魔王のいない世界で勇者になるには

蛍雪月夜

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4-2 憧れ

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遡ること数刻前

メルキュールが居合わせたのは、本当にただの偶然だった。

いつも通りに在庫の確認をし、納品したものが、全て、間違いなく、納めるべきところに収まっているかの確認を終え、宴が行われている広場へ向かうところだった。

何やら忙しなくガチャガチャとドアを抉じ開けようとしている不届き者を見つけたから声をかけた。それだけのつもりだった。


更にその少し前、宴で男達と呑んでいたリンクスは、誰かに呼ばれたような気がした。

これだけ騒がしければ誰かが自分を呼ぶことくらいあるだろう。だが、今の声は、声の主を探さなくては。そう思わせる何かがあった。

その時ふと、ウッドがいないことが気にかかった。宴の最中だ。どこかに行っていても不思議じゃない。

気の合う誰かを見つけたのかもしれない。そう思うのに、何故か、やたらウッドの不在が気になった。


同じ頃、カパーは、1人湯浴みをしていた。宴の最中だ。これだけ盛り上がっていれば誰も浴場になど来はしまい。

いつもは、誰かに見られてしまわぬよう、出来るだけ短時間で水浴びをすませていた。そうでなければ身体を拭くだけにとどめていた。

だって、醜い化け物と同じ湯になど……浸かりたくはないでしょう?

「このしっぽ、千切ったらまた生えてきたりするんですかね?」

なんて言っていたら、誰かに呼ばれた。確かに呼ばれた。

普段自分の尻尾なんて気にならないのに、今日は何故か、面と向かって化け物なのか聞いてきた少年の、真っ直ぐな黄色い瞳が頭を過った。

こんな時くらいしか、湯浴みなんてできないというのに。そんな悲痛な声で呼ばないでくださいよ。

カパーはフッと笑うと湯からあがった。

仕方ないですね。

「こんな時くらい、のんびり独り占めさせてくれてたっていいじゃないですか。」

浴場から出るとリンクスが真っ青な顔をして立っていた。

「ウッドがいないんだ!こんなに騒がしくちゃ音も拾えない!あんたを探してた!」

「おや、奇遇ですね。たった今、誰かに呼ばれたような気がして、誰とはわかりませんが探しに行くところだったんですよ。記憶を覗いても?」

「頼む」

その瞬間耳を刺すような高音が幾重にも鳴り響いた。

誰かがカムペと戦ってる音だ。近い。2人はサイレンサーを装着し、走り出した。

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