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第6章 時の揺り籠
6-34 墓標の主
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源は墓の前に立って石を見つめたまま、何も語ろうとしない。
そこには何となく話しかけにくい雰囲気があって、司は話を促すことができないでいた。
そんな無言の時間がしばらく続いたが、
「この墓はな、わしの奥さんのものじゃ」
ぽつりと、溢すような微かな声で源は呟いた。
認めたくない、未だにそんな感情も見え隠れしているような寂しさや悔しさを含んで。
「そうか……俺のおばあちゃんのか」
「そうじゃな。ああ、立派に成長した孫の姿を、一目でも見せてやりたかったなぁ」
司は幼くして源に引き取られたが、その時には既に祖母の姿はなかった。
今となっては少しだけ納得だが、当時は不自然極まりなかった。
何しろ屋敷には写真の1枚もなかったし、誰一人として話題にもしない。痕跡もない。
当時、司は司で自分のことがいっぱいいっぱいだったので、思考の外だったのもある。
「ばあちゃん、源の孫の司だよ。初めまして。今年で18になったけど、爺さんの面影はあるかい? 俺は今の爺さんしか知らないから、若い時がどうだったか知りたいな」
司は墓石の前に跪いて、ゆっくりと話しかけ始めた。
「……そうそう、今日は俺の嫁さん候補の人も一緒に来てるんだぜ。後で紹介するよ。きっかけはアレだったけど、今は俺には勿体ないくらいの良い子だと思ってるんだ。だから、ばあちゃんも喜んでくれよな」
初対面の祖母に、自分の事を丁寧に説明するように。
そんな司の行動を源は何とも言えない表情で見つめていた。
「……笑っちゃう話しだけどさ、ばあちゃんがここにいるって今日初めて知ったからさ。何も準備してないんだ。だから、今度は好きなものでも持ってくるよ。何がいいかを爺さんに聞いてさ」
司は、一通り墓前に報告をして立ち上がると、
「また来る」
再会を約束する挨拶をしてから、振り返ることなく、その場を後にした。
その背中を追う様に、源も司と一緒に家の方へ歩いて行った。
最後に振り返って一言、未だに吹っ切れないダメなわしですまん、と言い残して。
2人が家へ戻ってみれば、帰ってこない司たちの様子を窺っている目が複数。
建物の影から、ちょこんちょこんと覗いている。
下からリリとララ、ヴォルフにルーヴ、舞とオールスター勢ぞろいである。
「あっ!? 戻ってきちゃいました!」
そう言えば、どれくらいの時間が経過したのかわからない。
もしかしたら、随分と長い時間、舞たちを待たせてしまったのかもしれない。
「おかえりなさい」
「ああ、ありがとう」
何があったのかを聞かず、ただ笑顔で迎える。
この場で、この行動が出来る人が、いったいどれだけいるだろうか。
源があれほど伝えるのを躊躇ったのだ、それ相応の言いたくない理由があるはず。
故に、後で聞かせてくださいね、と目で伝えてくる舞は出来た女である。
司の様子を察したのか、いつもなら飛びついてくるリリも足元にすり寄るだけだ。
「リリ、お待たせ。お腹は空いてないか? そろそろご飯にしようか」
司は珍しく控えめなリリを拾い上げる。
時計を確認すればかなり時間が経過している、少し遅いが昼ごはんの頃合いである。
「用事はもういいんですか?」
心配そうにリリが確認してくるので、司は笑顔で頷いた。
その仕草を見て、ヴォルフたちも大丈夫そうだと通常運転に戻る。
司たちの手持ちの備蓄から昼食をとることになった。
幸い、囲炉裏があるので火種に困ることはなく、温かいご飯が用意できる。
「カレーとは懐かしいのぅ。司が大好物じゃったから、昔はしょっちゅう一緒に食べておった。もう食えんと諦めておったが、割と何とかなるもんじゃのぅ」
司たちはレトルトのカレーを、リリたちは特製ドッグフードとナッツを選択。
しかし、育ち盛りたちにはそれだけでは足りないので魚や肉は源から提供された。
カレーは司の大好物なのだが、スパイスが刺激的なのでリリたちには不人気なのである。
初めて嗅ぐ強烈な匂いにララが涙目だった。
その後は、荷物の確認と周辺での食料調達を日が暮れるまで行った。
リリとララが競う様に動いたので大漁だ。
そして、夕食の片付けまで終わってしまえば、後はフリー。まったりした時間である。
司たちは囲炉裏を囲んで今後の事を話し合い、ヴォルフたちは食休みのため一塊の毛玉になった。一家でぬくぬくである。
「司はこちらにどれくらいいるつもりなんじゃ?」
「うーん、そうだなぁ。最大で……あと3日くらいか? 舞はどうだ?」
「私もそれくらいなら大丈夫ですよ」
滞在中は自給自足をするとして、帰りの時間を加味すると、手持ちではそれくらいが妥当な数字であった。
「そうか、では近々に決めることと、司たちがわしに聞きたいことを話し合っておくかの」
「聞きたいことは兎も角として、決めることなんてあるのか?」
司にも舞にも心当たりがないので、2人して首を傾げる。
「わしからは大きな問題が1つだの……できればこの3人だけで話し合いたい」
含みのある発言に益々首を傾げてしまうが、
「さ、今日はもう寝て、明日じゃ明日。あ、舞ちゃんはどこで寝るんじゃ?」
源がさっさとクロージングしてしまったので謎のままであった。
ちなみに、舞は一緒に雑魚寝である。こういう事には慣れているので問題はない。
そこには何となく話しかけにくい雰囲気があって、司は話を促すことができないでいた。
そんな無言の時間がしばらく続いたが、
「この墓はな、わしの奥さんのものじゃ」
ぽつりと、溢すような微かな声で源は呟いた。
認めたくない、未だにそんな感情も見え隠れしているような寂しさや悔しさを含んで。
「そうか……俺のおばあちゃんのか」
「そうじゃな。ああ、立派に成長した孫の姿を、一目でも見せてやりたかったなぁ」
司は幼くして源に引き取られたが、その時には既に祖母の姿はなかった。
今となっては少しだけ納得だが、当時は不自然極まりなかった。
何しろ屋敷には写真の1枚もなかったし、誰一人として話題にもしない。痕跡もない。
当時、司は司で自分のことがいっぱいいっぱいだったので、思考の外だったのもある。
「ばあちゃん、源の孫の司だよ。初めまして。今年で18になったけど、爺さんの面影はあるかい? 俺は今の爺さんしか知らないから、若い時がどうだったか知りたいな」
司は墓石の前に跪いて、ゆっくりと話しかけ始めた。
「……そうそう、今日は俺の嫁さん候補の人も一緒に来てるんだぜ。後で紹介するよ。きっかけはアレだったけど、今は俺には勿体ないくらいの良い子だと思ってるんだ。だから、ばあちゃんも喜んでくれよな」
初対面の祖母に、自分の事を丁寧に説明するように。
そんな司の行動を源は何とも言えない表情で見つめていた。
「……笑っちゃう話しだけどさ、ばあちゃんがここにいるって今日初めて知ったからさ。何も準備してないんだ。だから、今度は好きなものでも持ってくるよ。何がいいかを爺さんに聞いてさ」
司は、一通り墓前に報告をして立ち上がると、
「また来る」
再会を約束する挨拶をしてから、振り返ることなく、その場を後にした。
その背中を追う様に、源も司と一緒に家の方へ歩いて行った。
最後に振り返って一言、未だに吹っ切れないダメなわしですまん、と言い残して。
2人が家へ戻ってみれば、帰ってこない司たちの様子を窺っている目が複数。
建物の影から、ちょこんちょこんと覗いている。
下からリリとララ、ヴォルフにルーヴ、舞とオールスター勢ぞろいである。
「あっ!? 戻ってきちゃいました!」
そう言えば、どれくらいの時間が経過したのかわからない。
もしかしたら、随分と長い時間、舞たちを待たせてしまったのかもしれない。
「おかえりなさい」
「ああ、ありがとう」
何があったのかを聞かず、ただ笑顔で迎える。
この場で、この行動が出来る人が、いったいどれだけいるだろうか。
源があれほど伝えるのを躊躇ったのだ、それ相応の言いたくない理由があるはず。
故に、後で聞かせてくださいね、と目で伝えてくる舞は出来た女である。
司の様子を察したのか、いつもなら飛びついてくるリリも足元にすり寄るだけだ。
「リリ、お待たせ。お腹は空いてないか? そろそろご飯にしようか」
司は珍しく控えめなリリを拾い上げる。
時計を確認すればかなり時間が経過している、少し遅いが昼ごはんの頃合いである。
「用事はもういいんですか?」
心配そうにリリが確認してくるので、司は笑顔で頷いた。
その仕草を見て、ヴォルフたちも大丈夫そうだと通常運転に戻る。
司たちの手持ちの備蓄から昼食をとることになった。
幸い、囲炉裏があるので火種に困ることはなく、温かいご飯が用意できる。
「カレーとは懐かしいのぅ。司が大好物じゃったから、昔はしょっちゅう一緒に食べておった。もう食えんと諦めておったが、割と何とかなるもんじゃのぅ」
司たちはレトルトのカレーを、リリたちは特製ドッグフードとナッツを選択。
しかし、育ち盛りたちにはそれだけでは足りないので魚や肉は源から提供された。
カレーは司の大好物なのだが、スパイスが刺激的なのでリリたちには不人気なのである。
初めて嗅ぐ強烈な匂いにララが涙目だった。
その後は、荷物の確認と周辺での食料調達を日が暮れるまで行った。
リリとララが競う様に動いたので大漁だ。
そして、夕食の片付けまで終わってしまえば、後はフリー。まったりした時間である。
司たちは囲炉裏を囲んで今後の事を話し合い、ヴォルフたちは食休みのため一塊の毛玉になった。一家でぬくぬくである。
「司はこちらにどれくらいいるつもりなんじゃ?」
「うーん、そうだなぁ。最大で……あと3日くらいか? 舞はどうだ?」
「私もそれくらいなら大丈夫ですよ」
滞在中は自給自足をするとして、帰りの時間を加味すると、手持ちではそれくらいが妥当な数字であった。
「そうか、では近々に決めることと、司たちがわしに聞きたいことを話し合っておくかの」
「聞きたいことは兎も角として、決めることなんてあるのか?」
司にも舞にも心当たりがないので、2人して首を傾げる。
「わしからは大きな問題が1つだの……できればこの3人だけで話し合いたい」
含みのある発言に益々首を傾げてしまうが、
「さ、今日はもう寝て、明日じゃ明日。あ、舞ちゃんはどこで寝るんじゃ?」
源がさっさとクロージングしてしまったので謎のままであった。
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