リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

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第6章 時の揺り籠

6-45 司のいない日常

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 あっちの世界に行っていた司がやっと帰ってきた。
 ただ、無事にとは言えない状態で帰ってきたようで、出迎えた橙花たちが錯乱してた。

 司にはお世話になってるし、私も出迎えに向かおう。
 司は、ずっと眠っているみたいだった。話しかけても起きないし、反応もしない。
 その司にくっついてクーシュが寝てる。意味が解らない、どういうこと?

 側にはいつもの舞、リリ、ヴォルフ、ルーヴ、宗司、あとは……あれ? 増えてる?
 舞たちの表情が一様に暗い、出発した時とは別人みたいに。
 それだけで、司の状態が良くないってことがわかった。何があったんだろう?

 見たことない人は源というらしい。
 兎神に司のお母さんのお父さんって紹介された。
 この人もすごく元気がない、きっと司のことが心配なんだと思う。

 その源に付き添っているのが、ララというらしい。
 リリにそっくりだけど、ヴォルフたちの関係者?
 聞いたら生き別れたリリの兄だって、どうりで姿形が似てるわけだよ。そっくりだもん。


 ヴォルフたちに話を聞いた。
 どうやら強敵に遭遇してみんながピンチになったところで、司が囮になってやられちゃったみたい。でも、リーダーがそんなことしていいの?

 そして、司を倒した相手の特徴を聞いて、私は冷や汗が出まくりだった。
 これって第一位に思えるんだけど……私、やばくない?
 私は意図してないけど、関係者が司に危害を与えたわけで、私が兎神たちに報復されるってことないよね? 大丈夫だよね?
 うん、この件は聞かれるまでは知らぬ存ぜぬでいこう。そうしよう。


 動けない司のお世話を橙花がすることになった。
 それはつまり、橙花が担当していた仕事を蒼花や私が補うという事だ。
 面と向かって言ったことはないけど、橙花は超人すぎ。
 やってみて初めてわかった、どれだけの仕事量を1人でやってるのかと。
 あれを私が……無理、ダメ、死んじゃう。
 お願い、司、一日も早く良くなって……私が言える立場じゃないけどさ。


 舞とリリの様子は見ていられなかった。

 前はあれほど喜怒哀楽がはっきりしていたのに、今の舞はまるで人形みたい。
 話しかけても視線が動かないし、促されれば歩くけど、自発して行動することはない。
 ヴォルフが言うには、司があんなになっちゃったことに責任を感じてるって。
 舞はいつも強気だけど、心は繊細だからちょっと心配。

 リリも司の側を離れようとしない。
 司の周りを心配そうにくるくる回って、時折顔をペロペロ舐めて、頭を擦り付けてる。
 そもそも、リリが遠出から帰ってきてリンゴを要求しないなんて異常事態だよ。
 それ程までに司のことが心配なんだね。

 司、君は自分がこれほどみんなから愛されていたってわかっていたかい?
 もし司に何かあれば、みんなが悲しむってわかっていて、こんな無茶をしたのかい?

 私は同じ場所にいたわけじゃないから、詳しい状況はわからないけど、もっと自分自身を大切にしてほしかったな。
 こんな悲しい光景は、2度と見たくないからね。


 宗司は帰ってきてからもずっと難しい顔をしていた。
 数日前にクーシュの母鳥に無理やり拉致されてきたと思ったら、すぐに血相抱えてあっちの世界に旅立って行った。
 今思えば、司たちがトラブルに遭ったから急いで迎えに行ったんだとわかる。

 いつも楽しそうに笑っていた宗司が、今は少しも笑わないのは悲しいよ。
 早く、いつもの元気な宗司に戻ってほしい。


 ヴォルフたちは、私の顔を見て複雑そうな顔をしていた。
 彼ら、ウルの一族はあらゆることに敏感だ。
 恐らく、マリスと名乗った第一位と私が知り合いということに気づいているのだろう。
 だから、ヴォルフには今はまだ言えないけど、いずれ自分でって言っておいた。
 少なくとも、ここにいる間はあなたたちと敵対することはないと。


 宗司が舞と話しているのを聞いてしまった。
 屋敷の部屋のほとんどは防音設備っていうのがあるから音が漏れないようになっている。
 だから、隣の部屋の音が聞こえることはまずありえない。

 だけど、実はドア側だけ、それが少しだけ甘い。
 人間には絶対に聞こえないレベルだけど、集中すると中の音を知ることができるんだ。
 これは私だけじゃなくてヴォルフたちにも出来ると思う。

 内容はよくわからないけど、宗司が教えたナニカがダメだったみたい。
 宗司が使っちゃダメだって言ってたものを、司が使っちゃったのが原因。

 でも、何をどう使ったらあんな状態になるの?
 あれって……だよね?
 あ、まずっ。舞たちが出てくる音が……。

 気配に気づくのが遅れて、実を隠すのが間に合わず舞たちと遭遇した。
 部屋から出てきた舞は元気が戻った顔をしていたけど、鬼気迫っていてちょっと怖い。
 宗司は気落ちしていたけど、少しだけスッキリした表情をしていた。

 今通りかかりましたよ~って体をしてやり過ごしたけど、2人には話を聞いてたことがばれてそう。特に何も言われなかったけど。

 これは益々、舞たちに司がああなった原因が第一位にあるってことを言えなくなった気がするよ……どうしよう?
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