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着いた先は如月駅⁉
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「んん...あれ?寝ていたのか...」
僕はまぶた越しでも分かる明るさで、目を覚ました。まだ少しショボショボとする目で辺りを確認する。そこには茶色の椅子があり、天井からはつり革がぶら下がっている、まさしくさっき乗った電車の中だ。しかしさっきと大きく変わっている点が二つあった。まずは外の風景だ。さっきの闇とは打って変わって、澄んだ茜色に染まった空を背景とした、延々と続くかのようにすら思える田園風景に変わっている。そしてもう一つ、車内ガ乗客が乗客で溢れているのだ。全体的にお年寄りが多いが、同い年ぐらいの子や年下も何人かはいる。
しかしこの変化をそう深く考える気に、今の自分はなれなかった。じっと窓の外に目をやる。
「綺麗だな...」
思わず声が出てしまう。僕は運が良かった。最後にこんな最高の景色が見られて...
冥土の土産とはまさにこの事だろう。
それに田舎の方に来た事自体も運が良かった気がする。本来自殺する姿なんて誰にも見られたくない。田舎なら当分見つからなくても済むだろう。
でも、やっぱり死ぬ瞬間って苦しいんだろうか。外の風景を見ながら考え事をしていると、そんな事がふと脳裏をよぎった。前に読んだ小説では何も感じないって書いてあったが、結局こればかりは作者の想像だ。これの答えを知る者は誰もこの世にはいない。
とにかく、次の駅で降りるとしよう。この絶景は人生の最後に最高に相応しい。
すると、突然車内アナウンスが流れ電車が減速を始めた。どうやらもう駅に着くらしい。
「キサラギ~、キサラギ~。終点です。今までお疲れ様でした~。足元にお気をつけてお降りください~。」
キサラギ駅、どこかで聞いたことがある気がする、しかし何処で聞いたか思い出せない。
まぁ、思い出せなくても終点という事は降りざるを得ないだろう。電車はホームに入り停止し、ドアが開いた。他の乗客は次々と降りていく。田舎にしては降りる人がかなり多い。改札口前に列が出来ている。僕も電車から降りその列に加わる。
並んでる間、僕は駅の中を見回した。全体的に木造でコンクリートはほとんど使われていない。それに駅の中にあるポスターはもうだいぶ長いこと貼られているらしく、色褪せていて何が書いてあったかもわからない。それに機械が全くと言って良いほどない。普通の駅なら電光掲示板とかがぶら下がっていて、自動販売機とかが置いてあるがそういった物は見当たらず。そして極め付けは、改札が二つあるのだがその両方が人の手で行われている。こんな改札は写真や映画でしか見た事が無い。まるで大正時代にでもタイムスリップしたみたいだ。
「すいませ~ん、そこの方~。すいませ~ん。」
駅員が次の人間を呼んでいるようだ。降りた時もお年寄りが多かったから、多分聞こえてないんだろう。人間誰だってよる年並に勝てないのか。
そう思って駅の観察を続けていると、後ろから肩を叩かれる。振り向くとそこには同い年ぐらいで腰まで伸びた黒髪の女子がいた。
「ど、どうしたの?」
初対面の人と話すのに慣れてなくてついつい吃ってしまった。多分心の中でキモがられてるんだろうな。
「前。」
そう言ってその子は改札の方を指差す。もう一度振り返って改札の方を見る。それでやっとどういう事か理解した。駅員が呼んでる次の方とは、僕のことだったらしい。女子を横目でチラッと見、軽く頭を下げてから改札の方へ行く。
「運賃を。」
そう言って駅員が手を差し出してくる。運賃とは一体どういう事だろうか。改札でお金を取る駅なんて初めてだ。それに僕はすでに切符を買っている。
「あの~、僕、切符でここまできたんですけど~。」
そう言って僕は切符を駅員の手に置いた。駅員はそれを目の前まで持っていきまじまじと見つめる。そして見つめ終えると
「少しここで待っていて下さい。」
それだけ言い残して切符を持ったまま、走って行ってしまった。
すると今度はもう一方の改札の駅員が僕の後ろに並んでいる人達に声をかける。
「後ろの方はこちらの列に並んでください。」
僕の後ろの人たちはみんなそのまま隣の列に並び始めた。
そして待つこと数分、さっきの駅員がもう一人、六十代くらいの年上の駅員を連れて帰ってきた。ちょっと顔が怖い。二人が僕の前で止まる。年上の駅員の方が僕の顔をじっと見つめる。くせでついつい目を逸らしてしまう。数秒後やっと年上の駅員が口を開く。
「君がこの切符の持ち主だね。話を聞きたいからちょっと着いて来てくれるかい?」
顔の割に物腰は柔らかくて少し安心した。
「はい。」
結局相手の目すら見ず、俯いたまま返事をした。人と話すのは前から苦手だったが、最近特に悪化してしまったようだ。そのままその駅員について歩き始める。そして男は木製の少し高級そうな扉の前で立ち止まる。僕も立ち止まり、扉を見る。扉の上半分の真ん中に『駅長室』と書かれた札が付いている。駅員が扉を開く。
「さぁ、中に入ってくれ。」
そこには奥には大きめの木製机がある、よくドラマの社長室とかにあるやつだ。そしてその前にも小さな机がありフカフカの革製の高級そうな椅子が左右に二つずつ置かれている。
匂いは少し埃っぽかったけど、それがまた何故か癖になってしまうような。そんな独特な匂いが鼻腔を突く。
「そこに座ってくれ。」
駅員が左側の椅子を指差して座るように促したので、僕はその通りにした。
僕はまぶた越しでも分かる明るさで、目を覚ました。まだ少しショボショボとする目で辺りを確認する。そこには茶色の椅子があり、天井からはつり革がぶら下がっている、まさしくさっき乗った電車の中だ。しかしさっきと大きく変わっている点が二つあった。まずは外の風景だ。さっきの闇とは打って変わって、澄んだ茜色に染まった空を背景とした、延々と続くかのようにすら思える田園風景に変わっている。そしてもう一つ、車内ガ乗客が乗客で溢れているのだ。全体的にお年寄りが多いが、同い年ぐらいの子や年下も何人かはいる。
しかしこの変化をそう深く考える気に、今の自分はなれなかった。じっと窓の外に目をやる。
「綺麗だな...」
思わず声が出てしまう。僕は運が良かった。最後にこんな最高の景色が見られて...
冥土の土産とはまさにこの事だろう。
それに田舎の方に来た事自体も運が良かった気がする。本来自殺する姿なんて誰にも見られたくない。田舎なら当分見つからなくても済むだろう。
でも、やっぱり死ぬ瞬間って苦しいんだろうか。外の風景を見ながら考え事をしていると、そんな事がふと脳裏をよぎった。前に読んだ小説では何も感じないって書いてあったが、結局こればかりは作者の想像だ。これの答えを知る者は誰もこの世にはいない。
とにかく、次の駅で降りるとしよう。この絶景は人生の最後に最高に相応しい。
すると、突然車内アナウンスが流れ電車が減速を始めた。どうやらもう駅に着くらしい。
「キサラギ~、キサラギ~。終点です。今までお疲れ様でした~。足元にお気をつけてお降りください~。」
キサラギ駅、どこかで聞いたことがある気がする、しかし何処で聞いたか思い出せない。
まぁ、思い出せなくても終点という事は降りざるを得ないだろう。電車はホームに入り停止し、ドアが開いた。他の乗客は次々と降りていく。田舎にしては降りる人がかなり多い。改札口前に列が出来ている。僕も電車から降りその列に加わる。
並んでる間、僕は駅の中を見回した。全体的に木造でコンクリートはほとんど使われていない。それに駅の中にあるポスターはもうだいぶ長いこと貼られているらしく、色褪せていて何が書いてあったかもわからない。それに機械が全くと言って良いほどない。普通の駅なら電光掲示板とかがぶら下がっていて、自動販売機とかが置いてあるがそういった物は見当たらず。そして極め付けは、改札が二つあるのだがその両方が人の手で行われている。こんな改札は写真や映画でしか見た事が無い。まるで大正時代にでもタイムスリップしたみたいだ。
「すいませ~ん、そこの方~。すいませ~ん。」
駅員が次の人間を呼んでいるようだ。降りた時もお年寄りが多かったから、多分聞こえてないんだろう。人間誰だってよる年並に勝てないのか。
そう思って駅の観察を続けていると、後ろから肩を叩かれる。振り向くとそこには同い年ぐらいで腰まで伸びた黒髪の女子がいた。
「ど、どうしたの?」
初対面の人と話すのに慣れてなくてついつい吃ってしまった。多分心の中でキモがられてるんだろうな。
「前。」
そう言ってその子は改札の方を指差す。もう一度振り返って改札の方を見る。それでやっとどういう事か理解した。駅員が呼んでる次の方とは、僕のことだったらしい。女子を横目でチラッと見、軽く頭を下げてから改札の方へ行く。
「運賃を。」
そう言って駅員が手を差し出してくる。運賃とは一体どういう事だろうか。改札でお金を取る駅なんて初めてだ。それに僕はすでに切符を買っている。
「あの~、僕、切符でここまできたんですけど~。」
そう言って僕は切符を駅員の手に置いた。駅員はそれを目の前まで持っていきまじまじと見つめる。そして見つめ終えると
「少しここで待っていて下さい。」
それだけ言い残して切符を持ったまま、走って行ってしまった。
すると今度はもう一方の改札の駅員が僕の後ろに並んでいる人達に声をかける。
「後ろの方はこちらの列に並んでください。」
僕の後ろの人たちはみんなそのまま隣の列に並び始めた。
そして待つこと数分、さっきの駅員がもう一人、六十代くらいの年上の駅員を連れて帰ってきた。ちょっと顔が怖い。二人が僕の前で止まる。年上の駅員の方が僕の顔をじっと見つめる。くせでついつい目を逸らしてしまう。数秒後やっと年上の駅員が口を開く。
「君がこの切符の持ち主だね。話を聞きたいからちょっと着いて来てくれるかい?」
顔の割に物腰は柔らかくて少し安心した。
「はい。」
結局相手の目すら見ず、俯いたまま返事をした。人と話すのは前から苦手だったが、最近特に悪化してしまったようだ。そのままその駅員について歩き始める。そして男は木製の少し高級そうな扉の前で立ち止まる。僕も立ち止まり、扉を見る。扉の上半分の真ん中に『駅長室』と書かれた札が付いている。駅員が扉を開く。
「さぁ、中に入ってくれ。」
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匂いは少し埃っぽかったけど、それがまた何故か癖になってしまうような。そんな独特な匂いが鼻腔を突く。
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