漆黒帝と呼ばれた男 ~異世界から来たのでステータスやスキルはありませんけど、こちらには科学文明の力があるので最強です~

ねこのにくきう

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第一章 謎の組織、異世界へ行く

悪事13 黒竜王の悪夢、王都潜伏編

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 露店巡りを終えてウエストバーン家の別邸に戻ると、ニッグが『統領』に飛びついてきた。

「うわーん、どこまで行ってたんだよ! 帰ってくるのが遅いよぅ!」

 何百年も島に引きこもって寝ていたヤツに言われたくない言葉であるが、奥からニッグの様子を伺っているアリスから逃げてきたのであろうと推測される。

「すまんすまん、お土産買ってきたんだが、ニッグって好き嫌いあるのか?」

「僕は草食なので、果物とかならたまに食べます。肉は嫌いです!」

 見た目は凶悪ドラゴンなのに、草食でフルーツ好きとはこれ如何に。どこの乙女か。

「ニッグさん、留守番していた時にはオヤツなんて強請らなかったのに。やっぱり、ボス様のことは別格なのでしょうか?」

 メア付きメイドのアリスの悔しそうな呟きは誰にも聞こえることはなかった。



 一方、登城したウエストバーンには新たな問題が発生していた。

「それでウエストバーンよ、定期連絡では黒竜王との接触に成功して脅威はなくなったと言っておったが、真か? もう一度、皆に成果を報告してやってほしい」

「はい、国王陛下。先日、私は、我が領内で滞在中だった黒竜王ニグドヴァギラス様と、その主と名乗る人間との接触に成功しました。そして、黒竜王と主は視察で我が領を訪れたので無用な争いは望んでいないとのことでした。話し合った結果、自己防衛以外の戦闘行為は行わないと明言くださりました」

「それだ、私が未だに信じられないのはな。あれほどの存在を人間が使役できるものなのか? いや、お前を疑うわけではないのだが、あまりに荒唐無稽な話過ぎてな」

「お気持ちはわかります。私とて実際に目にしなければ信じることは到底できません。ですので、王都へお越し頂きました。私は、陛下御自身の目で、その人柄などを直接ご判断頂ければと思っております」

「それは……黒竜王がか? 王都は、民は大丈夫なのか? では、今どこにいるのだ? 衛兵からは竜が飛来したという報告は受けていないぞ?」

 古の伝承では、とある国を1日で滅ぼしたと記されている竜なのである。
 いくら大丈夫と言われても心配になるのが普通、さらにもう王都へ来ているという事実には戦慄が走った。

「こちらから仕掛けなければ、問題はありません。私は知り合ってから1か月程経ちますが、道中で遭遇した賊以外とは交戦しておりません。それに、黒竜王様は伝承とは若干異なるようで……これは陛下が直接判断してください。現在は王都にある私の別邸で待機してもらっています。外を出歩くと無用な混乱を招きますので」

「その件は、後で詳しく聞くとして、黒竜王の主というのはどのような人物なのですか? ニブルタール王国に危険が及ぶような人間の場合は対策を考えなければなりません」

 黒竜王のことは最早どうにも手に負えないので棚上げ、話題は『統領』へと移る。

「主の名前はボス殿と言います。見た目は少し奇抜なのですが……私が見る限り、とても理性的で思慮深く、礼儀や周囲への気配りもでき、そして、とても強い男です。もし、戦場で会ったとして、私が本気で戦っても勝てるイメージがわきませんな。そもそも、黒竜王様が近寄らせてくれるとも思いませんが」

 王国最強のウエストバーンが、勝ち目がないとまで言わしめるのか、国王陛下を始めとして会議の出席者たちは一様に息を呑んだ。若干、過大評価が過ぎる気がしないでもない……。

「それで、そのボスとやらの対応はどうするのだ?」

「王都を案内する娘の護衛を頼んでいましたが、現在はボス殿も私の別邸にいる頃だと思います。皆様にも彼の実力を見てほしかったので、今年の武術大会にエントリーしてもらいました。実際のところ、私にも彼の強さは測りきれないですし、実戦をしているのを見る良い機会かと思いまして」

「ふむ、妙案だな。どのような人物かもついでに判断するとしようか。皆もそれでよいな?」

 国王が周囲に聞くと、全員から頷きが返ってくる。

「それと……そのボス殿なのですが、私の娘のメアと婚約してもらいまして、事後になって申し訳ないのですが、国王陛下には裁可をお願いします」

 しーん。

「「「「はぁ!?」」」」

「待て待て待て、それは了解されたのか? では、ニブルタール王国の新興貴族になるということか? それともお前の後を継いで辺境伯になるということか? どうなのだ、ウエストバーン」

「いえ、私の娘を嫁にもらってもらうということだけですな。王国に所属するということではありません。どうも彼と話していると、仲間たちと一緒に黒竜王の島に住んでいるようなのです。もしかしたら私たちが知らないだけで、そこには国のようなものがあるのかもしれません」

 むむむと、どう判断していいか悩んでしまう一同。

「しかし、それは別の意味で困ったな……」

「どういうことですか? これは私の娘の問題なので、誰にも迷惑をかけることはないと思うのですが……今までそう言ったお話を娘に対して頂いた記憶もありませんし」

「いや、第二王子がな……実は前々から伴侶にと言ってきておった。歳が歳だけに今まで抑えていたのだがな、正式に裁可するとなると公表しないわけにもいかん。当然、王子の耳にもはいるだろうから、ひと悶着しそうなのが目に見えておる」

「あの脳筋王j……もとい第二王子殿下がですか? 王子は今30でしたよね? 私の娘は14なのですが……」

 歳の差が倍以上とか、どれだけロリコンなのか。
 明らかに頭が痛そうな国王と、面倒くさそうな話になったと思っているウエストバーン。

「それでは、こうしたら如何でしょうか?」

 悩む2人に対して、宰相風の男が提案するのは、

「その婚約者殿は、今年の武術大会に出場されるのでしょう? であれば、第二王子も出場させて当ててしまえばよろしい。その方に完膚なきまでに負けてしまえば、娘をよこせと恥さらしなことは言わないでしょう」

 意外にも物理的にねじ伏せる方法だった。

「酷い言われようだが、それが一番か。しかし、その婚約者殿は大丈夫なのか? もし、まかり間違ってバカ王子に負けたりすると取り返しがつかないことになる……あいつは武術バカだが、その実力だけはお前といい勝負だからな」

「大丈夫でしょう。ボス殿は考えて戦うタイプの人間ですが、単なる武術バカに正攻法でも負けるとは思えません。例え、多少の妨害工作をされようとも問題はありませんな」

 いつの間にか、第二王子の呼称がバカ王子やら武術バカに変化している。
 ロリコンで武術バカ……酷い扱いである。

「ウエストバーンがそこまで言うなら、正式に発表するのは武術大会後でいいな? 恐らく必要ないとは思うが、辺境伯の娘が婚約したという情報を流しておけ。ついでに、どうやら武術大会に出場するようだぞともな。そして、私のところに来るだろうから、大会で強さを証明しろと焚きつける。それでよいな?」

「はい、わかりました」

「それで構いませんよ。あ、国王陛下、多少の妨害工作には目を瞑りますが、闇討ちするなどの明らかにアウトなレベルに達した場合は反撃しますので、ご了承お願いします」

「宰相、王都騎士団に極秘任務の通達をしておけ。黒竜王と王都防衛戦をしたくなかったら、第二王子をよく見張り、大人しくさせておけとな」

「ですな。下手に怒らせて黒竜王様を王都に解き放たれたら……」


 おっさん王子が幼い娘に横恋慕した結果、竜に滅ぼされた国ニブルタール。
 その事実が判明した時、未来の考古学者たちは腹を抱えて床を転げまわることだろう。
 とんでもない汚名である。


「ということで、この件は終わりで良いな? 次に、例の男爵の件だが……こちらもこちらで頭が痛い。今、王都情報隊に裏を取らせているのだが、開けてみれば問題だらけだ」

「まぁ、以前から悪い噂が絶えませんでしたからな。グリニッジ男爵は、確か王弟殿下の派閥でしたよね? どこまで探るおつもりで?」

「そうだ、故に今まで中々干渉することができなかったが、今回の件を切っ掛けにして手を入れることを認めさせた。後は、どこまで調べられるかだが……私は、この際、徹底的にやりたいと思っている。今回はお前の働きで事なきを得たが、竜を狙うということは下手をしたら破滅への道に他ならない」

 兄弟で権力を二分した骨肉の争い……までは言い過ぎだが、いつそうなってもおかしくないと言わんばかりの状況に頭を悩ませる国王。

 その様子を見て、他人事ではないと思っているウエストバーン。
 彼には2人の子供がいるが、『統領』に嫁ぐ予定の娘は兎も角として、扱いに困っているバカ息子という跡継ぎをどうにかしなければならない問題を抱えているのだから。

「ああ、どこか、しがらみのないところで妻と2人で自由に生活したいなぁ……」

 世の中とはままならないものである。
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