リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

文字の大きさ
189 / 278
第5章 地球と彼の地を結ぶ門

5-51 友人のお願いと不可思議現象、どちらも不可解

しおりを挟む
 澪からの突然の連絡から翌日。

 予定になかった来客があったため、司は干支神家の応接室に座っていた。橙花がお茶と茶請けを出して一礼して退出していく。

「急にお伺いしてすいません~。あ、ありがとうございます~」

「司さん、久しぶり~、元気だった? まぁ、舞から少し聞いてたから元気なのは知ってたんだけどね! でも一応聞くのが社交辞令だよね!」

「うまうま」

 司の前には例の3人がいる。この光景に何かデジャヴを感じるのは気のせいだろうか。昨日の電話といい、舞がいないことといい、嫌な予感しかしない。

「で、今度はどんな用なんだ? 俺も暇じゃないから、要件だけ教えてくれると助かるんだけどな」

 実際、今日は不在にしていた2週間の間に溜まった雑務とリリたちの相手、そして昨日突如として発生したプラントエリアの異変に対応しないといけなかった。もはや、一分一秒が惜しい状況になっているのだ。

「まぁまぁ、そうおっしゃらずに~。女の子のお願いは、ちゃんと聞いてあげないとモテませんよ~」

「またまた~、そんなこと言っちゃって! 本当は時間あるんでしょ?」

「あ、これ、おかわりある? もぐもぐ」

 言いたい放題である。司の立場としては、舞のお願いなら優先事項として聞くことも吝かではない。だが、舞の友達からの『怪しいお願い』に対しては、かなり聞きたくないというのが本音である。面と向かって言う事はないが。更に、澪には前回の旅行でお世話になっていることから無下にすることも憚られる。

「前置きはいいから、本題に入ってくれ。今日は本当に忙しいんだよ……」

「あらら~? これは本当に忙しそうですね~。では、さくっとお話しますね~」

 若干、嫌な顔はするものの、律儀に話は聞こうとする司。忙しいにもかかわらず、門前払いしないところが、司の人の良さの表れだろう。

 ちなみに、3人はこの後、きっちり2時間居座って話し込み、おかわりを要求し、全てを平らげてから帰っていった。発言内容とは裏腹に、遠慮という文字は一切ないのだった。



 あの3人のお願いも大概だったが、司が現在進行形で抱える問題も、またやっかいだった。今、司の目の前には青々と生い茂る木々が映っている。ちなみに、ここはプラントエリアである。

「1日で、どうしたら、こうなるんだよ……」

 しかも、現在進行形で絶賛繁茂中である。訳が分からない。

「司、果樹の育成が確認できた。大樹様の近くを除いて、奥を森に、手前に果樹と木の実の樹を育てようと思うのだが、良いだろうか?」

 ヴォルフが頭の上に小竜を乗せて嬉しそうに司に報告してくる。ウルの民は森の民、彼らは森の在り方にも非常に造詣が深かった。学問ではなく本能や勘のようなものだったが。

 事の始まりは橙花が彼の世界産の植物を育成しようとしていたことからだが、それまで芽すら出していなかった植物たちが一斉に発芽し、あっという間に成長した結果がこれである。昨日まで橙花が色々手を尽くしていたのだが、土が合わないのか、育成条件が合わないのか、状況は芳しくなかった。

 では、どうしてこうなったのか? 主犯は小竜である。

 橙花が試験的に作った畑。試行錯誤しても成果がでていないそれを見た小竜は、何を考えたか地面に向かって魔素の水をかけ始めた。こちらに来る前に大量に飲み込んだ魔素水を吐き出す姿は、酔っ払い親父がリバースするようなビジュアルでとても見れたものではないのだが、効果は抜群だった。

 魔素水をかけられた種たちは、一斉に発芽。文字通りメキメキと成長して、あっという間に成木まで巨大化。あの硬いヤシの実を複数実らせた。それを見ていたヴォルフたちはすぐに橙花を呼び、情報を共有。どこで何を育てるかを審議して、プラントエリアの大規模農園化計画がスタートした。

 本来の橙花であれば急速な環境の変化に躊躇しただろう。だが、今回は事情が違う。彼の世界の実りが得られるということは、魔素補給が継続的に見込めるという事なのだ。それは、司たちを危険に晒す可能性が減るという事。橙花にとっては最優先事項であった。

 ウルの民が総出で強靭な脚を持って地面の土を掘り起こし、種を植えていく。土をかぶせられた種たちに、小竜が少量の魔素水を注いでいく。今度は、発芽はしたが、急激に成長しなかった。かける魔素水を調整した結果である。これは発芽した状態から、魔素水なしでも成長するかを確認するためでもある。

「まぁ、ヴォルフたちが嬉しそうだから、このままでいいか」

 相談に来たヴォルフと小竜に許可を出し、珍しくウキウキした様子で戻っていくヴォルフの背中を見送った司は、目の前に広がる問題を見ない振りすることにした。尤も、これのおかげで司の仕事がさらに増えるのだが、今は知らないほうがいいのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...