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第6章 時の揺り籠
6-21 ドッキリ大成功!
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司が生き返った後、即座に情報共有する会が結成された。
そして、リリが拙いながらも一生懸命説明した内容は、まさしく朗報だった。
「……どういうことだ? 兎神は、知ってたのか?」
しかし、珍しく、本当に珍しく司の機嫌が悪い。
「もちろんです。私たち3名は計画に協力してますから。ただ、こんな形で露呈するとは思いませんでした」
悪びれることなく、しれっと答える兎神。橙花と蒼花は無表情だ。
「……知らなかったのは、俺だけ、ということか」
さらに眉間に皺が寄る。
「あ、あの……ごめんなさい。何か、司さんが怒るようなことがありましたか?」
司の不機嫌が自分のせいと思ったリリは戦々恐々だった。
「ち、違う違う。リリは悪くないよ。よく頑張ったな。よしよし」
「えへへ~」
リリに八つ当たりしそうになった司は慌ててご機嫌取りに走る。
元々、膝の上に乗せてリリの説明を聞いていたが、全力でモフり始めると翳った顔がすぐに笑顔になった。ちょろいとか思ってはいけない。
「そうか……生きていてくれたか」
「ええ、ええ、よかった。本当によかった」
やや怒れる司と対照的に、ヴォルフとルーヴは2人で頷き合って泣いていた。
リリが視た深緑の子が、生き別れた個体かどうかはヴォルフたちには定かではない。
しかし、リリが共振できたという実績から、限りなくそれに近いのだ。
生死不明だった兄弟が生きている可能性が高い、リリから齎されたこの情報だけでヴォルフたちは感無量だったのだ。
リリの内容をまとめると、要点は2つ。
深緑の子供は、『彼の世界』で親切な人に保護されて生きている可能性が高い。
そして、その子供はヴォルフたちと生き別れたリリの兄である可能性が高い。
「もう1つは、死んだはずの爺が、実は生きているかもしれない、ということだな?」
そう、司が苛立っているのはコレである。
「ここまでバレてしまったら打ち明けてしまいますが、確実に生きておられますね。そう簡単に死ぬような方ではありませんから」
これまたしれっと宣う兎神、そして無表情の2人。
「俺が、葬式で見たアレは、何だったんだ? 死んでたよな?」
「お館様、ご自身ですよ? 少しだけ手の込んだ死んだふりです」
唯一の肉親だった祖父に騙されていた。この事実をどう受け止めていいものか。理由によっては許さない。司の目がそう語っている。
「で、そこまでした理由は?」
「それは、私の口からは申し上げらない契約です。真実をお知りになりたければ、お館様に直接お尋ねください」
兎神がこういうからには相応の理由があってのことだろう。さらに、司を最優先の橙花たちが何も言わないのはそう言う事だ。
「ただ、司様が真実に気づいた時に伝える言葉をお預かりしています。『司よ、もしかして騙されおったか? わしの演技も大したものじゃろう? ドッキリ大成功じゃ!』で、ございます」
「あのくそ爺め……」
恐らく、司を落ち込ませないように努めて配慮した言葉だろう。決して、孫をおちょくっているわけではないはずである。きっと、たぶん。
「じじい? ってどなたなんですか? あのおじいちゃんのことですか?」
リリが伝えた、白いお髭のおじいちゃん。
宗司並みにガタイが良く、拾った古狼の子供を家族として迎え、最果ての地で1人、原始人のような生活を送る変わり者。
話しに聞いた内容と、その外見的、特徴が一致する人間を、司は1人しか知らない。
「あー、俺の祖父、干支神源。俺の、母さんの父さんだよ」
リリから聞いてピンと来て、兎神に探りを入れ、結果として核心に至った事実。
「司さんの、おかあさんのおとうさん……あのひとが」
リリは思い出す様に、うんうんと頷いた。覚えたぞ、忘れないぞ、と言わんばかりに。
リリにとっては細かい事情はどうでもよく、司の祖父というインプットが重要なのだ。
「司様、もしお館様にお会いしたとしても怒らないであげてください」
「わかってる。爺の事だから、恥ずかしくて俺に言えないような理由でもあるんだろ? あの爺の性格はよく知ってるよ」
怒ってはいるものの、何となく納得している司。流石、祖父と孫である。
「血統というものは侮れないものですね。いや、これも司様の運命力の賜物でしょうか」
『兎神、お前たちにも迷惑をかけるな。わしの我が儘に付きあわせて、すまぬ』
『いえ、お館様がお決めになったことですから、私たちに異存はありません。ただ、司様が少しだけ不憫でなりません』
『お前たちが気に病むことはない。恨みは、わしが全て引き受けよう。それに、こやつも一人前の干支神家の人間。何だかんだで、最後には上手く行くじゃろ。最期のお節介も焼いたしな』
『では、もうこちらには戻らないおつもりですか?』
『もう戻らぬ。兎神たちには今まで世話になった。今度は孫の事を、よろしく頼む。あいつを長い間、あっちで1人にさせては寂しいだろうからなぁ』
『わかりました。司様のことは精一杯お支えするように致します』
『後のことは、全て紙に書いて残してある。時期を見て実行せよ。それでは、元気でな』
『お館様も、お元気で』
そして、リリが拙いながらも一生懸命説明した内容は、まさしく朗報だった。
「……どういうことだ? 兎神は、知ってたのか?」
しかし、珍しく、本当に珍しく司の機嫌が悪い。
「もちろんです。私たち3名は計画に協力してますから。ただ、こんな形で露呈するとは思いませんでした」
悪びれることなく、しれっと答える兎神。橙花と蒼花は無表情だ。
「……知らなかったのは、俺だけ、ということか」
さらに眉間に皺が寄る。
「あ、あの……ごめんなさい。何か、司さんが怒るようなことがありましたか?」
司の不機嫌が自分のせいと思ったリリは戦々恐々だった。
「ち、違う違う。リリは悪くないよ。よく頑張ったな。よしよし」
「えへへ~」
リリに八つ当たりしそうになった司は慌ててご機嫌取りに走る。
元々、膝の上に乗せてリリの説明を聞いていたが、全力でモフり始めると翳った顔がすぐに笑顔になった。ちょろいとか思ってはいけない。
「そうか……生きていてくれたか」
「ええ、ええ、よかった。本当によかった」
やや怒れる司と対照的に、ヴォルフとルーヴは2人で頷き合って泣いていた。
リリが視た深緑の子が、生き別れた個体かどうかはヴォルフたちには定かではない。
しかし、リリが共振できたという実績から、限りなくそれに近いのだ。
生死不明だった兄弟が生きている可能性が高い、リリから齎されたこの情報だけでヴォルフたちは感無量だったのだ。
リリの内容をまとめると、要点は2つ。
深緑の子供は、『彼の世界』で親切な人に保護されて生きている可能性が高い。
そして、その子供はヴォルフたちと生き別れたリリの兄である可能性が高い。
「もう1つは、死んだはずの爺が、実は生きているかもしれない、ということだな?」
そう、司が苛立っているのはコレである。
「ここまでバレてしまったら打ち明けてしまいますが、確実に生きておられますね。そう簡単に死ぬような方ではありませんから」
これまたしれっと宣う兎神、そして無表情の2人。
「俺が、葬式で見たアレは、何だったんだ? 死んでたよな?」
「お館様、ご自身ですよ? 少しだけ手の込んだ死んだふりです」
唯一の肉親だった祖父に騙されていた。この事実をどう受け止めていいものか。理由によっては許さない。司の目がそう語っている。
「で、そこまでした理由は?」
「それは、私の口からは申し上げらない契約です。真実をお知りになりたければ、お館様に直接お尋ねください」
兎神がこういうからには相応の理由があってのことだろう。さらに、司を最優先の橙花たちが何も言わないのはそう言う事だ。
「ただ、司様が真実に気づいた時に伝える言葉をお預かりしています。『司よ、もしかして騙されおったか? わしの演技も大したものじゃろう? ドッキリ大成功じゃ!』で、ございます」
「あのくそ爺め……」
恐らく、司を落ち込ませないように努めて配慮した言葉だろう。決して、孫をおちょくっているわけではないはずである。きっと、たぶん。
「じじい? ってどなたなんですか? あのおじいちゃんのことですか?」
リリが伝えた、白いお髭のおじいちゃん。
宗司並みにガタイが良く、拾った古狼の子供を家族として迎え、最果ての地で1人、原始人のような生活を送る変わり者。
話しに聞いた内容と、その外見的、特徴が一致する人間を、司は1人しか知らない。
「あー、俺の祖父、干支神源。俺の、母さんの父さんだよ」
リリから聞いてピンと来て、兎神に探りを入れ、結果として核心に至った事実。
「司さんの、おかあさんのおとうさん……あのひとが」
リリは思い出す様に、うんうんと頷いた。覚えたぞ、忘れないぞ、と言わんばかりに。
リリにとっては細かい事情はどうでもよく、司の祖父というインプットが重要なのだ。
「司様、もしお館様にお会いしたとしても怒らないであげてください」
「わかってる。爺の事だから、恥ずかしくて俺に言えないような理由でもあるんだろ? あの爺の性格はよく知ってるよ」
怒ってはいるものの、何となく納得している司。流石、祖父と孫である。
「血統というものは侮れないものですね。いや、これも司様の運命力の賜物でしょうか」
『兎神、お前たちにも迷惑をかけるな。わしの我が儘に付きあわせて、すまぬ』
『いえ、お館様がお決めになったことですから、私たちに異存はありません。ただ、司様が少しだけ不憫でなりません』
『お前たちが気に病むことはない。恨みは、わしが全て引き受けよう。それに、こやつも一人前の干支神家の人間。何だかんだで、最後には上手く行くじゃろ。最期のお節介も焼いたしな』
『では、もうこちらには戻らないおつもりですか?』
『もう戻らぬ。兎神たちには今まで世話になった。今度は孫の事を、よろしく頼む。あいつを長い間、あっちで1人にさせては寂しいだろうからなぁ』
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『お館様も、お元気で』
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