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第十話
続・毒味役、果たして俺の運命は……?
コンコンコン、とドアをノックする音。「入りなさい」と応じるリアン。やっぱりコイツ、偉そうだ。
「失礼します。朝食をお持ちしました」
静かにドアが開き、可愛らしい女の子の声がする。ホントだ、女の子も居るんだ。ワゴンを押して入ってきた女の子が一人、その後にもう一人女の子が。一人は茶色い髪、もう一人は淡い金髪の子だ。二人ともきっちりとアップスタイルにして白いフリルの帽子を被り、黒のワンピースにフリフリのついた白いエプロン姿だ。ほら、誰もが想像する典型的なメイド服だね。二人ともなかなかに可愛い。使用人も顔で選ぶのかな。
「失礼します」
白いワゴンに乗っていたのは大きな銀色の鍋だ。茶髪の女の子は一声かけて蓋を開け、銀色のお玉杓子で琥珀色の液体を掬い、白いカップに注いだ。それを丁寧に俺の前に「コンソメスープでございます」と置く。次に淡い金髪の子がミルク入ったグラスを、茶髪の子が白い皿に三つの焼き立クロワッサンを……という感じで二人が手分けしていく感じだ。黄金色のスクランブルエッグ、白身魚のムニエル。ベビーリーフのサラダ、桃とグレープフルーツのコンポートが用意された。美味そうー!
洋食メニューだ。どれもこれも最高の素材で極上に出来ていそうだ。女の子たちは俺たち一人一人に丁寧に頭を下げ、静かに部屋を出て行った。
「さぁ、冷めない内に召しあがれ。殿下に忠誠を誓えるなら、迷わず食せる筈ですよ」
リアンは冷静に言った。まぁ、人事だもんな。さて、どれに毒が入ってるんだろう? 毒を盛るとしたら誰が? いつ? 王子も命を狙われるんだな、あっちの世界よりカルマをクリアした奴らの世界の筈なのに。物騒だなぁ。
「料理は凄く美味しいですよ。毒はあるかも! ですが」
アルフォンスは上品に笑った。こいつも可愛い顔して食えない奴だ。
「頂きます」
両手を合わせ、軽く頭を下げてから手前の白いおしぼりで両手を拭いた。このタオルに毒が? まぁいいや。最後の晩餐ならぬ朝食、堪能させて貰うぜ。まずはコンソメスープから。熱ッ、でも美味い! コクがあるのにあっさり飲める。クロワッサンも外はカリッ、中はしっとり。スクランブルエッグも、バターが効いていてふわふわだ。ミルクも濃厚で甘みがあって。サラダも新鮮で何もつけなくても美味い! 果物も濃厚な甘さと歯ごたえがしっかりしている。スイーツみたいだ。
毒が入っててもいいや、と思えるくらい美味しかった。これは気をつけないと毎日完食してたらメタボになるな。朝食でこれなら、昼はもっと豪華、夜なんか凄いメニューとみた。
下品にガッツかないよう気をつけながら、有り難く完食しちまった。はははは、毒が回ったら、苦しいだろうな。その前に、王子に遺言頼もうかな。
「ご馳走様でした。美味しゅうございました」
と俺は両手を合わせ、挨拶をした。何だよ? 何ニヤついて見てるんだよ? 二人とも。
「さて、もし毒が貰れていたなら、これから二時間くらいで毒が回りますねぇ。死体は全て回収、どのような毒なのか調べさせて頂きます」
リアンはメガネのエッジに右人差し指をかけて言った。あ、そうですか。まぁ、王子の役に立てるなら……
「前の毒味役は、ちょうど二時間後に苦しみ出してそのまま……でしたねぇ」
とアルフォンス。何だよ? 二人して人の死を楽しんでねーか? いいや、俺も冥途の土産に質問しよう。
「でも、毒はどこで、果たして誰が仕込むのでしょうか? 厨房や給仕の人たちではないですよね、そんな分かり易い事しないでしょうし」
それを聞いた途端、真顔になる二人。何なんだよ一体。俺、何か拙い事言ったか? 俺には知る権利あるだろうよ!
「ええ、勿論。あらゆる角度から、厨房を、そして食事に携わる全ての者には監視カメラをつけています。食材を作る者にもね。ですから彼らの可能性は限りなく0に近いでしょう」
とリアンは例によって淡々と説明した。
「じゃぁ、誰が……いつ?」
「魔術が使える者が多い、と少し言いましたね」
「あ、はい」
まさか、魔術で毒を???
「その魔術で仕込むのですよ。遠隔で、かつ誰の目にも触れずに仕込める」
「……だ、誰がそんな……」
言葉が出なかった。だって王子、常に命を狙われてる、て事でだろ? しかも魔術でなんて……。
「嫉妬ですよ。殿下は容姿も才能も人を惹き付ける力も、そして統率力にも抜きんでている。けれども、第二王子なのですよ。つまり、正当な王位継承者は第一王子にある訳です」
「それってまさか! 第一……」
「ダメですよ!」
「いけません!」
あまりの衝撃に、つい口に出してしまおうとした俺を、アルフォンスとリアンが同時に遮った。
「滅多な事、言ってはいけません! 命が惜しければね」
リアンは言う。でもさ、理屈は分かるけど……
「分かりました。すみません、以後気をつけます」
素直に引き下がったけど、俺、死ぬかもしれないんだろ? なのに、命が惜しければ、て矛盾しまくりじゃん。
「この件は、しっかっりと防御の魔術を施せる時、しかるべき時を設けてご説明します。今後の仕事にもかかって来る事ですからね」
リアンは小声で素早く言った。駄目だ、釈然としない。いいや、聞こう。
「はい、宜しくお願いします。でも、自分は今日、毒が回って死ぬかもしれないんですよね?」
リアンとアルフォンスは顔を見合わせてハッとしたように俺を見る。ほーら、忘れてるし。どーせ俺の命なんて二人からしたらさ。でも、王子に遺言は伝えて貰うからな。
「いいえ、毒はありません。大丈夫です。この試験はまず、殿下へ忠誠を誓えるかを見るだけでしたから。つまり合格です」
サラッと言ってくれるじゃねーかリアン。こっちはな……
「はい???」
だぞ! 突っ込み所満載過ぎて、何から突っ込めば良いんだよ?
「失礼します。朝食をお持ちしました」
静かにドアが開き、可愛らしい女の子の声がする。ホントだ、女の子も居るんだ。ワゴンを押して入ってきた女の子が一人、その後にもう一人女の子が。一人は茶色い髪、もう一人は淡い金髪の子だ。二人ともきっちりとアップスタイルにして白いフリルの帽子を被り、黒のワンピースにフリフリのついた白いエプロン姿だ。ほら、誰もが想像する典型的なメイド服だね。二人ともなかなかに可愛い。使用人も顔で選ぶのかな。
「失礼します」
白いワゴンに乗っていたのは大きな銀色の鍋だ。茶髪の女の子は一声かけて蓋を開け、銀色のお玉杓子で琥珀色の液体を掬い、白いカップに注いだ。それを丁寧に俺の前に「コンソメスープでございます」と置く。次に淡い金髪の子がミルク入ったグラスを、茶髪の子が白い皿に三つの焼き立クロワッサンを……という感じで二人が手分けしていく感じだ。黄金色のスクランブルエッグ、白身魚のムニエル。ベビーリーフのサラダ、桃とグレープフルーツのコンポートが用意された。美味そうー!
洋食メニューだ。どれもこれも最高の素材で極上に出来ていそうだ。女の子たちは俺たち一人一人に丁寧に頭を下げ、静かに部屋を出て行った。
「さぁ、冷めない内に召しあがれ。殿下に忠誠を誓えるなら、迷わず食せる筈ですよ」
リアンは冷静に言った。まぁ、人事だもんな。さて、どれに毒が入ってるんだろう? 毒を盛るとしたら誰が? いつ? 王子も命を狙われるんだな、あっちの世界よりカルマをクリアした奴らの世界の筈なのに。物騒だなぁ。
「料理は凄く美味しいですよ。毒はあるかも! ですが」
アルフォンスは上品に笑った。こいつも可愛い顔して食えない奴だ。
「頂きます」
両手を合わせ、軽く頭を下げてから手前の白いおしぼりで両手を拭いた。このタオルに毒が? まぁいいや。最後の晩餐ならぬ朝食、堪能させて貰うぜ。まずはコンソメスープから。熱ッ、でも美味い! コクがあるのにあっさり飲める。クロワッサンも外はカリッ、中はしっとり。スクランブルエッグも、バターが効いていてふわふわだ。ミルクも濃厚で甘みがあって。サラダも新鮮で何もつけなくても美味い! 果物も濃厚な甘さと歯ごたえがしっかりしている。スイーツみたいだ。
毒が入っててもいいや、と思えるくらい美味しかった。これは気をつけないと毎日完食してたらメタボになるな。朝食でこれなら、昼はもっと豪華、夜なんか凄いメニューとみた。
下品にガッツかないよう気をつけながら、有り難く完食しちまった。はははは、毒が回ったら、苦しいだろうな。その前に、王子に遺言頼もうかな。
「ご馳走様でした。美味しゅうございました」
と俺は両手を合わせ、挨拶をした。何だよ? 何ニヤついて見てるんだよ? 二人とも。
「さて、もし毒が貰れていたなら、これから二時間くらいで毒が回りますねぇ。死体は全て回収、どのような毒なのか調べさせて頂きます」
リアンはメガネのエッジに右人差し指をかけて言った。あ、そうですか。まぁ、王子の役に立てるなら……
「前の毒味役は、ちょうど二時間後に苦しみ出してそのまま……でしたねぇ」
とアルフォンス。何だよ? 二人して人の死を楽しんでねーか? いいや、俺も冥途の土産に質問しよう。
「でも、毒はどこで、果たして誰が仕込むのでしょうか? 厨房や給仕の人たちではないですよね、そんな分かり易い事しないでしょうし」
それを聞いた途端、真顔になる二人。何なんだよ一体。俺、何か拙い事言ったか? 俺には知る権利あるだろうよ!
「ええ、勿論。あらゆる角度から、厨房を、そして食事に携わる全ての者には監視カメラをつけています。食材を作る者にもね。ですから彼らの可能性は限りなく0に近いでしょう」
とリアンは例によって淡々と説明した。
「じゃぁ、誰が……いつ?」
「魔術が使える者が多い、と少し言いましたね」
「あ、はい」
まさか、魔術で毒を???
「その魔術で仕込むのですよ。遠隔で、かつ誰の目にも触れずに仕込める」
「……だ、誰がそんな……」
言葉が出なかった。だって王子、常に命を狙われてる、て事でだろ? しかも魔術でなんて……。
「嫉妬ですよ。殿下は容姿も才能も人を惹き付ける力も、そして統率力にも抜きんでている。けれども、第二王子なのですよ。つまり、正当な王位継承者は第一王子にある訳です」
「それってまさか! 第一……」
「ダメですよ!」
「いけません!」
あまりの衝撃に、つい口に出してしまおうとした俺を、アルフォンスとリアンが同時に遮った。
「滅多な事、言ってはいけません! 命が惜しければね」
リアンは言う。でもさ、理屈は分かるけど……
「分かりました。すみません、以後気をつけます」
素直に引き下がったけど、俺、死ぬかもしれないんだろ? なのに、命が惜しければ、て矛盾しまくりじゃん。
「この件は、しっかっりと防御の魔術を施せる時、しかるべき時を設けてご説明します。今後の仕事にもかかって来る事ですからね」
リアンは小声で素早く言った。駄目だ、釈然としない。いいや、聞こう。
「はい、宜しくお願いします。でも、自分は今日、毒が回って死ぬかもしれないんですよね?」
リアンとアルフォンスは顔を見合わせてハッとしたように俺を見る。ほーら、忘れてるし。どーせ俺の命なんて二人からしたらさ。でも、王子に遺言は伝えて貰うからな。
「いいえ、毒はありません。大丈夫です。この試験はまず、殿下へ忠誠を誓えるかを見るだけでしたから。つまり合格です」
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