26 / 32
出会い
第26話 ズックの思い
しおりを挟む――祝勝会は盛り上がった。シキもアカもズックも大いに酒を飲み、話を楽しんだ。
「よかったよ~。みんなが無事で!」
「本当な!それにしても、ズックには驚いたな!キャンバスに細工して、助けを求めるなんてよ!」
「……」
「本当だよ~。やっぱり腕がいいんだね!」
「いや~、何もしてないとか思って怒ってたの恥ずかしいよな!」
「本当だよ~。私とか、人として良くないとか言っちゃって、ズックさん…ごめんなさ~い。」
「……」
ズックの口がゆっくりと動き出した。
「……俺には、それくらいしか出来なかった。お前たちに言われて、ハッとしたこともある。確かに逃げていたところもあった。だが、お前たちにも知って欲しい。人が皆お前たちのように強いわけじゃないんだ。人はそれぞれ、自分のできる範囲で頑張っている。」
「……」
「……」
「…お前たちは強い。これから出会う人々に、もどかしくなる時もあるだろう。だが、そんな時は寄り添い、その強さで手を差し伸べてやってほしい。」
「――わかったよ、ズック。」
「さすが!あたしも未熟だな~、頑張ります!」
「……さぁ、飲もう!」
3人の祝勝会は、明け方まで続いた――
――ドンドンッ
ドアを叩く音で3人は目覚めた。
「おはよう!さぁ、キャンバス作り習いにきたぞ!」
「……」
「……」
「……」
「何だよ、元気ねーなー。」
「リンネル…。頭が痛い……静かにしてくれ……」
「飲み過ぎなんだよ。いい大人がさー。」
「……」
「……」
「……」
3人は何も言わず、のそのそと起き上がりそれぞれに準備を始めた――
シキとアカが旅支度を済ませ、出発しようとしている。
ズックとリンネルは2人を見送った。
「ありがとう。2人とも!俺これから頑張るね!」
「よかったな、リンネル。立派なキャンバス職人になれよ!」
「頑張ってね~リンネル君。」
「……お前たちの探し物も見つかるといいな。」
「あぁ、ありがとう、ズック。」
「……また、この街に来ることがあったら歓迎するぞ。」
「その時はまた、飲み明かそうね~。」
「じゃあ、またな!」
2人は旅立って行った。
見送りながら、ズックはリンネルに語りかけた。
「……今まで、すまなかった。これからはしっかりと教えてやるからな。」
「もう、いいよ。…ズック、これからは一緒だ。あんまり酒ばっかり飲むなよな。」
「……あぁ、ありがとう。」
久しぶりの晴れやかで暖かい心に、ズックは気づいた。自然と出てくる涙を拭い、リンネルと家の中へと入って行った。
ズックとリンネルの名は世界中に轟くことになるのだが、それはまだまだ先の話――
旅立った2人はさっそく揉めていた。
「だから、金の無駄だったじゃねーか!」
「無駄じゃないよ!銃のおかげで助かったでしょ!」
「1回で壊れたんだろ!」
「それ、あたしのせいなわけ?」
「――それは、知らんけど…」
「なら、文句言わないで!あの店の人見つけたら、問い詰めてやる!」
「……」
シキはそのやりとりも楽しく思いながら、ドラフターへと歩みを進めて行った――
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる