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一触即発
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俯きながら帰った自宅。
見覚えのある黒い耳の生えた獣人が玄関の前をうろうろと彷徨っていた。
ナディルはすぐにサーシャの恋人ヤハドだと気付いたが、何も知らないザックは抱えていた荷物を丁寧に足元に置き、ナディルの前を塞ぐようにして立った。
ナディルに気付いたヤハドが、物凄いスピードで近づいてくる。
「君、サーシャの弟だろう?!サーシャはどうしたんだ?病気か?ノックしても返事がないんだ!」
「あ、えっと、その、サーシャは」
「失礼ですが、あなたはどなたでしょうか。サーシャ様とはどのようなご関係で?」
「・・・・・・お前誰だ。もしかしてサーシャのこと狙ってんのか?許さねーぞ。」
「ヤ、ヤハドさん、この人は、」
「ナディル様はお下がりください。少々気が立っていらっしゃるようですので危険です。」
「あ゛?俺はサーシャの弟に用があんだよ。どけ。」
「・・・・・・・・・!!」
あれよあれよとややこしくなってしまった。
お互い勘違いしている。
この険悪な雰囲気にナディルは体が硬直してしまい、うまく間に入れない。
それどころか、緊張で呼吸が浅くなっていく。
ナディルがギュッと自分の手を握りしめ、打開策を考えていた時、背後から聞き慣れた声と共にとんでもない威圧感が放たれてきた。
「俺の番に何してるんだ。」
美しいミントグリーンの瞳に怒りの炎が見えた。
人間のナディルにもわかるぐらい目の前のヤハドを威圧していて、肌に伝わってくるようなランドルフの怒りに、ヤハドではなくナディルがその場に腰を抜かした。
突然座り込むナディルを見て血相を変えたランドルフが駆け寄り、ぎゅ、っと力強く抱え込む。
「ナディルっ、どうした?!何かされたのか?!」
「ラ、ンドルフさん・・・あ、あの人、サーシャの恋びと、です・・・!威圧しな、いで・・・・・・!」
「・・・サーシャ様の恋人?!し、失礼しました!私、護衛のザックと申し・・・・・・あ?お前、よく見たら騎士団の者だな?」
「はっ!?ザック様!?ここここれは、大変失礼しました!・・・・・・ん?ということは・・・そちらの方は・・・次期領主のランドルフ様ですか?!」
「・・・・・・え?」
どうやら誤解は解けた。
よかった・・・よかった、本当に。
と、息つく暇もなく、ナディルの耳にはとんでもない新情報が入り込んできた。
「次期領主って・・・・・・誰がです、か?ランドルフさん、が?え?」
あまりの混乱と初めて浴びたランドルフのとんでもない威圧に、やっとの思いで呟いたのを最後に、ナディルはパタリ、と意識を失ったのである。
意識を失ったナディルを抱え、ランドルフは今まで誰にも見せたことがないぐらい、取り乱したのは言うまでもない。
----------------
ナディルが目を覚ますと自宅のベッドだった。
目の前には今にも死にそうな顔で覗き込むランドルフと、呆れ顔の医者のニースがいた。
目を覚ましたナディルを見て、嬉しさのあまり抱きしめようと腕を広げるランドルフ。
寸前のところで後ろに控えていたハニルに羽交い締めにされ止められていた。
「ランドルフ、様!いけません!ナディル様の骨が折れますよ!」
「ハニル離せ!愛しい番が目を覚ましたんだぞ!?これが抱きしめずにいられるか!」
「ほっほっほ・・・、御言葉ですが、その衝撃でナディル様がまた気を失われてもよろしいので?」
ニースのこの言葉にビタッと止まるランドルフ。
ナディルはその光景をぐるぐる目を回しながら見ていたが、ハニルが淹れてくれた茶を飲んで少し落ち着いた。
ランドルフはしおしおと頭を下げ、説明不十分だった自分のことについて話し出す。
「隠していたつもりは・・・ないのだが・・・、そんなに大したことでもないだろう?わざわざ言う必要もないかと・・・」
「た、大したことです!も、もう!びっくりしました・・・!」
ナディルは本当にびっくりしたのだ。
領主の件も、ついさっきのランドルフの勢いについても。
そして涎まで垂らし爆睡していたサーシャもようやく目を覚まし起きてきて、事の顛末を聞かされた。
自分の眠りの深さと、恋人ヤハドの立ち回りに思わずため息が漏れた。
「ヤハドはナディルに謝って。怖がらせてどうすんの?私の可愛い弟よ。」
「ご、ごめんな、ナディルくん。サーシャもごめん・・・・・・俺、サーシャが心配だったんだよ・・・」
「・・・もうっ、仕方ないわね。ナディル、ランドルフ連れて部屋出てって。私はヤハドと仲直りするから!ね、ヤハド?」
「な、仲直り!し、します!」
「・・・・・・」
皆まで言わずともサーシャとヤハドのラブラブモードに気づいたナディル達はそそくさと部屋を出て、自宅横の工房に避難した。
そして護衛と医者は空気を読んで退室。
工房にはナディルとランドルフだけになった。
ナディルは以前、ランドルフに飲ませた事のある茶を出した。
そして、自分のことをぽつりぽつりと話し始める。
今まで貰った手紙の分を、ランドルフにはきちんと返すべきだと思ったからだ。
今までの暮らしのこと。
好きなもの、嫌いなもの。
そして、ランドルフがいつも手紙に描いていた大木のこと。
ランドルフは、一生懸命話し続けるナディルの手にそっと自分の手を重ねた。
ナディルはその手を振り払おうとはしなかった。
ランドルフはそのままナディルの手をさすり、ずっと優しい目つきでナディルの小さな声に耳を傾けた。
見覚えのある黒い耳の生えた獣人が玄関の前をうろうろと彷徨っていた。
ナディルはすぐにサーシャの恋人ヤハドだと気付いたが、何も知らないザックは抱えていた荷物を丁寧に足元に置き、ナディルの前を塞ぐようにして立った。
ナディルに気付いたヤハドが、物凄いスピードで近づいてくる。
「君、サーシャの弟だろう?!サーシャはどうしたんだ?病気か?ノックしても返事がないんだ!」
「あ、えっと、その、サーシャは」
「失礼ですが、あなたはどなたでしょうか。サーシャ様とはどのようなご関係で?」
「・・・・・・お前誰だ。もしかしてサーシャのこと狙ってんのか?許さねーぞ。」
「ヤ、ヤハドさん、この人は、」
「ナディル様はお下がりください。少々気が立っていらっしゃるようですので危険です。」
「あ゛?俺はサーシャの弟に用があんだよ。どけ。」
「・・・・・・・・・!!」
あれよあれよとややこしくなってしまった。
お互い勘違いしている。
この険悪な雰囲気にナディルは体が硬直してしまい、うまく間に入れない。
それどころか、緊張で呼吸が浅くなっていく。
ナディルがギュッと自分の手を握りしめ、打開策を考えていた時、背後から聞き慣れた声と共にとんでもない威圧感が放たれてきた。
「俺の番に何してるんだ。」
美しいミントグリーンの瞳に怒りの炎が見えた。
人間のナディルにもわかるぐらい目の前のヤハドを威圧していて、肌に伝わってくるようなランドルフの怒りに、ヤハドではなくナディルがその場に腰を抜かした。
突然座り込むナディルを見て血相を変えたランドルフが駆け寄り、ぎゅ、っと力強く抱え込む。
「ナディルっ、どうした?!何かされたのか?!」
「ラ、ンドルフさん・・・あ、あの人、サーシャの恋びと、です・・・!威圧しな、いで・・・・・・!」
「・・・サーシャ様の恋人?!し、失礼しました!私、護衛のザックと申し・・・・・・あ?お前、よく見たら騎士団の者だな?」
「はっ!?ザック様!?ここここれは、大変失礼しました!・・・・・・ん?ということは・・・そちらの方は・・・次期領主のランドルフ様ですか?!」
「・・・・・・え?」
どうやら誤解は解けた。
よかった・・・よかった、本当に。
と、息つく暇もなく、ナディルの耳にはとんでもない新情報が入り込んできた。
「次期領主って・・・・・・誰がです、か?ランドルフさん、が?え?」
あまりの混乱と初めて浴びたランドルフのとんでもない威圧に、やっとの思いで呟いたのを最後に、ナディルはパタリ、と意識を失ったのである。
意識を失ったナディルを抱え、ランドルフは今まで誰にも見せたことがないぐらい、取り乱したのは言うまでもない。
----------------
ナディルが目を覚ますと自宅のベッドだった。
目の前には今にも死にそうな顔で覗き込むランドルフと、呆れ顔の医者のニースがいた。
目を覚ましたナディルを見て、嬉しさのあまり抱きしめようと腕を広げるランドルフ。
寸前のところで後ろに控えていたハニルに羽交い締めにされ止められていた。
「ランドルフ、様!いけません!ナディル様の骨が折れますよ!」
「ハニル離せ!愛しい番が目を覚ましたんだぞ!?これが抱きしめずにいられるか!」
「ほっほっほ・・・、御言葉ですが、その衝撃でナディル様がまた気を失われてもよろしいので?」
ニースのこの言葉にビタッと止まるランドルフ。
ナディルはその光景をぐるぐる目を回しながら見ていたが、ハニルが淹れてくれた茶を飲んで少し落ち着いた。
ランドルフはしおしおと頭を下げ、説明不十分だった自分のことについて話し出す。
「隠していたつもりは・・・ないのだが・・・、そんなに大したことでもないだろう?わざわざ言う必要もないかと・・・」
「た、大したことです!も、もう!びっくりしました・・・!」
ナディルは本当にびっくりしたのだ。
領主の件も、ついさっきのランドルフの勢いについても。
そして涎まで垂らし爆睡していたサーシャもようやく目を覚まし起きてきて、事の顛末を聞かされた。
自分の眠りの深さと、恋人ヤハドの立ち回りに思わずため息が漏れた。
「ヤハドはナディルに謝って。怖がらせてどうすんの?私の可愛い弟よ。」
「ご、ごめんな、ナディルくん。サーシャもごめん・・・・・・俺、サーシャが心配だったんだよ・・・」
「・・・もうっ、仕方ないわね。ナディル、ランドルフ連れて部屋出てって。私はヤハドと仲直りするから!ね、ヤハド?」
「な、仲直り!し、します!」
「・・・・・・」
皆まで言わずともサーシャとヤハドのラブラブモードに気づいたナディル達はそそくさと部屋を出て、自宅横の工房に避難した。
そして護衛と医者は空気を読んで退室。
工房にはナディルとランドルフだけになった。
ナディルは以前、ランドルフに飲ませた事のある茶を出した。
そして、自分のことをぽつりぽつりと話し始める。
今まで貰った手紙の分を、ランドルフにはきちんと返すべきだと思ったからだ。
今までの暮らしのこと。
好きなもの、嫌いなもの。
そして、ランドルフがいつも手紙に描いていた大木のこと。
ランドルフは、一生懸命話し続けるナディルの手にそっと自分の手を重ねた。
ナディルはその手を振り払おうとはしなかった。
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