ざってジャイールも同じように喜んでいる。しかし、不思議そうな顔をしている人が一人。

「僕、村の皆に何かした……?」

《ああ、それはね——》

ミューラ姉さんは僕の頭に何かを置いた。微かに花の匂いが香ってくる。

「(これって)……花冠?」

《ええ、ロディとフィオが配って回ったみたいなの。この花冠がとても喜ばれて、そのお礼にって》

そういうことがあったのか。だからあんなに作らせて……

《この花冠、ユーマがメルたちに教えてあげたんでしょう?》

「僕が知っていた編み方を少し教えただけだよ」

メルとルルに貰った花冠は遊んでいる内に解けてしまった。その花々を拾って、僕なりに編み直したのが意外にも好評で、ロディとフィオを含めた全員に教えた。学校の帰り道、いつも遠回りをして少し離れた図書館で宿題を済ませてなるべく時間を潰し、早く家に帰らないようにしていた。そのかいもあってか、中学校と高校には国公立の学校に入学できたし、ある程度の知識は持ち合わせることが出来た。

「(それでも、生徒の大半が同じ進学先だったな。ああなる前に、もっと上の学校に行くべきだったかもしれない)」

《ユーマにいちゃん!またあそぼっ!》

メルは僕の左手を掴み振り回している。

「そうだね。また遊ぼう」

《メルばかりずるいぞ。今度は俺も!》

《ニルも!》

片付け終えたのか、ジギルとニルも優真のもとに戻ってきた。その後ろからジャイールも歩いてきた。

《おいおい、俺とは遊んでくれないのか?》

()

《いいのっ!》

ニルにまで言われて大分ダメージを食らってしまった様子のジャイールだった。

「(あはは……)」

 


△▲△▲△
大変お待たせいたしましたぁぁぁあぁ
スライディング土下座ぁぁぁ

本当にお待たせしましたm(_ _)m

こんなに忙しいことは今までになかったんじゃないかってくらい、てんてこ舞いで手をつけていませんでしたっ!(言い訳)

しばらくこんなペースになると思います(いや、もう少し早くなるかも?)。どうぞ気長にお待ち下さいませぇぇぇぇぇぇぇぇ!
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