リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

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第5章 地球と彼の地を結ぶ門

5-52 とある古狼の変化

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 これは、楽しい。

 今まで、自分で何かを作り出すという行為は考えたこともなかった。これまでの私は大樹様を守り、森で生き、森で朽ちていくものだと思っていた。こんな生き方が、私たちに出来るとは思ってもみなかった。狼生とは、いつ、どこで、どう変化するかわからないものだな。


 司に出会ってから、私たちウルの民の生き方は変わった。

 枯れてしまった大樹様を助けてもらったことは感謝してもしきれない。そして、大樹様の元に一族が集まれる安住の地を作ってくれた。この幸運稀なる導きに感謝を。ただ一つ、問題があるとすれば、食料供給も司に頼っていることか、今は仕方がないとしても、いずれは自立しなければ。そこに至って初めて司たちに恩返しが出来るというものだ。

 今、私たちが暮らしているのは司の家で、ぷらんとえりあ? と呼ばれている場所。この地下とは思えないくらい広大な空間を我々は新しい住処とした。ここには若い大樹様が育っていて、それを見守るのが役目だ。とは言っても、以前のように魔獣が攻めてくる可能性は限りなく低い、こんなにも穏やかな日々が過ごせるとは……。


 司が変な生き物を連れてきた。

 丸い。兎に角、丸い。初めの印象は、その一言に尽きる。丸くてフワフワした身体をしているが生き物のようだ。意思疎通もできる。

 司から話を聞いたら、こちらの世界で保護はしたが、どうやら故郷は別の模様。それであれば、私たちと同じ。同郷かはわからないが仲良くしようと思う。とは言っても、普段は司の部屋に住んでいるらしいので会うのは稀だ。娘とは仲が良いらしく、時々リンゴについて語り合っていた。主食は木の実と果実らしい。食の趣味が合うのだろう。


 先日、狩りを始めた。

 戦果はそこそこと言ったところ。祠から1日以内で行ける範囲だと、イマイチな獲物しかいないのが悩みどころか。数は多いのだが……近くにいるトカゲは不味くて食えないのが難点だ。司たちからもらう食べ物は美味いものが多い、というか全てが美味だ。特に、娘が大好きなリンゴなる果実は素晴らしかった。この味に慣れてしまってからは、より一層ひどい味に思えてしまう。贅沢な悩みかもしれない。


 群れに、新たな番ができた。

 喜ばしい。今は僅か7頭だが、この先、子ができていけば、次世代に託すこともできる。それに、娘に同世代の友ができるかもしれない。大樹様を守るためには、一族の数を増やす必要があるからな。外敵が圧倒的に少ないこの地ならば、安心して子育てに専念できるというものだ。番のルーヴも、新たに番になった一族の女たちの世話に熱心だ。遠くない将来、子が生まれるかもしれないと思うと何とも言えない高揚感に包まれる。私も頑張らねば。


 新たな仲間を迎えた。

 新入りは飛べない奇妙な鳥たちと、小さな竜だった。

 鳥は親鳥と雛鳥。雛鳥のうち1匹は司に興味を持っているようで、娘と一緒に司の取り合いをしているようだ。迷惑をかけなければいいのだが……しかし、ふふふ、あのような楽しそうな娘を見たのは初めてか。種族は違えど、まるで姉妹のようだ。これからも仲良くしてもらいたい。

 小さい竜は……よくわからない。ほとんど何もしゃべらないからだ。私は、娘の様に彼と意思疎通ができるわけではないので、小竜が何を考えているかはわからない。ただ、雰囲気とか仕草とかそういったもので、何とかやり取りができているというところか。不思議な生き物だと思う。


 新しい仕事ができた。

 最初は橙花の手伝いで畑を作っていたくらいか。彼の世界の植物を、ここで育成することができるのか、試験的に実施しているらしい。結果は芳しくない。何回か試しているが、いずれも芽がでないのだ。大樹様が育たれているので大地に問題があるわけではないと思うが、何が足りないのかがわからない。しかし、こんなことで諦めるわけにはいかない。これは司の必要なものらしいから。種が足りなければ、私たちが取ってこなければ。


 彼の世界の植物の種が、発芽した。

 足りなかったのは水? いや、普通の水ではないらしい。橙花は魔素水と言っていた。それをもたらしたのは小竜だった。小竜が魔素水を畑に注いだ途端に、一斉に芽吹いたのだ。

 それからというもの、小竜を頭に乗せて移動するのが日課になった。小竜は水場を好むせいか陸上の移動は苦手そうだった。前に娘が頭に乗せているのを見ていたので、試しに屈んで頭を差し出したら登ってきた。

 その後は驚きの連続だった。橙花とどこで何を育てるかを相談して、土を掘り、種を植え、小竜に魔素水を注いでもらい育てる。司の話を聞くと、ボンサイという小さな世界を作る趣味があるそうだが、それに近いのかもしれない。こんな喜びがあったとは……。


 この調子で上手く木々が育っていけば、もしかしたらウルの森のような豊かな地ができるかもしれない。この環境造りは始まったばかりだが、大樹様、司たちの為にも地道に成果を出していきたいものだ。ふふふ……今日も頑張ろう。
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