天寿の全うが目標です

もやし

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いい具合に沸かされていた風呂でサッパリした後、傷薬を塗りつけると、いつも通りに薬はよく効いて痛みはほぼ無くなった。

 食卓に行けば、既に配膳は終えられており、両親はビスカが来るのを待っていたようだった。
深く理由を話すつもりはなく、ただひっそりと家を後にして悲しみに暮れる筈であったのに、気付けばビスカは、暖かな母親特製シチューを食べる団欒の席での父親による尋問ショーによって、簡単ペロリと自白させられていた。まぁ、大声で家出宣言しておいて“ひっそり”が出来るかは、この際置いておく。
 とりあえず、父親にはハサミを仕舞って欲しいと思うのは、ほんのささやかな願いである筈だ。

「あらビスカ、4回目なの?ビスカは死ぬ天才なのかしらねぇ。」
「なるほど、結婚相手云々ではないというのは本当のようですね。」

 のほほんと言う言葉がぴったりな言い方で言い放ったのが、淡い茶色のふわふわ髪を短く遊ばせている、今年50歳になる母セチ。因みに父はネモといい、歳は母親より上のはずで、薄い水色掛かった髪を短く刈り上げている。
 年齢相応には見えないほどの若々しさを保っており、父親に至ってはもはや20代にしか見えないのが驚きなのだ。

 そんな事は置いておいて、母親はもっと歯に絹着せるべきであるし、父親は私の将来の旦那予定にもう少し優しくあるべきだと思う。まずハサミは仕舞おうよ。どうして持ってるの。シャキシャキしない。

「信じて貰えてるのは嬉しいんだけど、自分だけなら兎も角、災害とか起きちゃうと母さん達も巻き込んでしまうかもしれないのは嫌なの。」

 ふむ、と考え込んでしまった父親を他所に、母親はどこまでも穏やかであった。
何度も喉に詰まらせた教訓を活かし、シチューに千切ったパンを浸してから口に運ぶ。

「確かにネモ一人で廻る者二人を守るのは荷が重いかしら、、、。でも、私でさえ2回目なのに、ビスカはもしかして私よりもおばあちゃんだったりするのかしら。」

 ふふふと笑いながら言われた言葉は、勿論ふふふと流せるものではない。

「母さんも廻る者だったの!?」
思わず口に運びかけていたシチューを吹いた。熱々だったからじゃない。
「そうよ?こうして同じ境遇の人に会うのは二度目ね」

 第一こんなに運の悪い人間そうそういないわよーと、カラカラ笑いながら言われれば、まぁ確かにとしか言いようがない。
過去の母親を思えば、それでも最近はマシになったように思えるのが不思議なものだ。
 また、父親の人外染みた動きは庇護者だったからかと納得もした。

「君は僕をなんだと思っているんです?普通の人間の身で、出たり消えたり飛んだり出来るわけがないでしょう。」
「じゃあ、父さんは人間じゃないってこと?」
「一応森の民と此方では言われるところの出身ですよ」
「では私は半分森の民!?」

 森の民と言えば、世界を廻る霊脈から霊力を取り出して操る技に長けた長命種である、とされる。
 一説では千年を超える寿命を持つとも言われるが、人と関わるのはほぼなく、実際どうなのかはあまり知られていない。
父親の薄い水色がかった髪は常々珍しいとは思っていたが、生ける天然記念物的な存在であったとは驚きである。
そして半分とはいえその血が流れているかと思えば、なんとなく沸き立つものがあるのも無理はない、が。

「貴女は完全に人間の筈ですよ。拾ったのですから。」
「こんな所で衝撃的事実発覚だと!!??うっそぉ!!!確かに似てるところは五体満足くらいしかない!!育ててくれてありがとう!!!」

 もう今日はお腹いっぱいだ。情報過多である。家を出なくてはならないが、消化不良過ぎる。
先程から、喉に詰まりかけたパンをなんとかお茶で飲み込んでいた母親が漸く嚥下を終えて、ふぅと息をついた。
喋りながら介助していた父親は流石だ。

「ビスカ、血の繋がりがあろうがなかろうが、子供を愛しむのは親の特権よ。子供を愛する幸せをくれた娘を放り出す訳ないでしょう?」

 相変わらずふわふわと微笑みながら言う母親に、思わず視界が揺らいだ。
こういう優しすぎる親だからこそ、自分は離れねばならないのだ。
まして廻る者が二人も同じ場所に居れば、より危険は増し増してくるに違いない。
「ありがとう母さん・・・、でも庇護者も探したいから家は出るつもりよ」
なんとか説得すべく切り出した時、父親がお茶を啜りつつ口を開いた。


「そもそも、庇護者がずっと居ないのが腑に落ちませんね」



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