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第一話
屋根裏部屋
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「あ!これ、もしかして!?」
屋根裏部屋で色んな宝物探しをしていたやよいは、分厚くて大きな本みたいなものを見つけた。それは木の表紙で、鍵付きのものだ。何やら祖父宅梅ヶ枝家の家紋が彫られている。ちょうどアルバムくらいの大きさで、とても立派な物だった。
「お祖母ちゃーん」
やよいは階段の下に向かって声をかける。
「はいよー」
祖母のよく通る声が、すぐに返って来た。何せ彼女は、ここ長野県、地元のカラオケ大会で優勝の腕前なのだ。更には、日本舞踊の師範でもある。だから足腰がしっかりしていて、姿勢正しく優雅に歩く。
梅ヶ枝家。長野県では有名な老舗の料理店でもあった。今はもう、長男夫婦に任せている。この屋根裏部屋は、母や母の兄弟達の小さい頃遊んだ玩具や、人形、塗り絵等、色んな宝物の保管場所でもあった。やよいのお気に入りの場所の一つでもある。
話は約3時間程前に遡る。
待ちに待った夏休みがやってきた。宿題をリュックに詰め込み、忘れ物がないかチェックに勤しむ。小学校5年生の眞田やよいは、毎年夏休みは家族全員、つまり両親とやよいで母方の祖母の家に二週間ほど滞在しているのだ。父親の運転する車で行くのだが、いつも午前4時くらいには出発する。混雑を避ける為だ。ドライブイン、道の駅等に立ち寄り、車はゆっくり安全運転で進んで行く。それもまた楽しみの一つだった。
やよいは初孫という事もあり、祖父泰隆も祖母三千代も、それはそれは大層可愛がってくれてる。
そして今から約3時間ほど前、午前11時くらいに到着した。祖母お手製のランチを頂き、両親はゆっくりと寛いでいる。やよいは早速お気に入りの場所「屋根裏部屋」で、祖母特製バナナジュースを飲みながら何かお宝がないか探していた。
タッタッタ
規則正しく軽快なリズムで、階段をのぼる足音。やがて屋根裏部屋につくとコンコン、とノックの音がした。
「はーい!」
やよいは元気よく答える。
「入るよ!」
という声と共に、カチャッ、とドアが開いた。
「何かお宝でも、見つけたかい?」
祖母は笑顔で、やよいの傍らに正座した。
(お祖母ちゃん、綺麗だな。若いころは本当に綺麗だったろうなぁ)
やよいは、祖母の整った上品な顔立ち、優しい笑顔を見てつくづくそう感じた。
「これ!」
やよいはその大きな本のようなものを差し出す。
「おや、これは……」
それを両手で受け取りつつ、祖母は少し照れたように笑った。心なしか、頬がピンク色に染まったような?
「これはね、色々なお花の思い出が詰まっているアルバムなんだよ。見てみるかい?」
と祖母は尋ねる。
「うん!」
やよいは元気よく答えた。
屋根裏部屋で色んな宝物探しをしていたやよいは、分厚くて大きな本みたいなものを見つけた。それは木の表紙で、鍵付きのものだ。何やら祖父宅梅ヶ枝家の家紋が彫られている。ちょうどアルバムくらいの大きさで、とても立派な物だった。
「お祖母ちゃーん」
やよいは階段の下に向かって声をかける。
「はいよー」
祖母のよく通る声が、すぐに返って来た。何せ彼女は、ここ長野県、地元のカラオケ大会で優勝の腕前なのだ。更には、日本舞踊の師範でもある。だから足腰がしっかりしていて、姿勢正しく優雅に歩く。
梅ヶ枝家。長野県では有名な老舗の料理店でもあった。今はもう、長男夫婦に任せている。この屋根裏部屋は、母や母の兄弟達の小さい頃遊んだ玩具や、人形、塗り絵等、色んな宝物の保管場所でもあった。やよいのお気に入りの場所の一つでもある。
話は約3時間程前に遡る。
待ちに待った夏休みがやってきた。宿題をリュックに詰め込み、忘れ物がないかチェックに勤しむ。小学校5年生の眞田やよいは、毎年夏休みは家族全員、つまり両親とやよいで母方の祖母の家に二週間ほど滞在しているのだ。父親の運転する車で行くのだが、いつも午前4時くらいには出発する。混雑を避ける為だ。ドライブイン、道の駅等に立ち寄り、車はゆっくり安全運転で進んで行く。それもまた楽しみの一つだった。
やよいは初孫という事もあり、祖父泰隆も祖母三千代も、それはそれは大層可愛がってくれてる。
そして今から約3時間ほど前、午前11時くらいに到着した。祖母お手製のランチを頂き、両親はゆっくりと寛いでいる。やよいは早速お気に入りの場所「屋根裏部屋」で、祖母特製バナナジュースを飲みながら何かお宝がないか探していた。
タッタッタ
規則正しく軽快なリズムで、階段をのぼる足音。やがて屋根裏部屋につくとコンコン、とノックの音がした。
「はーい!」
やよいは元気よく答える。
「入るよ!」
という声と共に、カチャッ、とドアが開いた。
「何かお宝でも、見つけたかい?」
祖母は笑顔で、やよいの傍らに正座した。
(お祖母ちゃん、綺麗だな。若いころは本当に綺麗だったろうなぁ)
やよいは、祖母の整った上品な顔立ち、優しい笑顔を見てつくづくそう感じた。
「これ!」
やよいはその大きな本のようなものを差し出す。
「おや、これは……」
それを両手で受け取りつつ、祖母は少し照れたように笑った。心なしか、頬がピンク色に染まったような?
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「うん!」
やよいは元気よく答えた。
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