その男、有能につき……

大和撫子

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第百十六話

国王陛下御愛用のアクセサリー・前編

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 さて、どうしたもんか……本当に途方にくれている。さすがに、アクセサリーに封じ込められた経験はない。……て、そんな事当たり前だ。誰だって、アクセサリーの中に入り込みたいなんて思わない人の方が大半だろう、特殊な趣味の人以外には。

『大丈夫だ、私が動き回ってアクセサリーのが揺れ動いても、そなたに揺れや回転などは伝わらないようにしてあるのでな。安心してゆっくり出来るぞ。気になれば、外の景色を見ても大丈夫だ。良い気分転換になるだろう』

 国王は上機嫌でそう言い残していったけれど、そもそも根本的な会話がズレまくっている訳で……。

 これでは、『異世界転移したら国王陛下御愛用のアクセサリーの中に入っちゃいました!』とかいうラノベなんかの展開じゃねーか。おーい、作者、どーしてくれんだよ?! どこを目指しているんだ? て感じで。オチが迷子の展開に……て、現実逃避してる場合じゃないよな。

 ソファに腰をおとし、抱えていた頭をおこす。けれども、ここでネガティブに考えて解決策が見つかる訳ではない。出来る事から考えてみよう。先ずは国王の本音だ。国王ともなれば、魔術はお手の物だろうし、何よりも『王位継承の秘宝』とやらの、全てを見透せる水晶があるし、えーと……確か『天使アウリエルの水晶球』、だったかな。それがある訳で。……となると、うーん……どう考えても俺の本音なんかお見通し……と考えて間違いないだろうなぁ。

 ……やっぱり、国王は分かっていて敢えて何も知らない、気付いていないフリをしているのか……

 これが、今導き出された推測だ。推測といっても、恐らく十中八九は当たっているだろう、尤も……憶測は物事の本質を見失うから、思い込みは厳禁だけれども。しかし、厄介だ。気付いていないのであれば、話し合いの機会を願い出て互いの擦り合わせをはかれる可能性が高まるけど、分かっているのに知らないふりとなると……厄介だな。

 俺ってホント馬鹿、ラディウス王子やリアンが心配してくれている本質を、分かっているようで全然分かってなかった。今更後悔しても仕方がない事だけど。そう、人生にもしも~していたなら……と考えてみてもその時に時を戻す事は出来ないのだ。それこそファンタジーの世界なら可能かもしれないけれど。

 差し当たっては、だ。国王としっかり向き合って話をしないと、だよなぁ。うん、これだ。タイミングがどうの、なんて言っていると、だ。またズルズルと言っちまうから、ここは次に国王が訪ねて来たらすぐに話しを切り出してみよう。

 ふと、左手首がじんわりと熱く感じた。どうした? フォルス。何となく、外の景色を見てみようと思い立つ。立ち上がりながらリアンの熱く語る言葉が甦る。

『……いいですか? 何があっても、最終的にはあなたの強い意志の力が物を言います』

 そうだ、ラディウス王子の隣に、皆のところに帰るんだ! 絶対に!!

 気分が高揚しつつ、外の様子を見てみる。確か風空界に公務、て言ってたな。……外の様子は……見たところ、草原……いや、高原みたいな感じだ。遠くに白樺っぽい木々が見える。風は、さほど強くないみたいだけど。もしかしたら何か香りや温度がついているのかもしれない。以前、風空界のミニ扇風機を貰った事を思い出した。

 それにしても、壁にはりついている俺。何だかヤモリにでもなった気分だ。まさか、国王のペンダントに俺が封じ込められているなんて誰も思うまい。国王が、衣装の中にペンダントをしまい込んでないのは助かった。外の景色が見られるのは有り難い。気分転換にもなるしな。

 風空界か。セディ坊やは元気かなぁ。もしかして俺に気付いて、ここから出られる切っ掛けを……なーんてな。それこそファンタジーのご都合主義、てやつだ。そんな展開現実に起こる訳ないない。ポジティブ思考は大切だけど、妄想もほどほどにしないと地に足がつかなくて現実に対処が出来なくなるからな。

 そのまま景色を見続けた。
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