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第一章 謎の組織、異世界へ行く
悪事30 謎の組織、拠点の生活を満喫する
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あの話し合いの次の日、ニブルタールの王都を離れ移動を開始し、
「ボス、島が見えてきましたよ! あ、ワンエーたちがこっちに手を振ってますね」
「うむ、ご苦労ニッグ。予定よりも少し早いか、素晴らしい働きだったぞ」
『統領』たちはニッグに乗って拠点の島へと戻ってきていた。
「おお、あそこがおぬしの拠点とやらか? あの銀色の塊は一体何だ!?」
王都で店を閉めた鍛冶師のギギは、空から『統領』たちの星間航行船を見つけて大興奮だった。今でこれなら『教授』に会せたらどうなってしまうのか。
「ここがボス様やニッグさんたちの故郷……とても綺麗な島ですね!」
「お嬢様、そのように端に行かないようにお願いします。念のため、ニッグさんが魔力で保護してくれていますが、万が一というものがございます」
メアとアリスにとっては初めての空の旅、初めての観光旅行となる。
ニッグが広場に着地するのを見ると、犬モフ族たちが駆け寄ってきた。
男たちは農業に出ていて見当たらず、ほとんどが子供たちと世話役の女たちだった。
「りゅうじんさま! おかえりなさい!」
大人気のニッグは子供たちに囲まれてしまうので、背中の『統領』たちを降ろすと、すぐに身体を5メートルくらいの大きさへと変化させる。大きすぎても小さすぎても子供の相手は難しいのである。
「出迎えご苦労」
「お疲れ様です、『統領』。皆さま、竜神の島へようこそ」
「僅かな間ですが、お世話になります」
子供たちでもみくちゃになっているニッグを横目に『統領』が『参謀』に挨拶をする。
どうやら名義上、竜神の島と呼称することにしたようだ。
「それでは拠点をご案内しますので、どうぞこちらへ。ギギ様は『教授』がもうすぐ参りますので、エントランスで少しお待ちください」
他国の貴族の娘を手作りの家に住まわせるわけにもいかないので、星間航行船内の居住エリアを割り当てることにしたようだ。
「それでは、居住エリアの説明をしてきますので、ここで失礼します」
「うむ、頼んだ。私は入手したものを『教授』に預けてから、少し外回りをしてくる。何かあったら連絡をくれ」
船内はスペースが限られているため、機能性を究極まで追求した設備の数々が存在する。
部屋自体は簡素な造りになっているものの、近代的なトイレやシャワーなどはメア達からしたら異次元以外の何物でもなく、その利便性にとても感激していた。
『統領』が犬モフ族たちの村を訪れると、広場には子供の人だかりができていて、ニッグの背中を滑り台代わりに大盛況だった。
「りゅうじんさま! たのちー!」
子供たちがケガをしないように、なだらかに尻尾の角度を調節して相手をしているニッグはとても面倒見が良い兄貴分だ。
『統領』は遊んでいる子供たちと側で見守っている女たちに手を振って別れて、男たちのいる栽培エリアへと向かう。
「報告で知っていたが、もう第二段階に成長しているとは……」
アプレットはとても変な植物である。
愛情を主な養分として成長し、栄養価の高い果実をつける。
現在では第三段階まで確認されていて、第一段階で植物として成長し、第二段階で知性を持ち、第三段階で自立移動を始める。
第三段階まで成長したのは1例しかなく、それも数日で逃げ出したという記録だけが残っているほどの謎生態を持つ。
しかし、段階を重ねるほど果実は美味になり、それと比例して価値は上がる。最初は桃~赤色だが、徐々に色彩が変化していき、第三段階に到達した黄金の果実は1つに青天井の値段がついていた。
そして、『統領』たちが完全凍結保存しているのも第一段階の果実だった。
今、『統領』の目の前には、世話をしてくれている犬モフ族の男たちに楽しそう? にじゃれつく蔦植物群が広がっていた。既にたくさんの果実をつけていて、色が変わりそうなものもちらほらある。
「あ、『統領』様! おかえりなさい!」
「いや、こっちにこなくていい。アプレットたちの世話を優先してやってくれ」
「はい! ありがとうございます」
『統領』は自分を見つけて駆け寄ってこようとする犬モフ族たちに声をかけて制止すると、畑内に絶対に入らないように遠巻きに観察する。成長したアプレットは懐いた者たちしか敷地に入れない習性があるからだ。
(これは相性が良いっていうレベルじゃないぞ……本当に逸材なんじゃないか? なんでこんな短時間でアプレットが懐くんだ? データだと第二段階から懐くまでに5年はかかるって話だったはずなんだが……)
『統領』は犬モフ族たちへの報酬に悩んでいた。
最初は新しい食文化の導入として、ある惑星の食べ物のクレープを製作設備ごと提供しようと考えていたのだが、ここまでの実績を出されてしまうと相応のものを渡さないと自分たちの沽券にかかわってしまう。
(クレープは導入するとして、追加で何か考えないといけないな……現時点ではニブルタールから複数種類の果実や小麦などの穀物を購入してきているが、他にも何か見繕って買ってくるか)
犬モフ族たちの想定外の仕事っぷりに頭を悩ませる『統領』だった。
次に『統領』が訪れたのは獣舎である。
現在は、卵を安定供給するためにグロウンバードという鳥の飼育と繁殖を開始していると報告を受けていた。
「『怪人』、ご苦労。問題は起きていないか?」
「ああ、問題はない。『統領』が手に入れてきた、あの鳥たちはとても賢い。世話らしい世話をしなくても自由に生活を始めている。もちろん、こちらが指示している範囲で、だ」
監視役として待機していた『怪人』は、獣舎の前で木材の加工をしていた。次は犬モフ族たちの村に食糧庫を作ると言っていたので、それの材料だろう。
「『怪人』さん、獣舎の清掃終わりました。次は寝藁用の草の採集と自分たちの食料を取りに行きたいのですけど、いいですか?」
「うむ、では私もついて行くから、10分程待て」
獣舎から男たちが4人出てきて、『怪人』に仕事の報告をしていた。
見た目はこざっぱりしていて村人風の格好なのだが、物腰が明らかに普通の人ではない。
「君たちが、私たちの拠点に不法侵入しようとしたという冒険者かね?」
「はい……本当にすいませんでした。あなたが『統領』さんですよね?」
(こいつがリーダーか? この話題を振った瞬間にテンションが急降下したぞ……どうやら本当に後悔して反省しているようだな。ふむ、『怪人』からの報告では捕まってからは真面目に仕事をしているようだし、何人かを王都の販売員にしても良さそうか?)
「そうだ。、まぁ、しばらくは真面目に働くことだ。今は最下級の扱いだが、お前たちの貢献次第では身の振り方を考えてやろう」
「! はい!」
その後、作業を終えた『怪人』と男たちは森に出かけて行ったので獣舎の中を視察したのだが、几帳面な働きぶりで清潔感が保たれていたのも高評価だった。
『怪人』の報告ではグロウンバードたちも男たちに懐いているようなので、根っからの悪人ではないのだろう。賢い動物ほど悪意には敏感なのだから。
農業の仕事が終わった段階で、犬モフ族たち全員にメアたちが紹介された。客として招いた以上、お互いが存在を認識しておかないと不用意な事故が起こる可能性があるからだ。
「私、わんちゃんを飼うのが夢だったんですけど、この子たちはそれ以上に可愛いくて素敵です。ああ、ボス様の島について行けるように、お父様を説得した甲斐がありました」
キラキラした目で遊んで? と言ってくる犬モフ族の子供たちに囲まれてメアはご満悦で、そのまま集会所で一緒にご飯を食べる運びとなった。
そして、やっと解放されたニッグは山の方へ飛んでいった。きっと、魔力結晶を食っちゃ寝しに自分の巣へ行ったのだろう。彼にも1人で自由な時間は必要なのである。
島の森で採れた様々な旬のフルーツ類を和気あいあいと食べながら、メアは子供たちと交流していたのだが、
「ボス様? ここでは、アプレットを食事として食べるのですか?」
突然、一緒に食事をとっていたメアたちがプルプルと震え出したことを不思議に思った犬モフ族の子供たちが揃って首を傾げる。モフ可愛い。
「ん? だって、これを作ってるのは彼らだからな。生産者は、優先的に食べる権利があるのが普通じゃないか? ほら、クレープの皮が出来たぞ」
「なるほど、この皮と呼ばれるもので色々なものを自由に包んで食べるのですね? 皮の作り方は先ほど見せて頂いたやり方で……」
子供たちの横で、女たちにクレープの作り方を実践しながら教えていた『統領』は、これが普段の光景と言わんばかりにカットされた様々なフルーツを皮に並べてくるくると巻いて、最後にハチミツをかける。
「そうだ。この設備で作るのだが、ここの鉄板が熱いから気をつけろ。子供たちは危ないから触らせないようにな。あと、この皮を作る前には必ず全身洗浄乾燥機で身体を綺麗にしてから作るんだ。手が汚れたままで作ったものを食べるとお腹を壊すぞ?」
「わかりました。やり方は見て覚えましたから、次の皮は私が作ってみてもいいですか?」
「火傷しないようにな? さて、子供たちよ! クレープというお菓子が出来たから、こっちで手を洗って並ぶのだ。まずは1人1つだぞ?」
先ほどから集会所にはクレープを焼くいい匂いが充満していて、子供たちがチラチラとこちらを窺っていたのだが、『統領』が声をかけると一斉にパタパタと洗浄機へと走り出す。
「おいちー! あまーい!」
子供たちがぱくりと一口食べるとあちらこちらで歓声が上がり、尻尾がブンブンと扇風機状態になる。
その様子を見ていた男たちが急にソワソワし出しだして、女たちがクレープの皮を作っている場所へ集まり始めた。
「おおおお、なんという美味しさだ……」
「アプレットと他の果実を合わせて食べるとこんなにも味の変化が楽しめるのですね……さらにこのハチミツというソースが甘くてとてもいいアクセントになっています。これはバリエーションの研究をしなければ」
男たちの中には涙を流して齧り付く者、女たちの中には的確な分析と食レポを熟す者と様々だったが、一様に高評価であった。
「ボス様? 私も食べてみてもよろしいですか?」
「あの、お嬢様、できればその、私にも……」
子供たちがあまりにも美味しそうに食べるのでメアが興味を持ち、その横でアリスも控えめに主張をした。
『統領』は女たちにメアたちの分もお願いすると、手際よく皮を作りクルクルとクレープを作成していく。この短時間で凄まじい手慣れである。
「こ、こんなことがあってもいいのでしょうか! なんという美味……」
犬モフ族の女たちに作ってもらったアプレット入りのクレープを一口食べたメアはとても感激し、アリスは無言でそれに齧り付いていた。
その様子を隣で見ていた子供たちはニコニコで、この顔合わせ懇親会が大成功したことを意味しているのだった。
「ボス、島が見えてきましたよ! あ、ワンエーたちがこっちに手を振ってますね」
「うむ、ご苦労ニッグ。予定よりも少し早いか、素晴らしい働きだったぞ」
『統領』たちはニッグに乗って拠点の島へと戻ってきていた。
「おお、あそこがおぬしの拠点とやらか? あの銀色の塊は一体何だ!?」
王都で店を閉めた鍛冶師のギギは、空から『統領』たちの星間航行船を見つけて大興奮だった。今でこれなら『教授』に会せたらどうなってしまうのか。
「ここがボス様やニッグさんたちの故郷……とても綺麗な島ですね!」
「お嬢様、そのように端に行かないようにお願いします。念のため、ニッグさんが魔力で保護してくれていますが、万が一というものがございます」
メアとアリスにとっては初めての空の旅、初めての観光旅行となる。
ニッグが広場に着地するのを見ると、犬モフ族たちが駆け寄ってきた。
男たちは農業に出ていて見当たらず、ほとんどが子供たちと世話役の女たちだった。
「りゅうじんさま! おかえりなさい!」
大人気のニッグは子供たちに囲まれてしまうので、背中の『統領』たちを降ろすと、すぐに身体を5メートルくらいの大きさへと変化させる。大きすぎても小さすぎても子供の相手は難しいのである。
「出迎えご苦労」
「お疲れ様です、『統領』。皆さま、竜神の島へようこそ」
「僅かな間ですが、お世話になります」
子供たちでもみくちゃになっているニッグを横目に『統領』が『参謀』に挨拶をする。
どうやら名義上、竜神の島と呼称することにしたようだ。
「それでは拠点をご案内しますので、どうぞこちらへ。ギギ様は『教授』がもうすぐ参りますので、エントランスで少しお待ちください」
他国の貴族の娘を手作りの家に住まわせるわけにもいかないので、星間航行船内の居住エリアを割り当てることにしたようだ。
「それでは、居住エリアの説明をしてきますので、ここで失礼します」
「うむ、頼んだ。私は入手したものを『教授』に預けてから、少し外回りをしてくる。何かあったら連絡をくれ」
船内はスペースが限られているため、機能性を究極まで追求した設備の数々が存在する。
部屋自体は簡素な造りになっているものの、近代的なトイレやシャワーなどはメア達からしたら異次元以外の何物でもなく、その利便性にとても感激していた。
『統領』が犬モフ族たちの村を訪れると、広場には子供の人だかりができていて、ニッグの背中を滑り台代わりに大盛況だった。
「りゅうじんさま! たのちー!」
子供たちがケガをしないように、なだらかに尻尾の角度を調節して相手をしているニッグはとても面倒見が良い兄貴分だ。
『統領』は遊んでいる子供たちと側で見守っている女たちに手を振って別れて、男たちのいる栽培エリアへと向かう。
「報告で知っていたが、もう第二段階に成長しているとは……」
アプレットはとても変な植物である。
愛情を主な養分として成長し、栄養価の高い果実をつける。
現在では第三段階まで確認されていて、第一段階で植物として成長し、第二段階で知性を持ち、第三段階で自立移動を始める。
第三段階まで成長したのは1例しかなく、それも数日で逃げ出したという記録だけが残っているほどの謎生態を持つ。
しかし、段階を重ねるほど果実は美味になり、それと比例して価値は上がる。最初は桃~赤色だが、徐々に色彩が変化していき、第三段階に到達した黄金の果実は1つに青天井の値段がついていた。
そして、『統領』たちが完全凍結保存しているのも第一段階の果実だった。
今、『統領』の目の前には、世話をしてくれている犬モフ族の男たちに楽しそう? にじゃれつく蔦植物群が広がっていた。既にたくさんの果実をつけていて、色が変わりそうなものもちらほらある。
「あ、『統領』様! おかえりなさい!」
「いや、こっちにこなくていい。アプレットたちの世話を優先してやってくれ」
「はい! ありがとうございます」
『統領』は自分を見つけて駆け寄ってこようとする犬モフ族たちに声をかけて制止すると、畑内に絶対に入らないように遠巻きに観察する。成長したアプレットは懐いた者たちしか敷地に入れない習性があるからだ。
(これは相性が良いっていうレベルじゃないぞ……本当に逸材なんじゃないか? なんでこんな短時間でアプレットが懐くんだ? データだと第二段階から懐くまでに5年はかかるって話だったはずなんだが……)
『統領』は犬モフ族たちへの報酬に悩んでいた。
最初は新しい食文化の導入として、ある惑星の食べ物のクレープを製作設備ごと提供しようと考えていたのだが、ここまでの実績を出されてしまうと相応のものを渡さないと自分たちの沽券にかかわってしまう。
(クレープは導入するとして、追加で何か考えないといけないな……現時点ではニブルタールから複数種類の果実や小麦などの穀物を購入してきているが、他にも何か見繕って買ってくるか)
犬モフ族たちの想定外の仕事っぷりに頭を悩ませる『統領』だった。
次に『統領』が訪れたのは獣舎である。
現在は、卵を安定供給するためにグロウンバードという鳥の飼育と繁殖を開始していると報告を受けていた。
「『怪人』、ご苦労。問題は起きていないか?」
「ああ、問題はない。『統領』が手に入れてきた、あの鳥たちはとても賢い。世話らしい世話をしなくても自由に生活を始めている。もちろん、こちらが指示している範囲で、だ」
監視役として待機していた『怪人』は、獣舎の前で木材の加工をしていた。次は犬モフ族たちの村に食糧庫を作ると言っていたので、それの材料だろう。
「『怪人』さん、獣舎の清掃終わりました。次は寝藁用の草の採集と自分たちの食料を取りに行きたいのですけど、いいですか?」
「うむ、では私もついて行くから、10分程待て」
獣舎から男たちが4人出てきて、『怪人』に仕事の報告をしていた。
見た目はこざっぱりしていて村人風の格好なのだが、物腰が明らかに普通の人ではない。
「君たちが、私たちの拠点に不法侵入しようとしたという冒険者かね?」
「はい……本当にすいませんでした。あなたが『統領』さんですよね?」
(こいつがリーダーか? この話題を振った瞬間にテンションが急降下したぞ……どうやら本当に後悔して反省しているようだな。ふむ、『怪人』からの報告では捕まってからは真面目に仕事をしているようだし、何人かを王都の販売員にしても良さそうか?)
「そうだ。、まぁ、しばらくは真面目に働くことだ。今は最下級の扱いだが、お前たちの貢献次第では身の振り方を考えてやろう」
「! はい!」
その後、作業を終えた『怪人』と男たちは森に出かけて行ったので獣舎の中を視察したのだが、几帳面な働きぶりで清潔感が保たれていたのも高評価だった。
『怪人』の報告ではグロウンバードたちも男たちに懐いているようなので、根っからの悪人ではないのだろう。賢い動物ほど悪意には敏感なのだから。
農業の仕事が終わった段階で、犬モフ族たち全員にメアたちが紹介された。客として招いた以上、お互いが存在を認識しておかないと不用意な事故が起こる可能性があるからだ。
「私、わんちゃんを飼うのが夢だったんですけど、この子たちはそれ以上に可愛いくて素敵です。ああ、ボス様の島について行けるように、お父様を説得した甲斐がありました」
キラキラした目で遊んで? と言ってくる犬モフ族の子供たちに囲まれてメアはご満悦で、そのまま集会所で一緒にご飯を食べる運びとなった。
そして、やっと解放されたニッグは山の方へ飛んでいった。きっと、魔力結晶を食っちゃ寝しに自分の巣へ行ったのだろう。彼にも1人で自由な時間は必要なのである。
島の森で採れた様々な旬のフルーツ類を和気あいあいと食べながら、メアは子供たちと交流していたのだが、
「ボス様? ここでは、アプレットを食事として食べるのですか?」
突然、一緒に食事をとっていたメアたちがプルプルと震え出したことを不思議に思った犬モフ族の子供たちが揃って首を傾げる。モフ可愛い。
「ん? だって、これを作ってるのは彼らだからな。生産者は、優先的に食べる権利があるのが普通じゃないか? ほら、クレープの皮が出来たぞ」
「なるほど、この皮と呼ばれるもので色々なものを自由に包んで食べるのですね? 皮の作り方は先ほど見せて頂いたやり方で……」
子供たちの横で、女たちにクレープの作り方を実践しながら教えていた『統領』は、これが普段の光景と言わんばかりにカットされた様々なフルーツを皮に並べてくるくると巻いて、最後にハチミツをかける。
「そうだ。この設備で作るのだが、ここの鉄板が熱いから気をつけろ。子供たちは危ないから触らせないようにな。あと、この皮を作る前には必ず全身洗浄乾燥機で身体を綺麗にしてから作るんだ。手が汚れたままで作ったものを食べるとお腹を壊すぞ?」
「わかりました。やり方は見て覚えましたから、次の皮は私が作ってみてもいいですか?」
「火傷しないようにな? さて、子供たちよ! クレープというお菓子が出来たから、こっちで手を洗って並ぶのだ。まずは1人1つだぞ?」
先ほどから集会所にはクレープを焼くいい匂いが充満していて、子供たちがチラチラとこちらを窺っていたのだが、『統領』が声をかけると一斉にパタパタと洗浄機へと走り出す。
「おいちー! あまーい!」
子供たちがぱくりと一口食べるとあちらこちらで歓声が上がり、尻尾がブンブンと扇風機状態になる。
その様子を見ていた男たちが急にソワソワし出しだして、女たちがクレープの皮を作っている場所へ集まり始めた。
「おおおお、なんという美味しさだ……」
「アプレットと他の果実を合わせて食べるとこんなにも味の変化が楽しめるのですね……さらにこのハチミツというソースが甘くてとてもいいアクセントになっています。これはバリエーションの研究をしなければ」
男たちの中には涙を流して齧り付く者、女たちの中には的確な分析と食レポを熟す者と様々だったが、一様に高評価であった。
「ボス様? 私も食べてみてもよろしいですか?」
「あの、お嬢様、できればその、私にも……」
子供たちがあまりにも美味しそうに食べるのでメアが興味を持ち、その横でアリスも控えめに主張をした。
『統領』は女たちにメアたちの分もお願いすると、手際よく皮を作りクルクルとクレープを作成していく。この短時間で凄まじい手慣れである。
「こ、こんなことがあってもいいのでしょうか! なんという美味……」
犬モフ族の女たちに作ってもらったアプレット入りのクレープを一口食べたメアはとても感激し、アリスは無言でそれに齧り付いていた。
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