14 / 32
出会い
第14話 試験
しおりを挟む――ゼンタと会話をした次の日から、シキは今まで以上に頑張ってた。
朝は、手早く掃除をすませ、ゼンタに指導を乞い
昼は、ゼンタの仕事、生徒への指導に付き添いながら、自らにも落とし込み
日が落ちたは、再び後ゼンタに稽古をつけてもらった。
そして1週間後、夕食を囲んでいる時――
「シキ君。凄い頑張ってるね!どうおじいちゃん?」
「うむ、よく努力しておるよ。元々、力はあったからのう。動きが格段によくなっておる。」
「…ありがとうございます。」
「そこでじゃ。明日、試験を行おうと思う。」
「凄いじゃん!シキ君。今までで1番早いんじゃないかな!」
「…アカ、明日の試験で相手になってやってくれんか?」
「いいよ~。任せて!」
「……よろしくお願いします。」
――夜が明けた。
道場に3人の姿があった。
「では、今から試験を行う。シキ、アカ準備はよいな?」
「……うす。」
「私もいいよ~!」
「では、始め!」
シキは合図と共にアカに向かっていった。
アカは驚きはしたが、それをいなしていく。
「凄い!凄いよ!シキ君。たった1.2週間で!」
「……」
シキの攻撃はいなされていくが、アカもシキの勢いに攻めきれずにいた。
そのうち、アカも真剣な表情を見せ始めた。
繰り返される攻防のなか、アカが大きく息を吸った。
その瞬間をシキは見逃さなかった。
アカの腕を掴み、投げようとした――
パンッという音と共にシキがアカに投げられた。
「そこまでっ!」
ゼンタが声を上げた。
「本当に凄いよ!シキ君。あたし負けちゃうかと思った!」
「試験はここまでとする。……シキ、合格じゃ。」
「よかったね!シキ君!」
「……アカ、お主は不合格じゃ。」
「――え?」
ゼンタの言葉にアカは戸惑った。
「……どういうこと?これはシキ君の試験でしょ?」
「アカ。お主は最近セキと名乗ってるそうじゃな。」
「……」
「本当にセキと認めるかどうかもみておったのじゃ。」
「……勝手に言ってたのは悪いけど、あたし勝ったよね?」
「確かに勝った。……じゃが、負けたのじゃ。」
「いやいや、意味がわからない。あたし十分強いし、いい加減セキを譲ってくれてもいいじゃん!」
「色を使ったじゃろう。」
「ダメって言われてないから!」
「シキは使っとらん。シキに投げられそうになって使ったということは、色抜きでは負けておる。」
「……そんなの、屁理屈じゃん。勝ったんだからいいでしょ!」
「アカ、色を使って勝つということは技術で負けてるということじゃ。ここは、守るための技術を教える場。ただ、相手に勝つためではない。お主は何を守るために、シキを投げたのじゃ。」
「……」
「お主にはセキの名はまだ早い。」
アカはその言葉を聞くと、道場を飛び出していった。
ゼンタがシキに声をかけた。
「助かったわい、シキ。よく1週間でやってくれた。」
「いえ、自分のためでもあったんで…。アカはいいんですか?」
「いいんじゃ。アカは確かに強い。だがな、最近は鍛錬もろくにせず、強いことにあぐらをかいとったからな。これで、初心を思い出してくれればいいんじゃが…」
「……そうすか。」
「ところで、シキ。お主は本当に合格じゃ。ここでの鍛錬を忘れずに、日々努力し続ければ大抵のことは大丈夫じゃろう。」
「うす。ありがとうございました。」
「……これから、どうするんじゃ?」
シキはイロの話を詳しくゼンタに伝えた。
「そうか。キャンバスを探しにのう。……すまんが、力にはなれそうにないのう。」
「いえ、もともと本当にあるのかもわからないので…」
「まぁ、今日まではゆっくりしていけ。そうじゃ、アカにもその話をしてやってくれんか。」
「ありがとうございます。…わかりました。」
シキとゼンタは道場を後にした。
シキが部屋に戻ると、アカが外をぼーっと見ていた。
シキはどう声をかけようかと迷いながら言った。
「――その、今日は残念だったな。」
アカはシキを睨みつけながら言った。
「シキじゃないよね?セキのことバラしたの…」
「違う違う。ゼンタさんは知ってたんだ。」
「……まぁ、本当に疑ってるわけじゃないけどさぁ。」
(街中で名乗ってれば、そらばれるだろ)
と、シキは思ったが口には出さなかった。
「いつからかな~。あたし成長してるって思えなくなってさ。負けることも少なくなって…あたし強いんだ~って思ってた。そしたら、まぁやる気も無くなって。…今日は負けたけどさ。」
「いや、アカは強いよ。今日だって勝ったとは思ってねぇ。」
「ううん。おじいちゃんに言われた時、ハッとした。シキの試験なのに、何で勝つことを優先したんだろうって。ただ負けたくなくて、あたしは強いって自分の小さな意地を守ってるんだと思った。ダサいな~…」
「いや、負けたくないって気持ちは当たり前だろ。」
「……ありがと。でも、同じ土俵で戦うべきだった。シキはまだ、色との組み合わせまでしてないんだから。」
「…俺に色はない。今日の試験で終了だ。」
「……え?」
「俺はこの体だけでやっていくしかないんだ。」
そこから、シキはイロの話を詳しくアカに話し、明日旅立つことを伝えた。
「……そっか。――よし、決めた!」
そう言ってアカは部屋を飛び出していった。
(――え?何を決めたんだよ?)
シキは訳が分からなかったが、とりあえず元気になったアカを見てホッとした。
――夕食
「シキ、お主はよく頑張った。これからも鍛錬を続けるのじゃよ。」
「うす。ありがとうございました。」
「シキ君!本当に頑張ったね!」
「おう。……ところで、アカは何を決めたんだよ。」
「ふふん。それは秘密だよ。」
「何の話じゃ?」
「いや、俺にもわかんなくて……」
「もーいいじゃん!今日はシキ君の送別会って事で楽しもうよ!」
その日の夕食はシキにとって楽しい時間になった。
ゼンタもアカも楽しそうにしていた。
――次の日、玄関にシキとゼンタがいた。
「本当にお世話になりました。あの、アカとのことですが…」
「わかっておる。お主とアカの間に何もないことくらい。」
「……ありがとうございました。」
「うむ、頑張るんじゃよ。――ところで、アカのやつはどこにいったんじゃ。」
「……さあ?俺も知らないっす。」
「まぁ、よい。気をつけての。」
シキはゼンタに深く頭を下げて、その場を立ち去った。
門まで来た時、後ろから大きな声がした。
「シキー!走って走って!」
アカが凄い勢いで走って来る。
「早く!早く!」
アカの後ろから、ゼンタも走ってきている。
「待たんか!アカー!」
「嫌だよ!おじいちゃん!あたし、シキと旅して来る!」
「許さん!おじいちゃんは許さんぞー!」
シキは勢いに押され、走り出した。
「じゃーね!おじいちゃん。あたし、シキと旅して守るってことについて、考えて来るからー!」
「それはいいが、男と2人旅など許さーん!」
シキとアカは恐怖を感じ、全力で走った。
次第にゼンタの声は遠くなっていった――
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる