リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

文字の大きさ
81 / 278
第4章 旅にアクシデントはお約束?

4-8 本当の強さとは何か

しおりを挟む
「司よ。男に生まれたからには強くなければならん。力なき正義はただの蛮勇にすぎん。そして蛮勇とは愚か者のすることだ。時には冒険することも必要かもしれんが、生きて勝ち続けてこそ意味がある。ただし、正義なき力はただの暴力だということを忘れるな」

 唐突に宗司の座学が始まった。しかし、さっきの根性論3点セット+筋肉至上主義よりは遥かに正論である。いつも筋肉至上主義の宗司だが、案外、真面目なことも言えるのだ。

「いいか? むかしむかし、あるところに一人の男がいた。男の家は300年程続く武術の家系で、そこの家の長男として生まれた。当然の如く、跡取りとして幼いころから家の道場で武術の稽古をやらされた。しかし、男は武術の稽古が嫌いだった。どうにも人に手を出すということが苦手だったのだ。稽古で人の肉を打つ感覚、それが手に残って夜魘されもした」

 何やら昔話が始まった。司は驚いているが、とりあえず宗司の話を聞くことにしたようだ。しかし、何やら具体的なことも含まれている気もする。

「嫌々ながらも稽古を続けて数年経ったある日、男に変化が訪れた。男に妹が生まれたのだ。今まで何を目標にしていけばいいかわからなかった男に、この日から目的が生じた。自分は妹を守らなければいけない、と。それからは嫌いだった稽古もほんの少しだけ楽しくなった。相変わらず、人を打つのが苦手なことには変わりはないが」

 宗司は一体何を司に伝えたいのか。

「やがて妹は成長して、男と同じく武術の稽古をしたいと言い出した。男は妹に武術なんてやってほしくなかったが、本人が言い出したことだけに止めることもできなかった。結果として、男は妹に自分が歩んできた経験を一生懸命教えた。妹も男の言うことを素直に聞いて真剣に答えた。日に日に、2人は一歩ずつだが、確実に強くなっていった」

「しかし、ある日、事件が起こった。朝、2人で道場の清掃をしていたところに暴漢がやってきた。暴漢に襲われ、男は妹を守って深手を負った。その後、一命はとりとめたものの、後遺症が残り、下半身が全く動かない身体になった。男は後悔した。何でもっと真剣に稽古に取り組まなかったのかと、何で自分には大切なものを守る力がないのかと。動けない身体になって、今更そんなことを思ったとしても意味はないのだがな」

 宗司は当時の自分のことを思い出したのか、ふっと、自嘲気味に微かに笑った。

「それで宗司さん……その男の人は、その後どうなったんですか?」

 司は何となくだが気づいているのだろう。宗司が話している内容が、余りにもことに。ああ、これは実際に在った話なんだな、と。

「その男はな、愚かにも諦めなかった。一人で考えるよりは二人でと、男の父親も親身になって一緒に考え続けた。どうやったら再び動くようになるのか。どうやったら強くなれるのか。どうやったら大切な人を守れるのか。ただそれだけを考え続けていた。2人で色々な方法を試し、リハビリに励み、そして、ついににたどり着いて……救われた」

 話している宗司の顔に浮かんでいるのは後悔の念と、歓喜。

「幸運にも男にもう一度だけ与えられた機会。それから男は毎日死にもの狂いの日々を過ごした。周りから見れば、男の行動はきっと狂っていると思われただろう。だが、周りに何を言われようが、どう思われようが、男はもう二度と後悔したくなかった。今、自分ができる最高の努力をし、最高の結果を出す。事件の後、男の心の中には、今も昔もただそれだけだ」

「司。お前は、この男のように後悔することにはなるなよ? 誰もが2回目のチャンスを与えられるとは限らない。たまたまの幸運を当てにするな。今、自分ができることの最大限を考えろ。できること、できないことを正しく認識しろ。司がこれからしなければいけないことは、司自身にしかわからない。自分を見つめて答えを考えるんだ」

「この男も1人で問題を解決できたわけではない。困った時や悩める時に、人に頼ったり相談したりすることを忘れるな。お前は一人じゃない。お前には信頼できる人たちがいるはずだ。決して、その人たちの存在を忘れるな。俺は……、いや、これは言うまい。もちろん俺も舞もそのうちの一人だからな? 何でも遠慮なく言うと良い」

「? わかりました。宗司さんありがとうございます。俺も先日死ぬかと思ったばかりですからね。しっかり考えてみます」

 宗司はうんうんと満足そうに頷くと、司の肩をがしっと掴んだ。

「それはそれ、これはこれとして……身体を鍛えることは別だぞ? 人間は体力が資本だからな。さあ、まずは走り込みから行くぞ! 限界まで走って、今の自分を超えろ! 今日の自分とは、さよならバイバイだ! ふははは! ついてこい!」

 宗司に引きずられて道場の外に飛び出だしていく司。
宗司から割といいことを聞いて余韻に浸る司に、平穏の時は訪れるのだろうか。これから地獄のパンプアップトレーニングが待ち受けているとは夢にも思わない司だった。


 一方、道場の外廊下に一人聞き耳を立てて内部を盗聴していたスパイがいた。この行為がいけないこととは知りつつも、宗司と司が話し始めたところでどうしても内容が気になってしまったのだ。

「宗司兄、ごめんなさい……そして、ありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生したら追放された雑用スキルで世界最強になっていた件~無自覚に救国してハーレム王になった元落ちこぼれの俺~

fuwamofu
ファンタジー
冒険者ギルドで「雑用」スキルしか持たなかった青年・カイ。仲間から無能扱いされ、あげく追放された彼は、偶然開花したスキルの真の力で世界の理を揺るがす存在となる。モンスターを従え、王女に慕われ、美少女賢者や女騎士まで惹かれていく。だが彼自身はそれにまるで気付かず、ただ「役に立ちたい」と願うだけ――やがて神々すら震える無自覚最強の伝説が幕を開ける。 追放者、覚醒、ざまぁ、そしてハーレム。読後スカッとする異世界成り上がり譚!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処理中です...