言魂学院の無字姫と一文字使い ~ 綴りましょう、わたしだけの言葉を ~

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第1章 無字姫、入学す

第21話 キスの先にあるもの

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 またしても、完全に忘れていました。
 可能なら、忘れたままでいたかったです。
 しかし、それは無理な相談。
 何故なら、彼女たちはずっとそのつもりだったのですから。

「さーて! 夜宵ちゃん! 誰が1番だった!?」

 問い掛けの形は取っていますが、自分を選べと言わんばかりの一葉ちゃん。

「夜宵さん、ワイン美味しかったわよね?」

 妖艶な流し目を送って来る光凜さん。

「無明! 当然、わたしだな!?」

 前のめりになって、必死な形相の天羽さん。
 どうしましょう……。
 全く考えていませんでしたが、改めて思い返してみても、全部楽しかったです。
 はっきり言って、優劣なんて付けられません。
 もっとも、そのような返答をしたところで、皆さんが聞き入れるとは思えませんけど……。
 困り果てたわたしは、いっそのこと全員とキスしようかとすら考え始めていましたが、そこに待ったを掛ける人がいました。

「何を終わった気になっているんだ? 次は俺の番だろう?」
『え?』

 一色くんの言葉に、彼以外全員の声が重なりました。
 ちなみに、最も呆気に取られていたのは、わたしだと言い切れます。
 そんな女性陣に頓着せず、一色くんはツラツラと言葉を並べ立てました。

「俺も参加者なんだから、案内する権利はあるはずだ」
「ま、待て! 貴様も無明と口付けがしたいと言うのか!?」
「天羽、そう言う訳じゃない。 だが、勝負である以上は勝ちに行く」
「あんた、そんな気持ちで邪魔すんじゃないわよ! あたしたちは、真剣なんだからね!?」
「俺だって真剣だぞ。 それとも負けるのが怖いのか、九条?」
「な!? そんなこと――」
「挑発に乗らないで、猪娘。 一色くん、貴方の考えはわかったわ。 じゃあ聞くけれど、万が一、貴方が勝った場合はどうするつもり?」
「どうと言われてもな。 ルールには従う」

 光凜さんの問を受けた一色くんが、こちらを見ました。
 その顔には何ら変化はなく、恥ずかしいの「は」の字もないです。
 そうですか、そうですか。
 貴方にとってわたしとのキスなんて、取るに足らない出来事なんですね。
 わかりました、理解しました、把握しました、認識しました、飲み込みました、悟りました、承知しました、了解しました、心得ました。
 今のわたしの顔には、恐らく喜怒哀楽のどれでもない、完全なる無表情が張り付いているでしょう。
 それほど心が静かで、微動だにしていません。
 天羽さんたちが何やら怯えていますが、それに対しても何も思いませんでした。
 対する一色くんもいつも通りですけど、どうでも良いです。

「行きましょう」
「む、無明? どこに行くのだ?」
「それは一色くんに聞いて下さい、天羽さん。 彼が案内してくれるらしいので」
「や、夜宵ちゃん、なんか怖いよ?」
「気のせいですよ、一葉ちゃん」
「どうやら、完全に怒りの臨界点を突破したようね……」
「光凜さん、わたしは怒ってなどいません。 さぁ、早く行きましょう。 そして、すぐに終わらせましょう」

 どこまでも平坦な声を発して、一色くんを見ます。
 やはり、何も感じません。
 大丈夫、わたしは落ち着いています。
 微塵も問題ありませんね。
 やろうと思えば、今すぐ一色くんに斬り掛かれるくらいです。
 適当に考えましたけど、意外と名案かもしれません。
 いっそ本当にそうしましょうか。
 まぁ、冗談ですけど。
 などと思考を巡らせていると、ようやくして彼は動き出しました。
 さて、どこに連れて行ってくれるんでしょうね。
 毛ほども期待しないまま、他人事のように足を動かし続けます。
 背後に天羽さんたちの気配を感じますけど、どことなく縮こまっているようでした。
 何かあったんでしょうか?
 一瞬だけ疑問に思いましたが、すぐにそれも霧散します。
 今のわたしは、ただの人形。
 人の形をしていますけど、中身はありません。
 だから、喜ぶことも怒ることも哀しむことも楽しむこともないんです。
 そうして暫く歩き続けると、どんどん人里が遠くなって、首都の中でも人の手が入っていない、木の生い茂る丘のようなところを登り始めました。
 ……どこに向かっているんですか?
 問い掛けそうになりましたが、言葉を飲み込みます。
 人形が疑問を持つことなど、ないんですから。
 更に静寂が続く中、草木を掻き分けて開けた空間に辿り着き――

「わぁ……」

 気付かないうちに、感嘆の声をこぼしていました。
 間もなくやって来た天羽さんたちからも、驚愕した雰囲気が発せられています。
 わたしたちの目の前に広がっているのは、沈み行く太陽に照らされた街並み。
 何とも素晴らしい光景で、感動してしまいました。
 悔しいです……。
 絶対に一色くんの案内を楽しまないつもりだったのに、呆気なく心を動かされてしまいました……。
 本当に情けないですね……。
 同時に、腹立たしくも思いました。
 これだけ人に影響を与えておいて、自分は何とも思っていないだなんて……不公平です。
 堪えていた感情が涙となって溢れ、頬を伝って流れ落ちました。
 自分が今、何に対してどのように思っているのか、わかりません。
 ただ、激情が渦巻いているのは確かです。
 声も出さず急に泣き出したわたしを、天羽さんたちは瞠目して見つめているようでした。
 きっと、いきなり過ぎてどう接すれば良いのか、迷っているんでしょうね。
 わたし自身、己の感情を持て余しているので、そっとしておいてもらえると助かります。
 そう考えていたのに……一色くんが、無言でハンカチを差し出して来ました。
 彼の顔が見れず、唇を噛み締めてハンカチを凝視していましたが、退くつもりはなさそうです。
 はぁ……わたしは、一色くんに一生勝てないかもしれません。
 諦念とともに盛大に溜息をついて、彼の手からハンカチを取り、涙を拭きました。
 泣いたことでいろいろと吹っ切れたのか、思いのほかスッキリしています。
 まだ、一色くんをまともには見れませんけど……。
 気まずい空気が充満したまま時間が経ち、いつしか太陽が寝静まりました。
 夜が訪れて、街に明かりが灯っています。
 あの明かり1つ1つに人生があるのかと思うと、より一層ヒノモトを守りたいと思いました。
 天羽さんたちも何かを感じているらしく、黙って眼下の街並みを眺めています。
 これにて、今日のお出掛けは終わるかに思われましたが、彼は踵を返して背中越しに声を投げて来ました。

「付いて来い」
「え……まだ何かあるんですか?」
「来たらわかる」

 意地を捨てたわたしは素直に尋ねましたけど、一色くんはろくに説明してくれませんでした。
 何なんですか、もう……。
 天羽さんたちと顔を見合わせたわたしは、改めて嘆息しつつ、率先して彼を追い掛けました。
 いまさら、一色くんに丁寧な対応を求める方が、間違っていますよね……。
 謎の悟りを開いた気分のわたしが、黙って歩みを進めていると、彼は街とは反対の方に向かっているようです。
 何を見せてくれるんでしょうか?
 率直な疑問と、僅かばかりの期待を胸に歩き、またしても開けた場所に出ました。
 しかし、今度は暗闇が広がっていて、特に見るべきものはないように感じます。
 どう言うことでしょう……?
 不思議に思ったわたしが、疑問を乗せて一色くんに視線を向けると、彼は淡々と言い放ちました。

「上だ」
「上……?」

 彼の言葉につられて空を見上げると、そこには――星の海。
 街の明かりが届かないことで、星の輝きを存分に堪能出来ます。
 凄いですね……。
 母上と山奥で暮らしていたときを、思い出します……。
 少しばかり感傷的になっていたわたしの一方で、天羽さんたちも衝撃を受けているようでした。
 ずっと首都にいても、わざわざこんなところに来る人はいないでしょうし、初めて見たのかもしれません。
 楽しいか楽しくないかで言えばわかりませんけど……心の底から来て良かったと思います。
 荒んでいた心が解きほぐされるのを感じつつ、苦笑を浮かべて絶景を眺め続けました。
 すると――

「ん~……今回は負けかなぁ」
「随分と聞き分けが良いわね、猪娘。 ……でも、わたしも同じかしら」
「認めたくはない。 認めたくはないが……致し方あるまい……」

 悔しそうな一葉ちゃんと光凜さん、天羽さん。
 は……そ、そう言えば、そう言う話でした……。
 か、彼女たちが負けを受け入れたと言うことは、勝ったのは一色くん……?
 となると……わ、わたしは彼とキスをすることに……!?
 急激に鼓動が速くなって、顔が紅潮するのがわかります。
 ま、真っ暗で良かったかもしれません……。
 落ち着きをなくしたわたしが一色くんを見ると、彼もこちらを見ていました。
 本気なんですか……!?
 目を逸らすことも出来ずに固まっていると、一色くんは真っ直ぐに歩み寄って来ました。
 天羽さんたちは無念そうにしながら、止める様子はありません。
 今回に限って潔いですね……!
 わたしとしては、止めて欲しいのかそうでもないのか、良くわからない精神状態でしたけど、彼は容赦することなく目の前に立ちます。
 背の高い彼をビクビクしながら見上げ、その端正な顔に視線が固定されました。
 もう、覚悟するしかないです……よね?
 意を決したわたしは、ガチガチのままギュッと目を瞑って、軽く顎を上げることで唇を差し出します。
 うぅ……恥ずかしい……。
 するなら早くして下さい……!
 体の震えが止まりませんが……い、嫌だと言う感情は、ないかもしれません。
 ただ、待っているこの時間は永遠にも等しく、いよいよもって限界が訪れようとして――唇が塞がれました。
 や、やってしまいました……!
 これが、わたしの初キスなんですね……。
 なんだか不思議な気持ちです。
 寸前まであれだけドキドキしていたのに、今はとても心が穏やかになっていました。
 相手が一色くんだと言う事実にも……後悔はありません。
 それにしても、一色くんの唇って結構固いんですね。
 ……いえ、そもそもこれって、本当に唇ですか?
 恐る恐る目を開けたわたしですが、視界に飛び込んで来たのは当然ながら一色くん。
 ただし、距離は思ったよりも遠く、なんとなく呆れ果てているように見えます。
 そして、唇に押し当てられているのは、彼の人差し指でした。
 えぇと……何ですか、これ……?
 状況に付いて行けないまま呆然としていると、わたしの唇から指を離した一色くんが、溜息混じりに声を発しました。

「もっと自分を大事にしろ」
「へ……?」
「天羽たちに何を言われたか知らないが、こんなことで体を許すな」
「か、体を許すって……」
「一生に1度のことだ。 きちんと考えて、行動するんだな」
「……はい、わかりました」

 言いたいことを言い終えたのか、一色くんは天羽さんたちを一瞥しました。
 それを受けた彼女たちは、少しばかりバツが悪そうにしています。
 すぐに視線を外した彼は、何も言わずにその場を去りました。
 最後までマイペースでしたけど……真剣に考えてくれていたんですね……。
 わたしのことなんて、どうでも良いのかと思っていましたけど、そうじゃないのかもしれません。
 あ……ハンカチを返しそびれました……。
 洗って返すか、新しいのを買うか迷いますね。
 まぁ、今度聞きましょう。
 彼との関係は、これからも続いて行くんですから。
 胸に手を当てて微笑を漏らしたわたしは、天羽さんたちに呼び掛けます。

「皆さん、帰りましょうか」
「無明……。 すまなかったな……」
「今度は普通に遊ぼうね……?」
「わたしも、今日のことは反省するわ……」
「そ、そんな、謝らないで下さい。 わたしは気にしていませんし、本当に楽しかったですから」
「そう言ってもらえると、救われるが……」
「じゃあ天羽さん、1つだけお願いしても良いですか?」
「無論だ。 天羽家の総力をもって、望みを叶えよう」
「そ、そう言うことじゃないんですけど……。 あ、一葉ちゃんと光凜さんも、お願いしたいです」
「う、うん! あたしに出来ることなら、何でも言って!」
「わたしも、可能な限り要望に応えるわ」
「有難うございます」

 変に慰められるより、厳しくされた方が楽になることもあります。
 天羽さんたちも、そう言う状態に感じました。
 だからと言って、彼女たちを責める気なんてありませんけど、お願いしたいことがあるのは間違いありません。
 何でもない風に装って笑顔を心掛けつつ、考えを伝えます。

「一色くんと、もう少しだけ仲良くして欲しいです。 彼はあんな感じですけど……本質は、とても良い人だと思うので」
「ふむ……。 確かに、思っていたほどのろくでなしではなさそうだ」
「そうね、四季さん。 好きか嫌いかで言えば、お世辞にも好きとは言えないけれど」
「あたしだってそうよ! けど……夜宵ちゃんの言ってることもわかるから、ちょっと考えてみるね」
「よ、良かったです。 では、行きましょうか」

 完全に一色くんを受け入れてくれたとは言えませんけど、天羽さんたちは妥協してくれるようです。
 わたし自身が、まだ彼のことを把握出来ていませんし、今はそれで充分ですね。
 今日だけで様々なことが起こりましたが、とても濃密な時間だったと思いました。
 明日からは、また授業が再開されます。
 人間関係も戦闘技能も、少しずつ進歩させましょう。
 そう誓ったわたしですが、世界はそれほど優しくありませんでした。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次回、「第22話 参言衆の試練」は、21:00公開予定です。
読んでくれて有難うございます。
♥がとても励みになります。
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