リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

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第3章 干支神はファンタジーな一族を家に迎える

3-1 彼の地は遠く、静かに佇み、いつか訪れる時を待つ①

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 爺さんが死んでもう1か月が経った。

 この1か月、本当に色々あった。今までの俺の人生の中で、最も環境が目まぐるしく変わったと思える1か月だったに違いない。最近やっと落ち着いてゆっくりできるようになったから、この1か月で何があったか少し振り返って整理してみようと思う。
 
 まずは実家で、リリと出会ったことからかな。雨の日に、実家の前に段ボールが置いてあって『捨て犬です。やさしい人、拾ってください』だもんな。あの段ボールを拾った時は、捨てたやつにずいぶん憤ったものだ。しかも、箱の中身のリリは雨ざらしの上に泥まみれで相当弱っていたし、俺が見てもわかるくらいのまだ小さな子供だったからな。俺がたまたま見つけて拾わなかったらどうなっていたことか。そのあとは兎に角、濡れた身体を拭いて暖を取らせて、起きたら飯を食わせて、泥で汚れた身体を洗うために風呂に入れた。野生の生き物なのだから、トイレの躾とか人間との生活に慣れるまでに時間がかかるかなとか思っていたけれど、リリはずいぶん早く俺との生活に順応した。実家での生活も、屋敷での生活にも驚くほど速く慣れて、今やかつての我が家のごとく寛いで過ごしている。まぁ、リリが人間の言葉が理解できて、言葉を話せるのだから、さもありなんな話だ。扱うほうとしては非常に楽で助かっている。俺が忙しくて手が離せない時でも、橙花か蒼花が面倒を見てくれるし、二人にはずいぶん可愛がってもらっているみたいだ。リリも懐いてるしな。

「司さん、司さん、今日も地下のお庭にお散歩に行きましょう。大樹様のご様子を確認しないとです~。あとあと、プラちゃんたちにも本日のご挨拶を~。」

 今日の朝食のメニューは、俺はトーストとコーヒーとサラダとヨーグルト、リリは鶏の胸肉を茹でてほぐしたものと最近お気に入りのリンゴと少しのドッグフード。ドッグフードと言っても橙花が自分で作っているらしく、無添加でかなりいい素材を使っているとのこと。むしろ俺の朝食よりもリリの朝食のほうがお金かかっていそうで、中身を聞くのが怖い。いつもより少し遅めの朝食が終わり、しばらく食休みしたリリがすごく楽しそうに話しかけてきた。これはつまり食後の散歩に連れていけということですかね?わかります。まぁ、リリは賢いから俺が忙しそうな時や、予定が入っている時とかは散歩とかを強請ってこないからな。でも、リリはまだ子供なんだからそんなに周りの空気読んで行動しなくてもいいと思う。いつか、もっと自由にのびのびと生活してくれるようになってくれれば俺はうれしい。子供は自由で元気なのが一番だ、ただしダメなことはダメだとちゃんと教えるけどな。

「わかった、わかった、んじゃ、これから一緒に散歩に行こうか。」

 ちなみに、リリの言う地下のお庭というのは橙花が管理している地下にあるプラントエリアのことで、プラちゃんというのはそのエリアにいるモンスタープラント君たちのことだ。君たち、いつの間にか仲が良くなっているよね。君たちほぼ毎日挨拶したり、会話したりしているみたいだけど、俺にはどうやって木と犬がコミュニケーションをとっているのかが全然わからないよ。それ以前に、俺はいまだにリリが本当に子犬なのか疑問に思っているぞ、うん。だって、こんなに賢くて、人の言葉をしゃべるのがタダの犬なのかって思うじゃないか?そういえば、兎神がリリを初めて見たときになんか言ってたな。

『おや、これはお久しぶりですね。こちらであなたたちに出会うとは思ってもいませんでしたよ。始原より母なる大樹を守りし眷属の一族よ。あなたたちすらこちらに来ているということは、あちらはもうそういう状態なのですね。』

 言っている意味はよくわからなかったけど、それを言っている兎神の表情は明るくはなかったな。話せるようになったら、俺にも事情を話してほしいと思っている。

 爺さんの使っていた部屋の奥にある隠しエレベーターで地下に降りていく。尚、リリにはエレベーターがなんらかのアトラクションのように感じるらしく、特に地下から地上に上がっていって止まった時の一瞬の浮遊感がお気に入りのようだ。よくエレベーターの中で床と一緒になってぴょいんぴょいんと跳ねている。これは非常に子供らしくてよろしい。

 地下のプラントエリアに到着したら手前の更衣室で靴を履き替えて、白衣みたいな上着を羽織る。もう何度も来たから勝手知ったるなんとやらだ。リリは待ちきれずにそのまま素足で進んでいるがな、今着替えているからちょっと待ちなさい。更衣室の奥の自動扉を抜けた先には、人工の日光照明が照らしている広い空間が広がっている。この広い空間では兎神たちが定期的に摂取しているらしい特別な作物のほか最近では屋敷で消費している野菜類なども育てている。自動扉を抜けてプラントエリアに入るなり、リリが我先にと部屋の奥へと進んでいく。その後ろ姿は、心なしか嬉しそうにひょこひょこと、スキップでもして歩いているように見える。きっと友達に会うのが楽しみなのだろう、相手は木だが。

 リリについてそのまま奥に行くと、モンスタープラント君、リリ曰く通称プラちゃんたちが見えてきた。そして3匹のプラちゃんたちが囲むようにしている中央には、リリがどこからか咥えて持ってきたタイジュ様とやらの種が植えられてあるはずだ。つい最近、俺とリリの2人?で植えたばかりだからな。元気に成長しているといいんだが。
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