漆黒帝と呼ばれた男 ~異世界から来たのでステータスやスキルはありませんけど、こちらには科学文明の力があるので最強です~

ねこのにくきう

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第一章 謎の組織、異世界へ行く

悪事29 謎の組織、白い閃光で全てを消し去る

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 白い閃光が走ったと同時に、薄暗かった空間は音を立てて砕け散った。
 今まで目の前にいた影の化け物たちの姿はどこにもなく、気づけばいつもの世界に戻っていた。

「あっはっは、ニッグやるじゃないか! お前がここまでやるとは思ってなかったぞ!」

「でしょう? 僕だって役に立つんですよ! 少しは見直してくれましたか?」

「見直した! 私はお前の評価を見誤っていたようだ!」

「きゃー、ニッグさん、格好いいです! アリスにも雄姿を見せたかったですよ!」

 一仕事終えて、自慢げに踏ん反り返る小竜状態のニッグを『統領』とメアが誉めちぎる。

 一方、目の前に広がった光景が信じられずに呆然としているギルバードとギギは時間が経てば回復するだろうということで放置されていた。

 種明かしは簡単だ。
 ニッグが|竜の息吹(ドラゴンブレス)で空間ごと吹き飛ばしただけ、である。

 この世界で最上級の生物兵器であるニッグの攻撃には膨大な魔力が込められていて、やろうと思えばあらゆる事象に干渉することができる。
 その圧倒的なエネルギーは、時に空間を捻じ曲げ、別世界をも攻撃可能だ。

 実は、『統領』はギルバードから聞いた、冥界や瘴気と言った内容をニッグや『参謀』たちにもリアルタイムで連絡していた。
 どうしようかと対策を考えている途中で、ニッグが突然言い出したのだ。

『え? それなら僕のブレスで吹き飛ばしましょうか? 前にもやったことありますよ』

 余波を考慮して王都の誰もいない平地へおびき出して『統領』の合図で、ジ・エンド。
 ニッグにしてみれば、脳筋なブレスを一発叩き込むだけで終わる簡単なお仕事だった。



 ここはとある屋敷の一室。

「ば、ばかな……冥界の住人たちが、全員消し去られただと!?」

 豚男爵ことグリニッジ男爵が砕け散った指輪を見て、呆然としていた。

「これは、どんな手を使ってでもこの国を離れなければ……もう一刻の猶予もない。あのような方法で冥界の住人を消し飛ばすような輩と正面からことを構えられるか!」

 指輪を通して冥界の住人と呼ばれた影の化け物と視覚を共有していた男爵は、最後の光景を思い出して全身を震えさせた。

「まさか、緊急連絡用のコレを使うときがくるとは……」

 男爵はすぐに屋敷中の私物を集めさせると、人払いをして地下室に籠る。

「この国での活動はもう終わりだ。後始末は、全て王弟殿下に被ってもらうとしよう」

 男爵が地面にスクロールを広げて、そこへナイフを使って自分の指から血を垂らすと、紅く光る魔法陣が部屋中に広がる。

 光が消える頃には、地下室には何も残っていなかった。



 『統領』は再び王城へ呼び出されていた。

 ニブルタールの首脳陣に見つめられる中央、『統領』は背中から大量の汗をかいていた。

「それで、ボス殿のほうから何か申し開きはあるかね?」

 理由は簡単、ニッグの件である。
 『統領』側から見れば、あの時は対応手段がそれしかなかったため、脳筋思考のブレスで冥界ごと吹き飛ばして助かったことは良い。

 しかし、王都側から見れば、巨大な黒い竜が突如として出現して、王都近くにブレスを叩き込んだことに他ならない。結果、多くの国民は恐慌に陥り、王都は大混乱となったのは言うまでもない。

 ちらっと同行したギルバードのほうを見れば『統領』だけにわかる様に頷いていた。

「実はですね……」

 時系列で事の顛末を話していったのだが、冥界や影の化け物が話題に上るとニブルタールの重鎮たちが騒がしくなる。

「静まれ!! まずはボス殿の話を聞くのが優先だ! 続きを」

 即座にヘイム国王が一喝し、周囲は落ち着きを取り戻したが、国王自体も内心では大きく動揺をしていた。

「何と言う事だ……先般の問題が解決する前に新たな問題とは頭が痛い。しかも、寄りにもよって結界が機能しているはずの王都に冥界が発生するとは……」

「陛下、先般の件に関してですが、今朝方に新たに判明した事実がございます」

 宰相が報告を伝えると、聞いた国王の顔つきが一片する。

「それは、真か?」

「残念ながら、ある程度の証拠も挙がってきております。更に、グリニッジ男爵家の関係者からの報告で男爵が失踪したと連絡も受け、王都騎士団で捜索しておりますが現在まで目ぼしい成果が上がっておりません」

「もう幾ばくの猶予もないか……王命を発動する。本件の重要参考人として、マイム公爵を拘束せよ。また、マイム公爵家とグリニッジ男爵家が所有するあらゆる物件への強制捜査を実施する。また、現場で抵抗するものは捕縛して構わん。この後、王命書は最優先で作成して決済する。以上だ」

(何か大事になってきたけど、俺ってなんでこの場に残ってるんだ? 他国のごたごたに巻き込まれたくないよなー

「それで、ここからは依頼となるのだが、ボス殿には我が国の使者としてラスティ聖王国へ行ってもらいたい。使者団の長はメアを任命し、護衛として騎士のギルバードを同行させる。良いな? ウエストバーン」

「は! 問題ありません」

「はい?」

 予め予期していたウエストバーンと、思わぬ方向から飛んで来たキラーパスにうっかり素を出してしまう『統領』。

「ボス殿、冥界の件は大陸同盟間で最重要案件です。現在、勇者という最も有効な戦力を保有している聖王国が対策を主導しておりますが、他の国も協力を惜しまないことを約束しています。今回は結界内で発生したという前例のない事象ですので、聖王国の判断を仰ぐ必要があるのです」

 それは理屈としてはわかるが、なぜニブルタール王国の使者として『統領』が聖王国へ行かねばならないのか? そこが問題なのである。

「これは重要かつ機密性の高い案件となりますので、当事者が直接説明をするのが望ましいのはわかりますな? ウエストバーン卿の娘であるメアや騎士のギルバードは義務ということになりますが、ボス殿は所属が違いますのでお願いと言う形です」

(いやいや、まだ14歳のメアに普通はそんな責任のある仕事をさせるわけないだろ。何か別の狙いがありそうだが、ウエストバーンが納得しているので危険はなさそうなのか?)

「はぁ、まぁそれくらいでしたら引き受けましょう。私が断ってメア様だけを行かせるわけにもいきませんし」

「そうか! 行ってくれるか!」

 あからさまにホッとした様子のヘイム国王を見る限り、どうしても『統領』を同行させたかったようなのだが、イマイチ理由がわからない。

「それで出立の予定は、いつからでしょうか? 実は、拠点に所用が出来たので少し島へ戻る予定なのですが……1週間ほど」

「ボス殿の出身はウエストバーン領の西岸から海を渡った島と聞いているが……1週間で戻ってこれるものなのか? 普通であれば片道でも1か月はかかりそうなものなのだが」

「ニッグに往復してもらう予定なので、ここから片道で1日半くらいですね」

「黒竜王というのはとんでもないな……こちらにも手続き等があるので1週間後で構わぬ。では、宰相、1週間以内にボス殿たちが出立できるように手配を頼む」

「御意に」

 島へ帰る時間がありそうで胸を撫で下ろす『統領』。

(よかった。ニブルタールで入手したものを早く『教授』に渡さないと五月蠅くて敵わんからなぁ。毎日毎日朝昼晩に催促の連絡が来るっておかしいだろ……喜ぶかと思って事前に連絡したのが迂闊だった)



 『統領』への聞き取りが終わって、一部の人間だけが残った謁見の間。

「ボス殿へ本当の理由を告げなくてもよかったのですか? 使者に任命したことは、あの場では理解してくれましたが、納得はしていない様子でした……」

「うむ、この件は身内の恥だからな、ボス殿には言う必要はない。ボス殿たちには一時的に国外に出ていてもらい、その間に粛清を終わらせるつもりだ。報復も考えられるからな、ニブルタールよりもラティス聖王国に居たほうが良い」

「下手に報復されると国が消し飛びかねませんしな……彼らには心安らかに過ごしてもらい、我々の心労が減るという一石二鳥の作戦ですか」

「そういうことだ。それで、証拠はあがったのか? 男爵の行方のほうはどうだ?」

「はい、残念ながら死罪は免れませんな。男爵のほうは足取りが全く分かっておりません。どのようにして王都から出たのか、その糸口さえないのです」

「そうか、本当にバカモノめ……いや、そこまで追いつめてしまった私の責任もあるのか。男爵のほうは引き続き調査を続けよ」

 国王にとっての身内の死罪が決定した瞬間だった。

 彼の心には今どんな想いが渦巻いているのか、それは本人にしか窺い知れなかったが、その瞳は懐かしい過去を見ているような気がした。
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