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薬を飲もうと思っていたのに、ただ水を飲むだけになってしまった。
何か食べないと。ガサゴソと戸棚を漁る。確か奥の方に飴とキャラメルを隠していたはず。
コツンと指先に小さいものが当たる。あった。
キャラメルを取り出し、そのまま口に入れた。
ん~、甘くてうまい。
キャラメルを味わっていると、視線を感じた。寝ていた男がこちらをじっと見つめている。
なんとなく気まずくなり、視線を逸らして薬を飲んだ。
「・・・なんで僕の部屋で寝ていたんですか?」
相手はんー?と首を傾げた。
「綺麗な子が無防備にドアを開けて寝ていたから、起きるまでいようかと思ったんだ。怖がらせていたらごめんね。」
申し訳なさそうに弱弱しく笑う彼を見て、善意でやったことなのだと気づいた。
僕が綺麗かどうかは別として、過去にも寮内で過ちを起こす者はいた。
被害を受けないように寝るときはドアを閉めて鍵をかけることが基本だった。
「あ、そうだったんですね・・・。すみません、体調がよくなくてドアを閉める前に眠ってしまって。えっと、先輩・・・?ですよね?ありがとうございます。」
「自己紹介がまだだったね。俺は四年のリオ。よろしく。」
「僕は三年のレイです。よろしくお願いします。」
今更自己紹介をしあうなんて、なんだかおかしく思えてふふっと笑ってしまった。
リオはあっと声をあげた。
「レイ、レイくんか!なるほど・・・。」
なるほど?どういう意味だろう。不思議に思ってリオを見る。
リオは何でもないという風に手を横に振ってみせた。逆に気になる。
「なるほどって何ですか?」
「ん?いや、何でもない。それより、体調が悪いと言っていたが大丈夫なのか?」
気になるが、同じことを聞き続けるのも面倒だと思われてしまうだろう。はぐらかされたままにすることにしよう。別に大したことじゃないだろうし。
「さっき薬を飲んだので、寝たら治ると思います。疲れたのか熱が出ちゃって。」
ははっと笑う。リオは考えるように眉を寄せた。
「あと一時間ほどで夕飯の時刻だと思うんだが、あとでおかゆでも持ってこようか?」
「えっ!いや、あの、嬉しいんですけど、さすがに知り合ったばかりの先輩にそんなこと頼めませんよ・・・」
「でも熱があるんだろう?」
リオは僕の方に手を伸ばしてきた。
急なことでつい体がビクっと反応したが、ただ額に手をあてられただけだった。
リオの手は冷たくて気持ちいい。すりすりとリオの手に自ら額をあてるように動いてしまった。
ハッとしてすりすりするのをやめたが、恥ずかしくてリオの顔を見れない。
「ご、ごめんなさい。冷たくて気持ちよくて・・・」
ふっと笑ったような息が漏れたのが聞こえた。
「いや、むしろ嬉しかったから。それより熱がまだあるみたいだし、夜におかゆ持ってくるよ。心配だし。」
そう言うと額から手をどけた。気持ちよさが名残惜しくてリオの手を目で追ってしまう。
「じゃあ、そろそろ行くよ。次はちゃんとドアは閉めてね。鍵をかけてもらいたいけど、おかゆ持ってきたとき入れなかったら困るからな・・・」
悩ましそうなリオに、僕はじゃあと提案する。
「僕の部屋の鍵、持って行ってください。おかゆ持ってきてもらえるだけで本当にありがたいので。」
リオは目を大きく見開いた後、心配そうに僕を見た。
何か言いたいことがありそうな顔をしていたが、実際には何も言ってこなかった。
「そう、ありがとう・・・。レイくんが横になったのを確認してから俺が外から鍵をかけることにするよ。」
僕をベッドに誘導し、横になったのを確認すると手を額にそっとあててくれた。気持ちいい。
「ああ、そうだ。レイくんタオルってどこにある?」
「あそこです。」
タオルのある場所を指さす。リオはタオルを手に取ると水に濡らして絞り、レイの額に置いた。
こんなことまでしてくれると思っていなかったので、僕はびっくりしてただただリオを見つめてしまった。
するとものすごく柔らかい笑顔で返された。少し顔が赤くなるのがわかる。
「あ、ありがとうございます・・・。」
「いえいえ。じゃあまた。」
そう言って部屋から出て行った。
ガチャン。
鍵を閉めた音がする。ほっと肩の力を抜いた。
それにしても、イケメンだったなぁ・・・。
何か食べないと。ガサゴソと戸棚を漁る。確か奥の方に飴とキャラメルを隠していたはず。
コツンと指先に小さいものが当たる。あった。
キャラメルを取り出し、そのまま口に入れた。
ん~、甘くてうまい。
キャラメルを味わっていると、視線を感じた。寝ていた男がこちらをじっと見つめている。
なんとなく気まずくなり、視線を逸らして薬を飲んだ。
「・・・なんで僕の部屋で寝ていたんですか?」
相手はんー?と首を傾げた。
「綺麗な子が無防備にドアを開けて寝ていたから、起きるまでいようかと思ったんだ。怖がらせていたらごめんね。」
申し訳なさそうに弱弱しく笑う彼を見て、善意でやったことなのだと気づいた。
僕が綺麗かどうかは別として、過去にも寮内で過ちを起こす者はいた。
被害を受けないように寝るときはドアを閉めて鍵をかけることが基本だった。
「あ、そうだったんですね・・・。すみません、体調がよくなくてドアを閉める前に眠ってしまって。えっと、先輩・・・?ですよね?ありがとうございます。」
「自己紹介がまだだったね。俺は四年のリオ。よろしく。」
「僕は三年のレイです。よろしくお願いします。」
今更自己紹介をしあうなんて、なんだかおかしく思えてふふっと笑ってしまった。
リオはあっと声をあげた。
「レイ、レイくんか!なるほど・・・。」
なるほど?どういう意味だろう。不思議に思ってリオを見る。
リオは何でもないという風に手を横に振ってみせた。逆に気になる。
「なるほどって何ですか?」
「ん?いや、何でもない。それより、体調が悪いと言っていたが大丈夫なのか?」
気になるが、同じことを聞き続けるのも面倒だと思われてしまうだろう。はぐらかされたままにすることにしよう。別に大したことじゃないだろうし。
「さっき薬を飲んだので、寝たら治ると思います。疲れたのか熱が出ちゃって。」
ははっと笑う。リオは考えるように眉を寄せた。
「あと一時間ほどで夕飯の時刻だと思うんだが、あとでおかゆでも持ってこようか?」
「えっ!いや、あの、嬉しいんですけど、さすがに知り合ったばかりの先輩にそんなこと頼めませんよ・・・」
「でも熱があるんだろう?」
リオは僕の方に手を伸ばしてきた。
急なことでつい体がビクっと反応したが、ただ額に手をあてられただけだった。
リオの手は冷たくて気持ちいい。すりすりとリオの手に自ら額をあてるように動いてしまった。
ハッとしてすりすりするのをやめたが、恥ずかしくてリオの顔を見れない。
「ご、ごめんなさい。冷たくて気持ちよくて・・・」
ふっと笑ったような息が漏れたのが聞こえた。
「いや、むしろ嬉しかったから。それより熱がまだあるみたいだし、夜におかゆ持ってくるよ。心配だし。」
そう言うと額から手をどけた。気持ちよさが名残惜しくてリオの手を目で追ってしまう。
「じゃあ、そろそろ行くよ。次はちゃんとドアは閉めてね。鍵をかけてもらいたいけど、おかゆ持ってきたとき入れなかったら困るからな・・・」
悩ましそうなリオに、僕はじゃあと提案する。
「僕の部屋の鍵、持って行ってください。おかゆ持ってきてもらえるだけで本当にありがたいので。」
リオは目を大きく見開いた後、心配そうに僕を見た。
何か言いたいことがありそうな顔をしていたが、実際には何も言ってこなかった。
「そう、ありがとう・・・。レイくんが横になったのを確認してから俺が外から鍵をかけることにするよ。」
僕をベッドに誘導し、横になったのを確認すると手を額にそっとあててくれた。気持ちいい。
「ああ、そうだ。レイくんタオルってどこにある?」
「あそこです。」
タオルのある場所を指さす。リオはタオルを手に取ると水に濡らして絞り、レイの額に置いた。
こんなことまでしてくれると思っていなかったので、僕はびっくりしてただただリオを見つめてしまった。
するとものすごく柔らかい笑顔で返された。少し顔が赤くなるのがわかる。
「あ、ありがとうございます・・・。」
「いえいえ。じゃあまた。」
そう言って部屋から出て行った。
ガチャン。
鍵を閉めた音がする。ほっと肩の力を抜いた。
それにしても、イケメンだったなぁ・・・。
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