【銀梅花の咲く庭で】~秋扇の蕾~

大和撫子

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第二話

さて、白黒ハッキリ付けようじゃないの!③

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 スクールカウンセラーは窓際の壁に立ち、静かに見守っている。因みに、彼女の名前は加藤陽子さんと言う。生徒たちは親しみを込めてカトヨコ先生と呼んでいる。

 私は入り口を背にして、アベンチュリン製の丸テーブルに設置されたテーブルと同色の椅子に腰を下ろしていた。優しいミルキーグリーン色のテーブルが目に優しい。席についている人物は私を含めて四人。時計回りに紹介するとしよう。椅子を一つ空けて私の左隣に座るのがユリアナ、椅子を一つ空けて座る……即ち私の正面……のがサイラス、また椅子を一つ空けてその隣に座るのは……つまり私の右に椅子を一つ空けて座っているのがイブだ。

 イブは初めて出した名前だが、私のクラスメイトの一人だと思って貰えたら良い。クラスメイトだから挨拶くらいは交わすだろうが、この一見以降、今後は一切登場する予定はない。長い茶色の髪を持ち、顔立ちはだと思って頂けたらと思う。ただ少しばかりの因縁があった。それにについての述べておこう。

 そもそもこの子は一年ほど前……学園の廊下ですれ違いざま、いきなり喧嘩を売って来たのだ。当時は別のクラスで顔もよく知らなかった私に『私のレオナルドに色目使って誑し込んでるんじゃないわよ!』などと下品な言葉で。それはもう鬼の形相で怒鳴るものだから、近くを歩いていた子たちは皆驚いて立ち止まる訳で。変に注目を浴びてしまった。
 ん? レオナルドとは誰や? 私の、という事はイブが付き合っている彼の事か? 知らんがな、と思ったが、何の事はない。レオナルドはフェンシング部のエース的存在で、かなりの美形。ファンクラブが出来るくらいの人気ぶりだ。その彼とイブは幼馴染で仲が良かったらしく、どうやら彼に想いを寄せていたようだ。当然、自分も好かれていると思って想いを告げたところ、「他に気になる子がいるから無理だ、御免」と断られたらしい。それで、その気になる子というのが私(?)だったのだとか。だが、レオナルドとはクラスも別だし話した事もない上に告白も受けた事もない。とばっちりも良いところだ。
 当然、「いきなり失礼ね。知らないわよ、言いがかりもいい加減にして!」と言い返した訳だ。誰かが呼びに行ってくれたのか、騒ぎを聞きつけたレオナルド本人が駆け付け、私に平謝りしながらイブの頭を押さえつけて無理やり謝罪させて強引にその場を治めた。彼は金髪碧眼の甘いマスクの持ち主だったが私の好みでもなく。その数日後、思いを告げられたけれど互いに気まずくなってそれっきりだ。

 それ以来、イブは私を目の敵にしている。私は全く相手にして居なかったが。さて、話を戻そう。

 泰然と三人を見渡す私と、不安そうに瞳を泳がせるサイラスとユリアナ。イブはどうして自分がこの場に呼び出されらのか解らず苛立っている様子だ。未だ未成年なのに眉間に皺を寄せる表情が自然になっているって、何があったのかは知らないが毎日大変そうだ。

 「放課後、カウンセリングルームに行くように」と陽子先生から各担任に伝えて貰うようにしてあった訳だが、いきなり呼び出されてさぞや面食らった事だろう。サイラスとユリアナは薄々感づいていそうだが。

 陽子先生と目を合わせ、頷き合った。予め決めてあった「これからを始めるよ」という合図だった。

 「突然呼び出してごめんね」

先ずは敢えて気楽に話し出した。別に最初から喧嘩をしたい訳ではない。穏便に片を付ける事が出来るのであればそれに越した事はない。

「……ここに呼び出したのはミルティアなの?」

 ユリアナが目を見開く。マホガニー色のふわふわした髪を方の辺りで切り揃え、髪と同じ色の大きな瞳はいつも潤んでいる。そんなところが男心を擽るのだろう、ユリアナは男子から人気が高い。人のモノを奪い取る事で快感を覚えるタイプだったのか、それとも今回はサイラスだったのかは知らないが。私は頷いて見せた。

「どうしたんだ? このメンバーは一体……」

 サイラスがユリアナに被せるようにして問いかけた。へぃへぃ、仲の宜しい事で。笑顔で肯定の意を示す。

「いきなり何? 時間の無駄になるから用事があるならサッサと済ませてよ!」

 それはこちらの台詞だ、いきなり喧嘩腰のイブ。そんな性格だから嫌われるんだっつーの。私はにっこりと親し気な笑みで応じる。

「勿論、そのつもりよ。では早速行きましょう。イブ、一年ほど前に匿名掲示板ABCチャンネルの学園スレッドに私の事を書き込みしたでしょう。それも嘘ばっかり」

 楽しそうに微笑みを浮かべたまま、穏やかな声で切り込んだ。息を呑んで絶句するイブ、狼狽えて顔を見合わせるサイラスとユリアナ。分かり易い反応だ。更に畳みかける。

「最初に書き込みしたのはユリアナ、あなたよね? あなたもまた嘘八百。そしてサイラス、あなたもね」

うふふ、と笑って見せた。凍り付いた三人が、何とも滑稽ではないか。
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