15 / 15
番外編
Special thanks
しおりを挟む「綺麗だねえ~・・・!」
「どれがいい?」
「・・・・・・え?!」
「他の物も持ってこよう。」
「い、い、いらない!どれも素敵だけど!お、俺はいらないからね!」
手に取った光り輝く宝石を慌ててランドルフに返す。
どうしてだ?と、不思議そうな顔でナディルに近づくランドルフの顔面の圧に、ナディルはまた顔を赤くした。
番になって、早五年。
ナディルはランドルフに、ランドルフはナディルに毎日恋をしている。
「もうすぐナディルの誕生日だ。」
「・・・そうだった、ね。忘れてた。で、でも!こんなに高そうな宝石は絶対買わないで!も、も、もったいない!」
「・・・ならばどんなものがいい?ナディルは何も欲しがらないだろう。」
「・・・・・・そ、そんな急に言われても・・・」
ナディルは物欲がない・・・に等しい人間。
去年は絞りに絞り出して、靴。
一昨年は少し豪華な果物の盛り合わせ。
ランドルフの誕生日には毎年ナディルが自分で掘った金細工を贈っている。
目尻を下げ嬉しそうな顔で受け取るランドルフを見るだけで、ナディルは胸がぽかぽかして、お互い大満足だ。
「・・・あ、」
「何かあったか?」
「うん。」
嬉しそうに頷いて、ふふふ、と笑い始めたナディルの腕を軽く引き、自分の胸元に閉じ込めた。
番の香りはいつまで経ってもこんなに心躍るものなのだろうかと、ランドルフはナディルの首元に鼻を寄せ幸せを噛み締める。
「時間がいいな。」
「・・・時間?」
「そう。最近ずっと忙しいでしょう?だから二人の時間、欲しいなって。」
「・・・・・・」
「っ、わ、どうしたの?く、くる、苦しいよ・・・!!」
細い腰に腕を回し、ぎゅううっとナディルを抱きしめた。
ナディルは少し苦しさもあるが、ランドルフの想いを感じ取り、自分も腕を回す。
ナディルの手をランドルフの尻尾がいたずらに撫でると「くすぐったいよ」と笑った。
「何としてでも休みをとる。」
「・・・あんまりハニルさん達困らせちゃだめだよ?」
「遠出でもするか。」
「え!いいの?!なら工芸品の街に行きたい!」
職人魂に突然火がついた。
あれも見たい、これも見たいと、珍しく興奮気味に話し出すナディルを見て今度はランドルフが笑い出す。
少し恥ずかしそうな顔をして、トーンダウンするナディルの顎をくいっと上げ、唇に触れる。
すぐに真っ赤になるナディルは、身長が伸びても、少し筋肉がついても、何年経っても変わらない。
「ナディルとなら、どこへ行っても楽しいだろうな。」
「・・・俺の台詞なんだけど。」
頬を撫でるランドルフの手をとると、ナディルは手首にキスをした。
「愛してる。」
「それは俺の台詞なんだが?」
二人して、声を出して笑い合う。
扉の向こうには休憩時間をとっくに過ぎているのに戻ってこない主を探しにきたダレス。
二人の甘い空気を読んで少しだけ待つことにした。
----------------⭐︎
素敵な表紙絵に心から感謝・・・☺︎
2024.10.9
475
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす
水凪しおん
BL
体に災いを呼ぶ「禍の刻印」を持つがゆえに、生まれた村で虐げられてきた青年アキ。彼はある日、不作に苦しむ村人たちの手によって、伝説の獣人「銀狼王」への贄として森の奥深くに置き去りにされてしまう。
死を覚悟したアキの前に現れたのは、人の姿でありながら圧倒的な威圧感を放つ、銀髪の美しい獣人・カイだった。カイはアキの「禍の刻印」が、実は強大な魔力を秘めた希少な「聖なる刻印」であることを見抜く。そして、自らの魂を安定させるための運命の「番(つがい)」として、アキを己の城へと迎え入れた。
贄としてではなく、唯一無二の存在として注がれる初めての優しさ、温もり、そして底知れぬ独占欲。これまで汚れた存在として扱われてきたアキは、戸惑いながらもその絶対的な愛情に少しずつ心を開いていく。
「お前は、俺だけのものだ」
孤独だった青年が、絶対的支配者に見出され、その身も魂も愛し尽くされる。これは、絶望の淵から始まった、二人の永遠の愛の物語。
猫の王子は最強の竜帝陛下に食べられたくない
muku
BL
猫の国の第五王子ミカは、片目の色が違うことで兄達から迫害されていた。戦勝国である鼠の国に差し出され、囚われているところへ、ある日竜帝セライナがやって来る。
竜族は獣人の中でも最強の種族で、セライナに引き取られたミカは竜族の住む島で生活することに。
猫が大好きな竜族達にちやほやされるミカだったが、どうしても受け入れられないことがあった。
どうやら自分は竜帝セライナの「エサ」として連れてこられたらしく、どうしても食べられたくないミカは、それを回避しようと奮闘するのだが――。
勘違いから始まる、獣人BLファンタジー。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。

あらまぁ 様
うわー!本当ですね😱
ご指摘ありがとうございます!!
すぐ訂正します🙇♀️
ほんわりさん 様
ひゃ〜〜!光栄です!ありがとうございます😭
近々、小話を追加しようと思っているのでまた読んでいただけると嬉しいです🫶感想とても励みになります✨
かわいくて、やさしくて、心がほっこり暖かくなる、素敵なお話でした。
読後、とっても幸せな気分になりましたよ(#^.^#)
発酵アカエナ属 様
感想ありがとうございます!
受けを溺愛する権力者が書きたくて、出来たお話^_^
ほっこりしていただけて、とても嬉しいです〜♪