【完結】数学教員の 高尾 さん

N2O

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6 夢と塾

夢を見た。
これは俺が塾でアルバイトをしていた頃の記憶だ。
ふわふわした髪の・・・そう、花村先生とよく似た高校生が通っていた。
メガネをかけていていつも俯いている。
俺が担当しているクラスとは別のクラス、特進のクラスだったから直接関わることはなかったけど、本当にいつも俯いていたから何か気になっていた。


その日も彼は俯いていていつもに増して元気が無さそうだった。
俺はおもむろにポケットをゴソゴソ漁り、後で食べようと思っていた一粒のアーモンドチョコを取り出す。
そしてそっと彼の机に置いた。
「甘いもの食べると元気になるよ」と言葉を添えて。
ピクリと彼は反応していたが、顔を上げることはなかった。


そしてその数日後、俺の靴箱に「ご馳走様でした」と丁寧な字で書かれたカードと共にいちご味のチョコが置かれていた。
自然と口角が上がり、心が温かくなったことを覚えている。
しかし、彼と関わったのはそれっきりだった。

俺がその後すぐバイトを辞めたからだ。

櫻子さんとのあの一件もあったし、残り少なくなった大学生活を謳歌しようと3年勤めた塾を辞めた。


そういえば、あの彼は元気にやっているだろうか。
レベルの高いあの塾の特進クラスだから頭はかなり良いし、良い大学にでも入って高給取りにでもなっているだろう。
綺麗なふわふわ髪をしていたのだから、俯かず、真っ直ぐ前を見て元気に生活してくれてると良いな。



そんな夢を見ていた。






「────い、高尾せんせ。おーい、起きて下さーい。」

「・・・んん。あ、れ?花村せんせ、い。俺、もしかして寝て・・・」

「そりゃあもうすやすやと。仮にも男の部屋に来てるんですから。少しは緊張感持って欲しいですね。」

「・・・・・・へ?な、何言って・・・は?」



目が覚めた俺の上にはニコニコ笑っている花村先生が跨っていた。
そして俺の両腕、両足は固定されている。
見たことのある枷だ。
でもあの時の手枷と足枷とは違い、痛くないように内側に可愛いピンクのファーがついている。
そのファーに似合わず、ベッドに繋がっている鎖はかなり太い。
一筋縄では切れそうにないなと分かるくらいのものだった。
足は俺からは見えないが、おそらく感触からして同じファーが付いたものだろう。
ふわふわしているが、がっしり固定されている。

俺はあの櫻子さんとの一件を思い出し、血の気が引いていく。

忘れていた。
美しいものには棘があることを。


花村先生も、そういう趣味ってことなのか?
俺の頭の中は理解できないこの状況とあの時の恐怖と羞恥心で支配され、身体はすでに小刻みに震え出している。



「な、んで?花村先生、これ、取って、くれ。お願いだ。」

「んー?だめです。俺、花村先生のこと好きなんです。愛してます。ずっと昔から。」

「ず、っと・・・むかし・・・?」

「どうして震えてるんですか?もしかして、こういうこと他の人からされたことあるの?許せないなぁ・・・」



怒りに満ちた色素の薄い目で、俺のことをじっと見ている。
お互いの鼻先があとちょっとでくっついてしまうくらいの距離だ。
俺は緊張でうまく息ができなくなってきた。
だが、花村先生は俺から目を逸らさない。
俺は観念して、少し震える声で返事をした。



「は、花村先生が思ってるような、内容じゃ、ない。」

「ふーん。でもあるんだ?詳しく話してごらんよ。良い子だから、ね?」



よしよし、と俺の頭を撫でながら有無を言わさない瞳で見つめてくる。

俺は重い重い記憶の蓋を開け、あの櫻子さんとの一件を包み隠さず説明した。

----------------⭐︎

説明している間もピンクファーの枷は外してもらえなかった。ベッドに182cmの男が大の字に鎖で繋がれて寝ているという異様な光景。
俺の辿々しい話を花村先生は俺の頭を撫でながら聞いていた。

全て話終わると花村先生は何も言わずにしばらく黙り込んだ。
その美しい目は、完全に据わっていた。



「・・・くそ、思い出してもどの女か分からん!ほとんど枯れたようなジジイしかいなかったから・・・油断した!」

「・・・ん?あの塾のこと・・・知ってるのか?」

「・・・ああ、そうだったね。いちごチョコの冴えない高校生、って言えば分かる?」

「・・・わ、かる、けど・・・?」

「あれ、俺。」

「・・・・・・・・・はぁぁぁぁあ?!」



つい先ほど夢で思い出していた彼が目の前にいて、俺に跨っていて、手枷をつけている?

混乱する俺を見てくすくす笑いながら「ちょっと待っててね」と寝室から出て行き、アクリルで出来た小さな箱を持って戻ってきた。
その箱の中にはあのアーモンドチョコの包み紙が保管されている。
何年か前にリニューアルされて、あの柄のデザインではなくなったから分かる。
箱に入った包み紙は、俺があげたアーモンドチョコだ。

驚きで口が開いた俺を見下ろしながら花村先生は頭ではなく、俺の胸辺りを撫で始める。



「俺ね、あの頃からずっと高尾先生が好きだったんだ。」

「へ?えっ?」

「だから大学も自由に教育実習先選べる大学にしたし、」

「・・・は?!」

「高尾先生の異動先も逐一調べ上げて追いかけてたんだよ?講師の話だって、喜んで引き受けたし。同じところで働けるなんて・・・はあ、俺、超幸せ。」

「・・・なっ、な?!」



うっとりとした目で俺を見ながらまたも情報量を増やしていく花村先生。
胸を撫でる手はどんどんねっとりとしたものになっていく。
くすぐったさで、落ち着かない。

すると突然花村先生が俺の大きめの両乳首をギュッと摘んだ。思ってもみなかった刺激に俺の身体は大袈裟なくらい跳ねた。



「高尾先生って痛みに敏感だよねぇ?こないだもプリントで少し切っただけで涙目だったし。」

「?!!は、早くこれ外してくれ!ち、乳首も摘むのやめてくれ!」

「外すわけないじゃん。俺、痛いことするつもりじゃないし。痛みに敏感な人ってさ・・・感度がいいってことなんだよ?」



そう言うとその美しい顔を俺の耳元に近づけ「そんなの最高だと思わない?」と囁いた。


「俺がどろどろになるまで、気持ちよくするからね。」


花村先生の顔が俺に近づいてくる様が、まるでスローモーションのように見えた。
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