跡を継ぐもの

大和撫子

文字の大きさ
1 / 2
第一話

憧れ

しおりを挟む
 
「兄貴、今日もカッコイイなぁ」

 茶太郎は憧れの眼差しでスノウイを見つめた。こっくりとした大きなまん丸い琥珀色の瞳が、研磨された琥珀のように輝く。その瞳の先には、自宅のブロック塀の上に悠然と腰を下ろす……

 それは雪のように白く輝く毛並み、長くしなやかな肢体、一部の無駄な肉もついていない細身の筋肉質の体。細面の顔の輪郭に整った顔立ち。その瞳は切れ長のクリアブルーの瞳を持つ白猫だった。その瞳は宝石のアクアマリンのようだ。彼は優雅な仕草で、塀の下で自らを見上げる子猫を見下ろした。そしてフッと優しい笑みを浮かべる。

「さ、部屋に戻るぞ茶太郎」

 と声をかけた。さながらクリスタルボウルのように不思議な癒しの鳴き声である。彼の視線に移る茶太郎は、ふわふわの茶トラの子猫であった。

「うん! スノウイの兄貴!」

 茶太郎は鈴のようにコロコロと澄んだ声だ。元気よく答える。ヒラリと塀から飛び降りササッと家に走るスノウイの後を、ポテポテと追った。スノウイは茶太郎の憧れだった。


 
 スノウイは元々はこの辺りの界隈を取り仕切るボスであった。

「うわぁ、真っ白な猫ちゃん綺麗ー!」

 ある日、幼い少女に一目で気に入られ、抱きあげられた挙句そのまま彼女の自宅へと連れて行かれてしまう。頃合いを見て逃げ出そうと思っていたが、

「お願い、パパ、ママ。絶対責任持って面倒見るから! 餌も、沙織のお小遣いから出していいから!」

 少女が余りにも泣くので、そのまま飼い猫として居つく事にした。

……まぁ、私もそう若くは無い。余生を人間にぬくぬくと守られ、穏やかに過ごすのも悪くないさ……

 と沙織の腕の中でそう感じた。

「ね、猫ちゃん。雪みたいに真っ白だからお名前はSnowyスノウイね!」

 ほどなくして彼の名が決まった。少女の家の近辺では、かなりの確率で猫が飼われていた。その辺りを散歩している内に、飼い猫とその界隈にいる決まった家を持たぬ猫達のリーダーとして君臨して行った。

「あらぁ真っ白。美人猫、いや、イケメン猫かな?」

「わぁ真っ白なニャンコだぁ!」

 自宅の前の道で寛いでいたり、縄張り周辺の見回り兼警護をしていると道行く人が声をかけて行ったり、二度見して行く。

 いつしか、この地域の名物猫としてもその名を馳せて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...