漆黒帝と呼ばれた男 ~異世界から来たのでステータスやスキルはありませんけど、こちらには科学文明の力があるので最強です~

ねこのにくきう

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第二章 謎の組織、聖王国へ使者として赴く

悪事35 とある帝国将軍の苦悩

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 急に皇帝陛下に呼び出されて謁見に向かえば、頼まれたのは皇子の御守りだった。

 体裁としては、魔導戦隊を率いた未開地域の調査。
 たかが調査で魔導船15隻の使用許可が出たことにも驚きだが、その指揮官が阿呆で有名な第一皇子だとわかった瞬間に、碌な任務でないことは容易に知れた。


 行先が判明した。最悪だ。
 古くから伝えられている邪竜が棲む島、そこへ魔素結晶を取りに行くという任務だった。

 魔素結晶は魔導船や魔導器を動かすために必要不可欠なものだが、普通の場所には存在しない。その多くは、霊峰の頂きや未開の大森林、海や湖の底といったところで採取できることが確認されている貴重な物。
 しかし、それは同時に高位の魔獣の住処と同じで、例外はない。
 稀に山から崩れた岩の中や大地の裂け目、海岸などに漂流したものが流れ着くこともあるが、そう簡単に見つかる物ではない。

 帝国ではいくつかの入手先を秘匿しているが、年々採取量が減少している傾向があると文官たちが嘆いていたのを聞いたことがある。


 先遣隊を出したが、その音信が途絶えた。
 私の部下から選りすぐった手練れ5人と諜報部の精鋭2人が揃って、だ。
 事前に竜が不在なことを調べ、無理をせず情報収集を優先することを伝えたのに、一体どういうことだ? 何かおかしい、嫌な予感がヒシヒシとする。


 懸念を伝えても皇子の気は変わらなかった。
 むしろ、自分が手柄を立てるチャンスだと息巻いているようだ。
 くだらない、己の名声のために危険を冒す輩は大抵碌なことにならない。
 私としては先遣隊の消息を探れるので良いのだが……今も嫌な予感が拭えない。


 もうすぐで島に着くというところで、信じられないことが起こった。
 この古代魔導帝国の遺産である魔導船に、外部から交信して来た者がいるのだ。
 しかも、我々の目的の島に拠点を構えているという。

 竜は基本的に弱者を認めない。
 竜がいるということは、他の生物は淘汰されるということだ。人と共存は有り得ない。
 そこへ拠点を作るという神経が信じられない。竜はどこへ行った?

『あなた方は、先日のならず者たちの上司ということでよろしいでしょうか?』

 交信してきたのは、女か? 変な格好だが、声から推測すると若い。
 我々の顔を知っているということは、こいつらが先遣隊をやったやつらか。

『では、改めて同じ問いをすることに致しましょう。現在、この島は私有地となっていますのでお引き取りを。それ以上近づくならば命の保証は致しません』

 どう対応するか考えている間に、反射的に皇子が相手に喧嘩を売ってしまった。
 我が皇帝陛下の子とは思えないほどの思慮の無さ、この皇子が次期皇帝かと思うと頭が痛くなってくる。

『ま、待ってくれ! ドドルガーン将軍! ガリウスです! この島はダメです、竜よりも凶悪な人間がいるんです! その証拠に俺たちは為す術もなくやられて拘束されました。今回は引いてください! お願いし……ぎゃぁあああああ』

 先遣隊に出したガリウスが話に割り込んできた。無事だったか。
 しかし、話の途中で急に苦しみ始めて、強制的に退場させられた。
 話の内容からすると『参謀』とやらが何かをしたようだが、方法はわからない。

 ガリウスの忠告を聞いても、皇子の意向は変わらない。
 ついには宣戦布告をしてしまった。もう後戻りはできない。

 こんなバカなことがあっていいのか……ほんの一瞬で魔導船が14隻も沈められた。
 ここから島まで、どれだけ離れていると思っているんだ。
 魔導船の交信へ割り込む技術、遠距離から正確に狙撃し装甲を貫く未知の攻撃、これだけでも帝国とは隔絶したものだ。陸なら兎も角、海上では勝ち目はない。

 皇子にはしばらく黙っていてもらい、降伏を宣言した。
 完全なる越権行為だが、少しでも多くの兵の命を守るためにはこれしかない。

 沈んだ船の兵たちを助けてもらい、島に誘導されて上陸した。
 驚くことに迎えたのは僅かに5人、こちらは500人以上いるというのに、だ。
 しかも、内1人はガリウス、3人は機械兵と呼ばれたよくわからない武装兵だった。

 この知的な女の考えることことだ、決して傲りではない。
 ならば、たった5人で、こちら側に勝てる自信があるということか。
 恐ろしい結論に至った瞬間に、全身を駆け巡った寒気が止まらない。

 戦後処理については、ガリウスと相談して決めることになった。
 あの女としても多くの捕虜は必要なく、兵は無事に帰せる可能性が高い。不幸中の幸いか。
 問題なのは、我々が解放される条件に何を提示されるかと、皇子が目覚めたら何を言い出すかだ……。

 まずは、副官たちは未だに私たちの扱いについて不満に思っているようだが、兵たちには下手なことはしないように良く言い聞かせた。

「ガリウス、お前たちは一体どうなった? 今はどういう扱いをされているんだ?」

「先遣隊7人のうち、3人は死にました。俺たちには、この島から逃げられない、敵対しない処置がされていて、破れば死にます。実際に、死んだ3人は島から逃げようとして頭が吹き飛びました。今は残った4人でグロウンバードという鳥の世話をしていますよ……仕事さえちゃんとやれば、他は割と自由です。ははは」

「すまない……」

「いえ、受けた俺たちにも責任はあります。自業自得ですよ。それに、ここだけの話ですが、下手をすると帝都生活よりも快適かもしれません。見たことない飯は美味いですし、身を清める装置は使い放題ですし、寝床も温かく清潔です。鳥の世話は初めてでしたけど、真剣に向き合えば応えてくれるので、これはこれで楽しい環境です」

 正直、国によっては奴隷扱いで使い捨てにされてもおかしくなかったが、割と良い生活をさせてもらっているようだったので安心した。
 問題は我々も同じように扱われるかなのだが……今更それを考えても仕方がない。

「こちらの意見がまとまったので、話し合いたい」

『……わかりました。それでは30分後に迎えに行かせます。今から交渉役を3名選んでおきなさい』

 言われたとおりに、機械兵と呼ばれていた兵士に話しかけると、しばらくしてから『参謀』の声で返答があった。

 さて、ここからが正念場だ。
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