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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-17 不思議な山を登る旅⑤
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司たちが山登りをしている間、クーシュはずっとコアラ状態を維持していた。当然、司はリュックサックを背負っているのでしがみ付ける部分は限られる。どうやら、司のお腹の部分がお気に入りのようだ。しがみ付いた状態でお昼寝までできてしまう。それにしても、ずっとしがみついていて、手は疲れないのだろうか?
休憩時に軽食をとる時も、クーシュの体勢はほとんど変わらない。司の手に乗せたナッツやカップに入った水を器用にくちばしで突いていた。そして、食べるのに満足すると司にぴゅいぴゅいと鳴いて合図を送る。
それを隣でリリが恨めしそうに見ながら干し肉をガジガジしているのは、もはやお約束だった。そして、後からのご機嫌取りが大変そうだな、と心の中でため息を吐く司もだ。
「それにしても凄く懐いてますね……司さんから一瞬も離れようとしません」
舞は、お腹が満たされておねむになったクーシュの頭をモフりながら、ぽつりと呟く。
クーシュは、司の事を一目見た瞬間から、異常というレベルで司に懐いた。まるで鳥類の習性、インプリンティングのような懐き方である。しかし、生まれて間もないわけでもないし、母鳥はちゃんと個体認識している。それにペンギンのような外見のクーシュと、人間の司は全くと言っていいほどに生物として似ていない。男という選択肢でいいならば、宗司に反応してもいいはずなのに、そちらには興味を示さない。クーシュが何を基準にして司を親と勘違いしているのか、3人には皆目見当がつかないままであった。
「まぁ、それはコイツを巣に送り届けさえすればわかるんじゃないか? 私たちは生物学者じゃないからな、今は情報が少なすぎて考えても答えがわからん。問題なのは親鳥にどうやって返すかだ。下手をすると襲われるのは私たちだからな」
3人はリリの提起した父親問題を棚上げして、クーシュをどうやって母鳥に返すかを考えながら山道を山頂へ向かって登っていった。
登り始めて10時間、それまで順調に推移してきた登山計画も、そろそろ辺りが薄暗くなってきて1日目が終わるというタイミングで天候に変化が訪れた。しかも、3人と2匹にとっては最悪の状況、雷の気配がする。
「これは不味い。急いで避難できる場所を探さないと……山の天気は変わりやすいと言っても晴天から急に雷とかおかしいだろう!」
今更、文句を言っても始まらない。刻一刻と天候が崩れてきて、稲光を纏った暗雲が姿を現した。あっという間に小さな雫が空から舞い降りる。雨に濡れて、落雷の危険が伴う状態に晒されるのは一刻も早く解消しないと致命的であった。
「司さん! みなさん! こっちです! ここに洞窟があります!」
危機一髪、リリが天性の勘で洞窟を探し当てると、3人と2匹は一目散に滑り込む。それから5分もしないうちに、本格的に雨が降り始めて、稲光が見え隠れする。
「風が通ってないな、奥は行き止まりか? 一応、安全かどうかだけでも確認しておくか。司たちは入り口付近で休んでいてくれ。リリちゃん、悪いが一緒についてきてくれ」
「はい!」
洞窟に入ると、宗司はすぐにLEDランタンを持ってリリと奥を調べに向かった。
「それにしても変ですよね、さっきまであんなに晴れていたのに、こんなに急に雷が鳴るなんて……」
急激な天気の変化に、その場に残った2人も不安そうな表情を浮かべたが、司にくっついている1匹だけは様子が違った。雷がゴロゴロと鳴るたびにぴゅいぴゅいと楽しそうに声をあげる。この山に住んでいるのでこれくらいは慣れっこなのか、それとも何かのアトラクションと勘違いしているのか。
「そうだな、今日はここで夜明かしする可能性が高い。舞、身体は大丈夫か? 寒くないか? 宗司さんが戻ってからじゃないと火は使えないから、身体が濡れていたら拭いておいたほうがいいぞ」
奥が行き止まりだった場合、洞窟の構造によっては火を焚くと二酸化炭素が蓄積して呼吸困難になる可能性があるため、宗司の調査待ちをしないと怖くて火が使えない。
「大丈夫です、これくらいなら、いつもの事ですから問題ありません。それよりも司さんこそ疲れていませんか? ずっとクーちゃんを抱えているわけですし……重くないですか?」
クーシュはその見た目よりもかなり重いのだが、普段から体重が100キロほどの宗司を担いで鍛練している司にとって、ほとんど重さがあってないようなものだった。が、舞が重いと言った辺りでクーシュが抗議の声をあげ、ぺしぺしと司のお腹を叩く。まるで自分はそんなに重くないと言いたげだ。姿形は違えども、乙女なのである。
「ご、ごめんなさい。クーちゃん、そんなに怒らないで……」
鳥類のクーシュに説教をされる人間の舞という変な構図が出来上がったところで、宗司とリリが洞窟の調査から戻ってきた。
「これは、何がどうなっているんだ……?」
宗司の疑問に司が苦笑で答えた。
休憩時に軽食をとる時も、クーシュの体勢はほとんど変わらない。司の手に乗せたナッツやカップに入った水を器用にくちばしで突いていた。そして、食べるのに満足すると司にぴゅいぴゅいと鳴いて合図を送る。
それを隣でリリが恨めしそうに見ながら干し肉をガジガジしているのは、もはやお約束だった。そして、後からのご機嫌取りが大変そうだな、と心の中でため息を吐く司もだ。
「それにしても凄く懐いてますね……司さんから一瞬も離れようとしません」
舞は、お腹が満たされておねむになったクーシュの頭をモフりながら、ぽつりと呟く。
クーシュは、司の事を一目見た瞬間から、異常というレベルで司に懐いた。まるで鳥類の習性、インプリンティングのような懐き方である。しかし、生まれて間もないわけでもないし、母鳥はちゃんと個体認識している。それにペンギンのような外見のクーシュと、人間の司は全くと言っていいほどに生物として似ていない。男という選択肢でいいならば、宗司に反応してもいいはずなのに、そちらには興味を示さない。クーシュが何を基準にして司を親と勘違いしているのか、3人には皆目見当がつかないままであった。
「まぁ、それはコイツを巣に送り届けさえすればわかるんじゃないか? 私たちは生物学者じゃないからな、今は情報が少なすぎて考えても答えがわからん。問題なのは親鳥にどうやって返すかだ。下手をすると襲われるのは私たちだからな」
3人はリリの提起した父親問題を棚上げして、クーシュをどうやって母鳥に返すかを考えながら山道を山頂へ向かって登っていった。
登り始めて10時間、それまで順調に推移してきた登山計画も、そろそろ辺りが薄暗くなってきて1日目が終わるというタイミングで天候に変化が訪れた。しかも、3人と2匹にとっては最悪の状況、雷の気配がする。
「これは不味い。急いで避難できる場所を探さないと……山の天気は変わりやすいと言っても晴天から急に雷とかおかしいだろう!」
今更、文句を言っても始まらない。刻一刻と天候が崩れてきて、稲光を纏った暗雲が姿を現した。あっという間に小さな雫が空から舞い降りる。雨に濡れて、落雷の危険が伴う状態に晒されるのは一刻も早く解消しないと致命的であった。
「司さん! みなさん! こっちです! ここに洞窟があります!」
危機一髪、リリが天性の勘で洞窟を探し当てると、3人と2匹は一目散に滑り込む。それから5分もしないうちに、本格的に雨が降り始めて、稲光が見え隠れする。
「風が通ってないな、奥は行き止まりか? 一応、安全かどうかだけでも確認しておくか。司たちは入り口付近で休んでいてくれ。リリちゃん、悪いが一緒についてきてくれ」
「はい!」
洞窟に入ると、宗司はすぐにLEDランタンを持ってリリと奥を調べに向かった。
「それにしても変ですよね、さっきまであんなに晴れていたのに、こんなに急に雷が鳴るなんて……」
急激な天気の変化に、その場に残った2人も不安そうな表情を浮かべたが、司にくっついている1匹だけは様子が違った。雷がゴロゴロと鳴るたびにぴゅいぴゅいと楽しそうに声をあげる。この山に住んでいるのでこれくらいは慣れっこなのか、それとも何かのアトラクションと勘違いしているのか。
「そうだな、今日はここで夜明かしする可能性が高い。舞、身体は大丈夫か? 寒くないか? 宗司さんが戻ってからじゃないと火は使えないから、身体が濡れていたら拭いておいたほうがいいぞ」
奥が行き止まりだった場合、洞窟の構造によっては火を焚くと二酸化炭素が蓄積して呼吸困難になる可能性があるため、宗司の調査待ちをしないと怖くて火が使えない。
「大丈夫です、これくらいなら、いつもの事ですから問題ありません。それよりも司さんこそ疲れていませんか? ずっとクーちゃんを抱えているわけですし……重くないですか?」
クーシュはその見た目よりもかなり重いのだが、普段から体重が100キロほどの宗司を担いで鍛練している司にとって、ほとんど重さがあってないようなものだった。が、舞が重いと言った辺りでクーシュが抗議の声をあげ、ぺしぺしと司のお腹を叩く。まるで自分はそんなに重くないと言いたげだ。姿形は違えども、乙女なのである。
「ご、ごめんなさい。クーちゃん、そんなに怒らないで……」
鳥類のクーシュに説教をされる人間の舞という変な構図が出来上がったところで、宗司とリリが洞窟の調査から戻ってきた。
「これは、何がどうなっているんだ……?」
宗司の疑問に司が苦笑で答えた。
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