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二章 To friends
新たな仲間
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ビルを出発した僕らは、看板だけを頼りに東京駅へと向かっていた。
平坦な道から起伏のある道まで、朝だと言うのに刺すような日差しの中、歩いていた。
道なりに歩いていると地下道の入口と、「池袋」と書かれた看板があった。
「池袋に着いたってことは...あと数十キロって言ったところかな...」
僕がそうつぶやくと、彼女は体をビクッと跳ねさせ、
「ちょっと...休憩させて...」
そういい、彼女は階段に崩れ落ちるように座った。
「もうちょっと...もうちょっと頑張ってくれ...」
僕がそう言うが、
「むり...もう今動けない...」
そう言ってガクッと首を落とした。
~A few moments later~
「ありがとう...落ち着いた...」
そう言って彼女は立ち上がり、歩き始めた僕に追いついた。
階段をおり、ホーム階に降りる。目の前には、足首くらいの高さ迄、水が溜まっていた。
「まじか...一回上あがるぞ」
僕はそう言って、瑞稀の腕を掴んで、上に昇った。
上に行くと、少し雨が降っていた。
「おいおい...嘘だろ...」
僕がそう言葉を零した時だった。突如、地面が大きく揺れ、視界がブレる。咄嗟に僕は瑞稀を庇って、蹲った。
揺れが収まり、周りを見ると、所々ガラス片が飛び散っていた。
「もう大丈夫。」
そう言って僕は彼女を解放すると、周りを見渡す。まだ軽いほうの地震のようで、ガラスが割れたりする以外特に被害は見当たらなかった。
「大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫。」
僕が彼女に聞くと、か弱い声でそう返してきた。
僕はスマホの電源を入れて、時間と、四ツ谷までの距離を調べる。
「瑞稀。ここから東京駅まで9キロあるが、行けそうか?」
彼女は軽く首肯した。時計は10時を過ぎていた。
小雨が降る中、僕らは少しずつ、だが確実に進んでいた。が、昨日同様、小雨が降ったと思えば急に豪雨に変わる。
「だめだ...合羽着た方がいいな...」
僕は「瑞稀!」と、瑞稀を屋根の下に連れていき、僕のカバンから合羽を取りだし、渡す。
「傘、邪魔になるから、これ着て行動しよう」
軽く首肯して、彼女は傘をたたみ、合羽を着た。それに続いて、僕も合羽を着た。1度、時計を確認してみると、2時半をすぎ、11時に近づこうとしていた。かれこれ、休憩もなしに1時間ほど歩いていたのだと思うと、一気に疲れがおしよせてきたが、今日中にはあちらに着きたいという思いが、僕の背中を押してくれた。
叩きつけるような雨はいつしか横なぶりの、目の前が見えないほどの豪雨になっていた。歩いても歩いても、ほぼ前に進まない。一歩一歩、風に押し戻されるような感覚を覚えながら、ゆっくり進んでいった。
あれれからかなり歩いた。がい、一向に進んでいる気がしない。
「一回屋根のある所に行こう!」
僕がそういう。この大雨じゃ声も届かないからか、彼女はこちらに駆け寄ってきて、僕の合羽を摑む。そしてそのまま、目についた建物に駆け込んでいった。
入った建物は居酒屋だった。雨宿りにはちょうどいいが、もし変なのがいたらと考えると、少し怖い。と、奥の厨房らしきところから、がたんと物音がした。
「瑞稀。君はここにいておいて。」
そう言って僕は厨房へと歩を進めた。
厨房のドアを恐る恐る開けると、そこには冷蔵庫から何かを取り出そうとしている男と、無表情で座る女をみつけた。
「誰...だ?」
思わず僕がそう声を上げると、その会社員風の男がこちらに駆け寄ってきて、
「君、生きてるのか?」
そういって、僕の手を取った。そして続けざまに
「僕は鰆だ。よろしく!」
そう名乗ってきた。さすがに名乗られてはこちらも言うのがスジだろうから、僕も
「誠哉です。」
そう返した。
「あ、外にもう一人いるので連れてきていいですか?」
そう言って、僕は厨房を出て、瑞稀を呼んだ。
少しして、瑞稀が厨房に来る。
「瑞稀です...よろしくお願いします...」
少し怪しんでいるような、そんな表情を彼らに向ける。訝しげな表情で彼らを見ているにも関わらず、鰆は
「よろしく。僕は「鰆」です」
そういい、彼女の手をぎゅっと握る。唐突すぎたからか、瑞稀は「ひっ...」と小さく悲鳴をあげ、僕の後ろへ隠れるように下がった。
「鰆さん...いきなりそれはちょっとどうかと...こんな状況ですし、ましてや彼女は女の子なんですから!」
僕がそう言うと、彼は「ご...ごめん...」と呟いて、項垂れた。
「あの、僕ら今東京駅まで向かってるんですけど、ここってどの辺か分かりますか?」
僕はしょぼくれた鰆さんは気にせず、そう聞いた。すると後ろの女性が、
「ここは御茶ノ水駅の近く。私達も東京駅へ向かってるの。」
そう言った。
御茶ノ水ということは、東京駅まではあと数キロ、今がお昼前くらいなら、早くて3時、遅くても6時には着くだろう。
「出発の前にまずは何か食べるか...」
僕がそう言うと、いつの間にやら元座っていたところに戻った鰆さんが冷蔵庫からサラダのようなものを出してきた。
「これ、冷蔵庫も動いてるから大丈夫だろう。」
「あ、ありがとうございます」
それを僕は受け取って、彼女を手招きし、それを食べた。意外と行ける味だった。
ーこの光景、相手にはどう見えてるんだろうな...
と、そんなことを考えていると、ごごご...という地鳴りとともに、地面がうねる。
僕は瑞稀を庇ったまま、厨房の外へ、出る。鰆さんたちもそれに追随して、厨房を出た。そして僕は
「鰆さん。もう、移動しましょう。いつまた地震が来るかわからない。」
そういって、瑞稀の手を取って、店から出た。
新たな仲間、と言えばいいのだろうか、彼らを迎え入れるのは、果たして良作なのだろうか。これが吉と出るか凶と出るかはわからない。
平坦な道から起伏のある道まで、朝だと言うのに刺すような日差しの中、歩いていた。
道なりに歩いていると地下道の入口と、「池袋」と書かれた看板があった。
「池袋に着いたってことは...あと数十キロって言ったところかな...」
僕がそうつぶやくと、彼女は体をビクッと跳ねさせ、
「ちょっと...休憩させて...」
そういい、彼女は階段に崩れ落ちるように座った。
「もうちょっと...もうちょっと頑張ってくれ...」
僕がそう言うが、
「むり...もう今動けない...」
そう言ってガクッと首を落とした。
~A few moments later~
「ありがとう...落ち着いた...」
そう言って彼女は立ち上がり、歩き始めた僕に追いついた。
階段をおり、ホーム階に降りる。目の前には、足首くらいの高さ迄、水が溜まっていた。
「まじか...一回上あがるぞ」
僕はそう言って、瑞稀の腕を掴んで、上に昇った。
上に行くと、少し雨が降っていた。
「おいおい...嘘だろ...」
僕がそう言葉を零した時だった。突如、地面が大きく揺れ、視界がブレる。咄嗟に僕は瑞稀を庇って、蹲った。
揺れが収まり、周りを見ると、所々ガラス片が飛び散っていた。
「もう大丈夫。」
そう言って僕は彼女を解放すると、周りを見渡す。まだ軽いほうの地震のようで、ガラスが割れたりする以外特に被害は見当たらなかった。
「大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫。」
僕が彼女に聞くと、か弱い声でそう返してきた。
僕はスマホの電源を入れて、時間と、四ツ谷までの距離を調べる。
「瑞稀。ここから東京駅まで9キロあるが、行けそうか?」
彼女は軽く首肯した。時計は10時を過ぎていた。
小雨が降る中、僕らは少しずつ、だが確実に進んでいた。が、昨日同様、小雨が降ったと思えば急に豪雨に変わる。
「だめだ...合羽着た方がいいな...」
僕は「瑞稀!」と、瑞稀を屋根の下に連れていき、僕のカバンから合羽を取りだし、渡す。
「傘、邪魔になるから、これ着て行動しよう」
軽く首肯して、彼女は傘をたたみ、合羽を着た。それに続いて、僕も合羽を着た。1度、時計を確認してみると、2時半をすぎ、11時に近づこうとしていた。かれこれ、休憩もなしに1時間ほど歩いていたのだと思うと、一気に疲れがおしよせてきたが、今日中にはあちらに着きたいという思いが、僕の背中を押してくれた。
叩きつけるような雨はいつしか横なぶりの、目の前が見えないほどの豪雨になっていた。歩いても歩いても、ほぼ前に進まない。一歩一歩、風に押し戻されるような感覚を覚えながら、ゆっくり進んでいった。
あれれからかなり歩いた。がい、一向に進んでいる気がしない。
「一回屋根のある所に行こう!」
僕がそういう。この大雨じゃ声も届かないからか、彼女はこちらに駆け寄ってきて、僕の合羽を摑む。そしてそのまま、目についた建物に駆け込んでいった。
入った建物は居酒屋だった。雨宿りにはちょうどいいが、もし変なのがいたらと考えると、少し怖い。と、奥の厨房らしきところから、がたんと物音がした。
「瑞稀。君はここにいておいて。」
そう言って僕は厨房へと歩を進めた。
厨房のドアを恐る恐る開けると、そこには冷蔵庫から何かを取り出そうとしている男と、無表情で座る女をみつけた。
「誰...だ?」
思わず僕がそう声を上げると、その会社員風の男がこちらに駆け寄ってきて、
「君、生きてるのか?」
そういって、僕の手を取った。そして続けざまに
「僕は鰆だ。よろしく!」
そう名乗ってきた。さすがに名乗られてはこちらも言うのがスジだろうから、僕も
「誠哉です。」
そう返した。
「あ、外にもう一人いるので連れてきていいですか?」
そう言って、僕は厨房を出て、瑞稀を呼んだ。
少しして、瑞稀が厨房に来る。
「瑞稀です...よろしくお願いします...」
少し怪しんでいるような、そんな表情を彼らに向ける。訝しげな表情で彼らを見ているにも関わらず、鰆は
「よろしく。僕は「鰆」です」
そういい、彼女の手をぎゅっと握る。唐突すぎたからか、瑞稀は「ひっ...」と小さく悲鳴をあげ、僕の後ろへ隠れるように下がった。
「鰆さん...いきなりそれはちょっとどうかと...こんな状況ですし、ましてや彼女は女の子なんですから!」
僕がそう言うと、彼は「ご...ごめん...」と呟いて、項垂れた。
「あの、僕ら今東京駅まで向かってるんですけど、ここってどの辺か分かりますか?」
僕はしょぼくれた鰆さんは気にせず、そう聞いた。すると後ろの女性が、
「ここは御茶ノ水駅の近く。私達も東京駅へ向かってるの。」
そう言った。
御茶ノ水ということは、東京駅まではあと数キロ、今がお昼前くらいなら、早くて3時、遅くても6時には着くだろう。
「出発の前にまずは何か食べるか...」
僕がそう言うと、いつの間にやら元座っていたところに戻った鰆さんが冷蔵庫からサラダのようなものを出してきた。
「これ、冷蔵庫も動いてるから大丈夫だろう。」
「あ、ありがとうございます」
それを僕は受け取って、彼女を手招きし、それを食べた。意外と行ける味だった。
ーこの光景、相手にはどう見えてるんだろうな...
と、そんなことを考えていると、ごごご...という地鳴りとともに、地面がうねる。
僕は瑞稀を庇ったまま、厨房の外へ、出る。鰆さんたちもそれに追随して、厨房を出た。そして僕は
「鰆さん。もう、移動しましょう。いつまた地震が来るかわからない。」
そういって、瑞稀の手を取って、店から出た。
新たな仲間、と言えばいいのだろうか、彼らを迎え入れるのは、果たして良作なのだろうか。これが吉と出るか凶と出るかはわからない。
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