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一章 出会いと約束
豪雨の夜に
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給湯室は、Theオフィスと言ったような、シンクにコンロにポットの至って普通のようなものだった。僕はポットの蓋を開け、中身の量を確認する。中には2人分+αくらいのカップ麺が出来そうなくらい入っていた。
「瑞稀、割り箸も持ってるよな?」
持っていると思うが、あえて僕は確認しておく。彼女はゴソゴソとカバンを漁り、割り箸を2本取りだして、
「もってる!」
と元気の良い返事が返ってきた。
「よし。では、今からカップ麺を作る!」
テンションがおかしいのは、かなりぶりの飯だからだ。
2人のカップにお湯を注ぎ、注ぎ終えるとカバンやらを持って、応接用テーブルのあった1階のエントランスに戻った。
そして、いい頃合を見計らって、カップ麺の蓋を開けて食べる。食べている時は、終始無言だった。
食べ終わっても、まだ時計は5時にも行っていなかった。
「とりあえず、先に寝る場所決めておこうか」
僕がそう言うと、瑞稀はきょろきょろと辺りを見渡して、
「ここがいいんじゃない?」
そう言って、大きめのソファが並べられているところを指さした。割と寝やすそうだった。
「まだ5時だが、明日のためにもう寝とくか?」
僕がそう問うと、
「いや、まだもうちょっと起きてる」
少し目を逸らしたまま、彼女はそう言った。それから、ソファに座る僕と、荷物を少し整理する瑞稀の間に、沈黙が走る。正直、この空気は嫌いなんだ。静かなのに、やけに重い、そんな空気が。
いったい、黙り込んでからどれくらい経っただろうか。荷物を片付け終えた彼女は、僕と正対するように座り、俯いている。僕は徐にスマホの電源を入れ、荒川さんからなにか来ていないかを確認する。見ると、個人チャットに
「わかりました。」
そう一言だけ返信が来ていた。時計を見るといつの間にか、5時を通り越して、6時になっていた。
僕がうとうとし始め、ソファに横たわろうとした時だった。目の前に座っていた瑞稀が唐突に立ち上がり、僕の横に座る。思いがけぬ事で、僕は目が覚めた。起き上がった僕の肩に彼女は頭を乗せて、とつとつと語り出した。
「私がいじめられてる時、君はずっと優しくしてくれた。いつも、いつも。君にいじめの飛び火が移ってもずっと。いつも優しくしてくれる君に、いつの間にか惹かれてたの。君のメンタルがギリギリになって、君が死のうと思うって言った時に思ったんだ。私って誠哉くんのことが好きなんじゃないかって。愛してる人を、失いたくないって。」
僕が呆気に取られていると、「はあ...」と軽くため息をついて、
「もし、無事に元の世界に戻れたら、ずっと一緒にいようね。」
そう、言った。これはれっきとした「愛の告白」である。もちろん、断る理由なんてないから
「よろしく。僕がしっかり君のことを元の世界に戻すからね」
そう言って、彼女を抱きしめた。彼女も、抱きついてきた。ここに、数奇な人生の一部を辿る異世界発祥カップルが誕生した。
「ところで、誠哉くん私のことどう思ってるの」
抱き合っている時、いきなり彼女がそう問うてきた。
「僕か~...実は、僕も君のこと、好きだったんだ。」
あははと、照れ隠しに笑う。抱きしめた彼女は、少し熱くなっていた。
「明日は、少し早く出るから、早く起きるぞ」
彼女は元の場所へ戻って、毛布を被っていた。いつの間にそんなもの手に入れたんだろうか。そんなことを疑問に思いつつ、もう寝そうな彼女に
「おやすみ。瑞稀」
そう一言かけて、僕は眠りに落ちた。
明日には、彼らの元へ行かねば。
「瑞稀、割り箸も持ってるよな?」
持っていると思うが、あえて僕は確認しておく。彼女はゴソゴソとカバンを漁り、割り箸を2本取りだして、
「もってる!」
と元気の良い返事が返ってきた。
「よし。では、今からカップ麺を作る!」
テンションがおかしいのは、かなりぶりの飯だからだ。
2人のカップにお湯を注ぎ、注ぎ終えるとカバンやらを持って、応接用テーブルのあった1階のエントランスに戻った。
そして、いい頃合を見計らって、カップ麺の蓋を開けて食べる。食べている時は、終始無言だった。
食べ終わっても、まだ時計は5時にも行っていなかった。
「とりあえず、先に寝る場所決めておこうか」
僕がそう言うと、瑞稀はきょろきょろと辺りを見渡して、
「ここがいいんじゃない?」
そう言って、大きめのソファが並べられているところを指さした。割と寝やすそうだった。
「まだ5時だが、明日のためにもう寝とくか?」
僕がそう問うと、
「いや、まだもうちょっと起きてる」
少し目を逸らしたまま、彼女はそう言った。それから、ソファに座る僕と、荷物を少し整理する瑞稀の間に、沈黙が走る。正直、この空気は嫌いなんだ。静かなのに、やけに重い、そんな空気が。
いったい、黙り込んでからどれくらい経っただろうか。荷物を片付け終えた彼女は、僕と正対するように座り、俯いている。僕は徐にスマホの電源を入れ、荒川さんからなにか来ていないかを確認する。見ると、個人チャットに
「わかりました。」
そう一言だけ返信が来ていた。時計を見るといつの間にか、5時を通り越して、6時になっていた。
僕がうとうとし始め、ソファに横たわろうとした時だった。目の前に座っていた瑞稀が唐突に立ち上がり、僕の横に座る。思いがけぬ事で、僕は目が覚めた。起き上がった僕の肩に彼女は頭を乗せて、とつとつと語り出した。
「私がいじめられてる時、君はずっと優しくしてくれた。いつも、いつも。君にいじめの飛び火が移ってもずっと。いつも優しくしてくれる君に、いつの間にか惹かれてたの。君のメンタルがギリギリになって、君が死のうと思うって言った時に思ったんだ。私って誠哉くんのことが好きなんじゃないかって。愛してる人を、失いたくないって。」
僕が呆気に取られていると、「はあ...」と軽くため息をついて、
「もし、無事に元の世界に戻れたら、ずっと一緒にいようね。」
そう、言った。これはれっきとした「愛の告白」である。もちろん、断る理由なんてないから
「よろしく。僕がしっかり君のことを元の世界に戻すからね」
そう言って、彼女を抱きしめた。彼女も、抱きついてきた。ここに、数奇な人生の一部を辿る異世界発祥カップルが誕生した。
「ところで、誠哉くん私のことどう思ってるの」
抱き合っている時、いきなり彼女がそう問うてきた。
「僕か~...実は、僕も君のこと、好きだったんだ。」
あははと、照れ隠しに笑う。抱きしめた彼女は、少し熱くなっていた。
「明日は、少し早く出るから、早く起きるぞ」
彼女は元の場所へ戻って、毛布を被っていた。いつの間にそんなもの手に入れたんだろうか。そんなことを疑問に思いつつ、もう寝そうな彼女に
「おやすみ。瑞稀」
そう一言かけて、僕は眠りに落ちた。
明日には、彼らの元へ行かねば。
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