Paradox world

紅 匠

文字の大きさ
5 / 26
一章 出会いと約束

通信

しおりを挟む
 朝、目覚めると僕の腕の中に瑞稀がいた。すやすやと、気持ちよさそうに眠っている。ふと、窓の外に目をやると、ガラスに雨水が打ち付けていた。
僕は彼女を僕の体から離し、窓の外を確認する。窓の外は想像以上の大降りだった。このままだと冠水してしまうかもしれないくらい。それくらい降っていた。

「あ...そうだ...Twitter...」

僕は昨日のツイートになにか来ているかを確認するためにスマホの電源を点け、通知を確認してみる。と、そのツイートに反応があった。

「私たちは、いま東京駅構内にいます。今ここには男女二人ずつがいます。協力したいです。」

と、一言返信が返っていた。それに僕はハートマークを付けて、

「ありがとうございます。本日はあいにくの天気ですので、天気が落ち着き次第、そちらに向かわせていただきます。」

そう返信した。
文字上ではあるが、瑞稀以外の人間と初めて交流したから、少し安心した。

「今日は、昨日の疲れをしっかり癒すか...」

そう呟いて、僕はまた彼女の元へ行き、起きた時と同じ体勢で、抱きしめた。

~A few hours later~

小一時間程度経っただろうか、瑞稀がぴくりと体を震わせ、目を開ける。のと同時に

「ちょ...何してるの...?」

と、ゴミを見るかのような目で睨まれた。あいつは、僕が抱きついたと思っているのだろう。いわれの無い罪を被らせられるのも癪だったので、必死に

「違うって...朝起きたら君がここにいたの!」

と説明した。余りの必死さ故か、それとも彼女が知ってか知らないが、彼女がいきなり「ぷふぅ」と噴き出し、大笑いをする。

「誠哉くんもさ~、真に受けすぎだって!あはは!」

いきなり笑い出すものだから、状況がよく理解できない。
おろおろとしている僕を見て、少し笑った後、

「私、誠哉くんに抱きついたの知ってるからね。だってさ、いいじゃない?寂しかったんだもん...」

彼女の衝撃の告白に驚きを隠せない僕を見た彼女はまた大笑いをする。昨日の重苦しい雰囲気とは違う、普段の学校での会話のような、そんな会話だった。

「ところで、Twitter、どうだった?」

彼女が真面目そうに聞いてきたので、

「ああ、来てたよ。一グループ。」

そう教えた。

「一...グループ...?」

不思議そうな顔をして、彼女が聞き返す。

「あ、ごめん。説明不足だった。
正確に言うと、男女4人だ。今日は大雨だから、明日くらいに出発するって伝えてある。」

「私が寝てる間に...そんな進んでたんだ...」

彼女も驚きの表情を浮かべていた。そうだろう。藁にもすがる思いで試した方法で、まさか連絡が取れるとは思わなかったから。正直、こんな方法でできる確率は皆無に等しかった。さすが情報化社会と言ったところだろう。

「明日行動開始ならさ、今日は何してるの?近場で食料集め?」

「いや、今日はゆっくりしていよう。昨日のことでまだ疲れてる筈だからね。」

彼女の質問に、少し思案して答える。

「そうだね...じゃあ、この階なら自由に動いていいの?」

「ああ、でも、しっかり帰ってきてくれよ。僕が悲しむ。」

少し冗談混じりで質問に返答した僕は、今日を『最後の晩餐』のようなものだと思い、過ごそうと決めた。

 今は午前10時。今から約半日、何をしようか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...