【完結】数学教員の 高尾 さん

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数学教員 高尾 元 という男

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静まり返った職員室で俺は一人、マグカップに並々注いでいた日本茶(冷めて冷たい)を飲みながらパソコンと向かい合っている。
校訓が書かれた額縁の隣で、カチコチ規則正しく動く掛け時計の秒針の音と、誰かが消し忘れたパソコンのウィーン、という小さな稼働音、そして俺がカタカタ打っているキーボードの音。無機質なだけが響いていた。

同じ学校で働いている数学教員が突然病休に入った。心の病、というやつらしい。確かに最近よく早退していたし、目も虚だし、課題プリントも俺が用意したものを使い回しているようだった。
放課後校長室に呼ばれ、彼の病休のことを知らされた時「なるほどな」と俺は納得したのである。

そして明日からその病休の彼の分の授業が半分俺に回ってくることになった。ただでさえ、キツキツだったのに、もうカチカチのコマ割りである。一時間も休みがない。今はその準備の真っ最中なのだ。

もともと高校教員なんてものは、朝早くから課外授業をこなし、通常授業、そしてその準備に追われ、自分の昼飯を抜いて生徒を呼び出し、指導する。放課後になると部活動の指導で立ちっぱなし、気付けば朝7時15分から19時42分まで日本茶以外口にしていなかった、なんてザラである。・・・俺だけか?

公務員なんてお気楽でいいわね、と言われる時代はとうの昔で、今やバリバリのブラック職場である。もうイカ墨ぐらい真っ黒だ。

まあ、そんな文句なんて言ったところで何も変わらない。だって良くも悪くも公務員だし。
生徒はクソ生意気だが可愛いし、授業もやりがいがあって好きだ。そのやりがいと忙しさを天秤にかけ、毎日ぎりぎりの状態でやっている。もう、かれこれ12年も、だ。

俺、高尾 元たかお はじめは今年34歳になる高校教員で、担当は数学だ。同じ学校に5人数学教員が・・・いや、今日4人になったが、みんな男で割と仲がいい。俺が教員を今も続けていられる理由の一つでもある。
円満な人間関係は重要だと思う。

カタカタとキーボードを打つ指を止めないまま、今、夜の21時20分だ。定時は17時だが、その時間に帰ったことはほとんどない。どこの教員もそんなもんだろう。・・・ん?俺だけか?


兎にも角にも、俺には遊ぶ時間がない。と言うことは出会いもない。・・・これは言い訳だが、恋人はいない。もう12年も。
最後の大学生の年に付き合った彼女は、ショートカットのスラリとした人だった。なかなか美人だったと思う。182cmの大柄な俺の横に並んでも割と釣り合いの取れる173cmという長身で、その人に俺の童貞を捧げるつもりだった・・・のだが、それが叶うことはなかった。



なぜならその長身美人の彼女が、超ドSの淫乱ビッチだったからである。
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