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第一話
憧れ
しおりを挟む「兄貴、今日もカッコイイなぁ」
茶太郎は憧れの眼差しでスノウイを見つめた。こっくりとした大きなまん丸い琥珀色の瞳が、研磨された琥珀のように輝く。その瞳の先には、自宅のブロック塀の上に悠然と腰を下ろす……
それは雪のように白く輝く毛並み、長くしなやかな肢体、一部の無駄な肉もついていない細身の筋肉質の体。細面の顔の輪郭に整った顔立ち。その瞳は切れ長のクリアブルーの瞳を持つ白猫だった。その瞳は宝石のアクアマリンのようだ。彼は優雅な仕草で、塀の下で自らを見上げる子猫を見下ろした。そしてフッと優しい笑みを浮かべる。
「さ、部屋に戻るぞ茶太郎」
と声をかけた。さながらクリスタルボウルのように不思議な癒しの鳴き声である。彼の視線に移る茶太郎は、ふわふわの茶トラの子猫であった。
「うん! スノウイの兄貴!」
茶太郎は鈴のようにコロコロと澄んだ声だ。元気よく答える。ヒラリと塀から飛び降りササッと家に走るスノウイの後を、ポテポテと追った。スノウイは茶太郎の憧れだった。
スノウイは元々はこの辺りの界隈を取り仕切るボスであった。
「うわぁ、真っ白な猫ちゃん綺麗ー!」
ある日、幼い少女に一目で気に入られ、抱きあげられた挙句そのまま彼女の自宅へと連れて行かれてしまう。頃合いを見て逃げ出そうと思っていたが、
「お願い、パパ、ママ。絶対責任持って面倒見るから! 餌も、沙織のお小遣いから出していいから!」
少女が余りにも泣くので、そのまま飼い猫として居つく事にした。
……まぁ、私もそう若くは無い。余生を人間にぬくぬくと守られ、穏やかに過ごすのも悪くないさ……
と沙織の腕の中でそう感じた。
「ね、猫ちゃん。雪みたいに真っ白だからお名前はSnowyね!」
ほどなくして彼の名が決まった。少女の家の近辺では、かなりの確率で猫が飼われていた。その辺りを散歩している内に、飼い猫とその界隈にいる決まった家を持たぬ猫達のリーダーとして君臨して行った。
「あらぁ真っ白。美人猫、いや、イケメン猫かな?」
「わぁ真っ白なニャンコだぁ!」
自宅の前の道で寛いでいたり、縄張り周辺の見回り兼警護をしていると道行く人が声をかけて行ったり、二度見して行く。
いつしか、この地域の名物猫としてもその名を馳せて行った。
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