漆黒帝と呼ばれた男 ~異世界から来たのでステータスやスキルはありませんけど、こちらには科学文明の力があるので最強です~

ねこのにくきう

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第一章 謎の組織、異世界へ行く

悪事28 謎の組織、冥界という存在を知る

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 先に逃げたメアたちから同じ化け物が複数現れたという連絡を受けた『統領』は、けん制していた化け物を無視して合流するべく動き出したのだが、道中で街が少しおかしいことに気が付いた。

(なぜ、こんなにも人気がない? ギギの店に来るときには、それなりにたくさんの人とすれ違ったのに、今は人っ子一人見当たらないぞ。これは何か、あるな)

 すぐにPASSを全力起動して民家の壁を蹴りあがって屋根へと到達すると、屋根から屋根へ飛び移りながら移動を開始する。

 メアに持たせている守護装置から座標を割り出し、最短距離で移動したら、ものの1分で謎の影の化け物たちに囲まれているメアたちを目視で発見した。

 護衛のギルバードが周りをけん制しながら守っているようなので何とか持ちこたえてはいるが、時間が経って疲れが見え始めれば形勢は怪しくなる。

「ギルバード! 前は任せろ!」

「ボス殿! やつらは剣が効かん! 爪に気をつけろ!」

 屋根の上から地上へ飛び降りながらギルバードに注意を促し、着地と同時に一番近くにいた化け物にPASS込みの拳を叩き込む。

 常人なら複雑骨折してもおかしくない一撃に対して、避けるつもりもない化け物は簡単に吹き飛んで地面に転がるが、すぐに起き上がって群れの中へ合流した。

 近くにいる化け物から片っ端に殴る蹴るで間合いを空けるが、どれも痛みなどを感じている素振りは全く見られない。

(PASS込みで殴ってもノーダメージか……瘴気生命体とかいうくらいだから、実態は気体なんだろうな。手ごたえがあるのが謎だが、空気を殴っても堪えないはずだ。これは最悪……武装を使わないと不味いか?)

「ボス様、あれは何なのでしょうか? あのような魔物は見たことがありません」

「瘴気生命体と呼ばれているそうですが、私も初めて見ますので、それ以上はわかりません」

「瘴気? 瘴気……そうか、冥界の化け物か! しかし、王都には結界があるはず、なぜこんな場所まで入ってこれる?」

 冥界、というのがキーワードなのだろう。
 ギルバードは何か情報を持っていそうだが、こんな状況で長々と説明を聞いている時間もない。

 厄介な化け物ではあるものの、『統領』の力量ならば、この程度の輩に後れを取ることは有り得ない。ギルバードも1人なら問題ないレベルだろう。

 しかし、問題なのは一般人のメアとギギである。
 彼女たちを守りながら、安全な地帯まで逃げるのには何か手段が必要だった。

「それに気づいているか? 俺たちが、ここでこれだけ騒いでいても、誰一人見に来る気配も、ましてや警備兵が来る気配もない。さっき、冥界がどうのとか言っていたが……」

「他言無用でお願いします……冥界はこの世と重なってあると言われている世界です。そこは常闇の世界で生物とは思えないような化け物たちが棲み、何らかの拍子にこちらへ突如として現れます。前例では、10数年前に聖王国に現れて封印されたと」

「対処方法は?」

「ありません。あらゆる攻撃が効かず、最終的に封印という手段が取られました。なので、対抗策として聖王国で勇者が選ばれたと聞いています」

 冥界云々と言うのは眉唾なのでどうでもいいのだが、倒せないというのが最も厄介な情報だった。

(なぜ、対抗策が勇者なのかがわからんが……ん? 勇者というと、エリカのことか? そう言えば、あいつは確か白刃戦装とかいうキラキラしたわけがわからん能力があったが……あれが、この化け物の対抗策なのか?)

 この『統領』の考え方は間違っていない。
 白の勇者エリカが備えている白刃戦装は、実体のない刃と鎧。
 実体のない刃は、実体を持たない化け物にこそ真価を発揮し、切り裂くことができる。
 そして、さらには物理的な干渉もするという、とてもチートな能力なのであった。

「それに、この空間も変です。見た目こそ私たちのいた王都ですが、完全に別物です。何らかの作用で別の世界へ迷い込んだとしか思えない」

(ふむ、だとすると冥界とやらは並行世界の可能性が高いということか? ギルバードの話を全て鵜呑みにはできないが、一考しておく必要がありそうだな。脱出対策としては、次元系の装備だが、あれはエネルギーを食いすぎるからなぁ)

「だとすると、何とかしてここから抜け出さないことには、延々とこいつらの相手をしないといけないということか。ははは、それは面倒くさいな……」

「ふふふ、ボス様? こんな状況なのに、笑うなんて不謹慎ですよ?」

「そう言うメア様だって、ふふふ」

 2人で笑っている『統領』とメアを見て、正気か? と思ったギルバードだったが、彼は護衛のプロフェッショナル、顔や態度に出すことはなかった。

「さて、冗談はさておき、1つ考えがあるので少し移動します。私が先行しますので、離れないようについてきてください」

 先頭を『統領』が走り、進行方向の影の化け物を左右に吹き飛ばしながら突き進む。

「ボス殿! このままいくと王都の外へ出てしまうぞ!?」

「うむ、そうだ。私たちは外へ向かっている。まさか、街を吹き飛ばして被害を出すわけにはいかんだろう? あ、メア様、ギギ殿、私が合図を出したら耳を塞いでくださいね」

「はい! わかっています!」

「あ、ああ、わかった」

 言われるままに後を追うメアたちだったが、『統領』が不穏なことを言うのでギルバードは寒気が止まらない。
 メアは何をするかわかっているようだったが、ギルバードとギギには彼らが何をしようとしているのかがわからない。

 そうこうしている間に、外壁にある門を飛び出し、王都から真っすぐ街道を抜けて拓けた平野に到達すると、『統領』が停止の合図を出す。

 振り返れば、王都の方向から音もなく、まるでセグ〇ェイに乗って動いているかのような影の化け物たちがワラワラと追いかけてきていた。

「よし、そろそろ頃合いだな。やれ!」

 『統領』の掛け声と同時に、薄暗い天空を切り裂いて、白い閃光が視界を埋め尽くした。

 放たれた閃光は影の化け物たちを飲み込んで、無慈悲に大地へと着弾し、直後に物凄い轟音を伴って、爆発した。

 時間が経って、土煙が晴れた頃、目の前に影の化け物たちの姿はどこにも無く、深く抉れる地面だけがそこにあった。
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