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第6章 時の揺り籠
6-5 干支神家居候たちの近況
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せっせと元気に飛び回る働き蜂たちを見ていると、ミツバチは無事に地下に根付いてくれたことを実感できる。
このミツバチは橙花が干支神家の庭園で途中まで飼育したものをプラントエリアに移設したもの。急激に環境を変えたことによるストレスで死んでしまう可能性もあっただけに、ほっとする瞬間だ。しかし、まだ1世代目。新しい女王蜂が生まれて、巣別れするまでは要観察であることは変わらない。
「おー、おおー、おおー? おー?」
リリはミツバチを初めて見るようで、飛び回る働き蜂たちをくるくると回りながら視線で追いかけていた。リリを始めとして、ヴォルフたちウルの民やプラちゃんたちにもミツバチは無害なので手だししないように司が説明した。尤も、全員から食べるならお肉のほうが良いと言われたのだが。狼は兎も角として、肉を主食とする木とは謎である。
現在プラントエリアは大きく分けて、手前側が居住エリア、中央が大樹エリア、奥側が自然エリアとなっている。
入口を入って右手前に、ヴォルフたちの住処に改造したコンテナハウスが煉瓦の畳の上に並ぶ。コンテナハウスは開けっ放しになっていて自由に出入りできるが、それぞれ誰が使うかはヴォルフが決めた。左手前は空き地になっているが、新しい命が生まれた際にコンテナハウスを拡張することになるかもしれない。
中央には大樹が根付いている。その周りをモンスタープラント3体とミニプラントたちが自由に歩き回る場所だ。彼らは大樹のことを王様認定しているようで、常に近くに侍っているのが見られる。でも、食事の時だけは入口方面に移動してくるようだ。
左奥にマッドチャリオットの番が過ごす森、ここには『彼の世界』産の植物たちが育っている。以前小竜がやらかした場所だ。右奥にヴォルフたちの農園、細かく栽培条件を設定してあるらしく、司は覚えるのを諦めた。彼らは日々日記をつけ、自由に栽培に勤しんでいる。奥中央に養蜂所を設置した。巣箱から飛び立つ働き蜂たちは、蜜を求めて左奥の森に真っすぐ吸い込まれて行く。
少ないながらも自然の営みによるサイクルが出来つつあり、プラントエリアは今日も大盛況であった。
屋敷のほうでは、今日も橙花がカノコを扱いている風景が見られる。若干、カノコに泣きが入っている気がするが気のせいだろう。橙花が己の限界を超えろ云々と言って、洗脳しようとしている。この調子で1か月も訓練すれば、3人目の立派なメイドになりそうだ。途中で折れなければ。司がどこまでカノコを使う気なのかが不明ではある。
ハムダマたちは司お手製の試作ハウス1号を気に入ったようだった。相変わらず、母ハムダマは人前には出てこないが、父ハムダマは毎日食べ物を受け取りに出てくるため、近況報告には事欠かない。栄養も十分で順調に過ごしているとのこと。食事のリクエストでドライフルーツを所望らしいので、何日かに1回のペースで追加すると司が約束をしていた。
改善点としては、やはりと言っては何だが、懸念していた気候の問題だった。現在は11月である。徐々に肌寒い日が増え、もうすぐ本格的な冬になるのだ。ハムダマたちも感覚でそれがわかるらしい。ハウスの断熱処理または暖房の設置が急がれる。元々、冬は巣で身を寄せ合ってじっとしているらしいのだが、屋敷内は外と比べれば段違いなので、父と子は普通に活動するようだ。
ハムダマたちが引っ越しして空いたはずの司の部屋だが、新しくクーシュの家族が居座ることになった。ハムダマたちが使っていたペット用のクッションベッドには、見た目が皇帝ペンギンのような母鳥が仰向けで寝ている。こちらは寒さには強いようだ。お腹の袋の中にはクーシュの姉妹2匹がいるが、収まりきらずに頭がはみ出ている。ちなみにクーシュだけは司のベッドを我が物顔で使っている。睡眠時間は1日12時間、良く寝る子である。
以前までプラントエリアで過ごしていたが、屋敷内を散策するうちに、司の部屋に住むことを決めたようだ。この部屋は日当たりが良く、日向ぼっこには最適である。彼女たちフェルス族は自然のエネルギーを好む傾向があるので、ここで過ごすことは必然だったのかもしれない。外の庭園に散歩に出かけるときは蒼花に付き添いを頼んでいるようだ。
居候たちの環境適応能力には驚かされるばかりだが、各自が自分たちの過ごしやすい条件を見つけて暮らし始めているのは良い傾向である。
ただ、このままでは、いずれ大変なことになるような一抹の不安があるのも事実。
現在の干支神家は、屋敷内を子狼と皇帝ペンギンモドキの親子が自由に歩き回り、場合によっては親狼も闊歩する。来客と不意に遭遇した場合は……ペットで押し通すようだ。
地下に至っては、歩く肉食樹と不思議な形状の草食動物と怪しい植物の森。人様には絶対に見せられない状況になりつつある。ここは完全にタブーで知っているのは舞と宗司だけ。
人類未開の、新種の未知生物が跋扈する魔境は案外身近にあったようだ。
このミツバチは橙花が干支神家の庭園で途中まで飼育したものをプラントエリアに移設したもの。急激に環境を変えたことによるストレスで死んでしまう可能性もあっただけに、ほっとする瞬間だ。しかし、まだ1世代目。新しい女王蜂が生まれて、巣別れするまでは要観察であることは変わらない。
「おー、おおー、おおー? おー?」
リリはミツバチを初めて見るようで、飛び回る働き蜂たちをくるくると回りながら視線で追いかけていた。リリを始めとして、ヴォルフたちウルの民やプラちゃんたちにもミツバチは無害なので手だししないように司が説明した。尤も、全員から食べるならお肉のほうが良いと言われたのだが。狼は兎も角として、肉を主食とする木とは謎である。
現在プラントエリアは大きく分けて、手前側が居住エリア、中央が大樹エリア、奥側が自然エリアとなっている。
入口を入って右手前に、ヴォルフたちの住処に改造したコンテナハウスが煉瓦の畳の上に並ぶ。コンテナハウスは開けっ放しになっていて自由に出入りできるが、それぞれ誰が使うかはヴォルフが決めた。左手前は空き地になっているが、新しい命が生まれた際にコンテナハウスを拡張することになるかもしれない。
中央には大樹が根付いている。その周りをモンスタープラント3体とミニプラントたちが自由に歩き回る場所だ。彼らは大樹のことを王様認定しているようで、常に近くに侍っているのが見られる。でも、食事の時だけは入口方面に移動してくるようだ。
左奥にマッドチャリオットの番が過ごす森、ここには『彼の世界』産の植物たちが育っている。以前小竜がやらかした場所だ。右奥にヴォルフたちの農園、細かく栽培条件を設定してあるらしく、司は覚えるのを諦めた。彼らは日々日記をつけ、自由に栽培に勤しんでいる。奥中央に養蜂所を設置した。巣箱から飛び立つ働き蜂たちは、蜜を求めて左奥の森に真っすぐ吸い込まれて行く。
少ないながらも自然の営みによるサイクルが出来つつあり、プラントエリアは今日も大盛況であった。
屋敷のほうでは、今日も橙花がカノコを扱いている風景が見られる。若干、カノコに泣きが入っている気がするが気のせいだろう。橙花が己の限界を超えろ云々と言って、洗脳しようとしている。この調子で1か月も訓練すれば、3人目の立派なメイドになりそうだ。途中で折れなければ。司がどこまでカノコを使う気なのかが不明ではある。
ハムダマたちは司お手製の試作ハウス1号を気に入ったようだった。相変わらず、母ハムダマは人前には出てこないが、父ハムダマは毎日食べ物を受け取りに出てくるため、近況報告には事欠かない。栄養も十分で順調に過ごしているとのこと。食事のリクエストでドライフルーツを所望らしいので、何日かに1回のペースで追加すると司が約束をしていた。
改善点としては、やはりと言っては何だが、懸念していた気候の問題だった。現在は11月である。徐々に肌寒い日が増え、もうすぐ本格的な冬になるのだ。ハムダマたちも感覚でそれがわかるらしい。ハウスの断熱処理または暖房の設置が急がれる。元々、冬は巣で身を寄せ合ってじっとしているらしいのだが、屋敷内は外と比べれば段違いなので、父と子は普通に活動するようだ。
ハムダマたちが引っ越しして空いたはずの司の部屋だが、新しくクーシュの家族が居座ることになった。ハムダマたちが使っていたペット用のクッションベッドには、見た目が皇帝ペンギンのような母鳥が仰向けで寝ている。こちらは寒さには強いようだ。お腹の袋の中にはクーシュの姉妹2匹がいるが、収まりきらずに頭がはみ出ている。ちなみにクーシュだけは司のベッドを我が物顔で使っている。睡眠時間は1日12時間、良く寝る子である。
以前までプラントエリアで過ごしていたが、屋敷内を散策するうちに、司の部屋に住むことを決めたようだ。この部屋は日当たりが良く、日向ぼっこには最適である。彼女たちフェルス族は自然のエネルギーを好む傾向があるので、ここで過ごすことは必然だったのかもしれない。外の庭園に散歩に出かけるときは蒼花に付き添いを頼んでいるようだ。
居候たちの環境適応能力には驚かされるばかりだが、各自が自分たちの過ごしやすい条件を見つけて暮らし始めているのは良い傾向である。
ただ、このままでは、いずれ大変なことになるような一抹の不安があるのも事実。
現在の干支神家は、屋敷内を子狼と皇帝ペンギンモドキの親子が自由に歩き回り、場合によっては親狼も闊歩する。来客と不意に遭遇した場合は……ペットで押し通すようだ。
地下に至っては、歩く肉食樹と不思議な形状の草食動物と怪しい植物の森。人様には絶対に見せられない状況になりつつある。ここは完全にタブーで知っているのは舞と宗司だけ。
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