天使と悪魔の新解釈「見習い悪魔は笛を吹けるか?」

大和撫子

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第十八話

恵茉、見習い悪魔になって初のオフの日を過ごす

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「イッターイ、やっぱりあっちこち筋肉質だー」

  翌朝目が覚め、ベッドから起きようとした恵茉は思わず呟く。軽く伸びをして起き上がると、顔を洗いに洗面台へと向かう。

「洗濯しなくても自動的に洗浄ね。確かに便利だわ。何となーく、ハーブっぽい清潔感ある匂いがするって言うのもなんか気分が良いわね」

  今、魔界山麓の安心安全の水を飲みながら何となくニュースを見ていた。

「あら? そういえば今日明日は水木。オフの日。ベリアル、特に何も言ってなかったけど……」

 時計を見ると午前8時を過ぎたところだ。

『恵茉、起きてるか?』

 突如、頭の中にベリアルの声が響いてくる。そう、脳内に響く、という表現が適当な感覚だ。

「起きてるよー。ちょうど良かった、今日明日お休みだよね?」

 恵茉は普通に会話をするように答える。

『今行って大丈夫か?』

 ベリアルの問いに

「はいはい、待ってるよ」

 と答える。

「すまん、伝え忘れた!」

 文字通り瞬時に、恵茉が座っているソファーの向かい側に現れるベリアル。

「おはよう、ベリアル。おー! これぞまさに瞬間移動! さっきのはテレパシーってやつ?」

 恵茉は目を輝かせる。

「まぁ、そうだな。答える 時は声に出さなくても心の中で答えれば伝わる。ついでに教えておこう。離れている時、俺に用事がある時はその左手のブレスレットの宝石の部分を、

右手で触り、心の中で呼ぶだけで伝わる。

「へぇ?あー、だから通信機器なんだ。こんな感じ?」

 恵茉は早速右手でブレスレットの宝石に触れてみた。

『ベリアル! オフの日の過ごし方の注意点は?』

 ベリアルの頭に恵茉の声が響く。

「おー、上出来上出来!」

 と彼は笑った。

「言い忘れててすまんな。一つは、オフの日は自分で自分の身を守れるようになるまでは、この空間から出ないでいる事。庭には出ても大丈夫だ。二つ目は、昨日も言ったが、無になる練習は絶対に一人ではするな。以上だ。何か質問があれば、そのブレスレットを通じて話せ」

 と簡潔に締めくくった。恵茉はメモを取りつつ

「分かったわ!

 今日はブログとSNS連動させてプロフィールを完成させるわよ。そこで悪魔に質問ある人ー? と募ってみる予定なんだけど。ニックネームをどうしようか迷ってるの。夜の魔女『リリス』、名前使っても大丈夫?」

 と恵茉は彼を見つめた。

……リリスかぁ。俺苦手なんだよなー……

 と思いつつ、

「まぁ許可取らなくても名前を使うのくらい問題は無いが……許可貰えば気まぐれにサポートしてくれるかもなー。あんまり期待は出来んが。たまたまリリスに会った時それとなく言っておいてやる」

 とベリアルは答え、

「まぁ、ゆっくり休め。ストレッチだけは忘れずにな。何かあったらすぐ連絡しろ」

 と言って恵茉の頭を撫でると、消えた。

「えへへ、頭撫でて貰うのって…えーと、何年ぶりだっけ?? まぁいいや。ブログ書こうーっと。そう言えば、見習い魔女設定なのにリリスを語るのって変よね。リリスって大魔女なのに……」

 恵茉は嬉しそうに笑うと、撫でられた頭に軽く右手で触れた。そしてパソコンを立ち上げる。

「そうだ!名前は、魔女っ子スモールリリス。16歳、と」

『ただ今真の魔女リリスを目指して修行中!悪魔や天使に質問あれば、随時受け付けるわ。気軽にコメントしてね☆』

「とりあえず、こんな感じで書いてみよう。アイコンは、萌系魔女っ子、みたいなのにして。ピンク色の巻き毛にツインテール。大きな目は緑色でややつり目、魔女のトンガリ黒帽子に黒のローブ。先端が尖った黒ブーツ。当然、中身はミニスカートね。ほうきに乗って、相棒は琥珀色の瞳の黒猫。名前はノワール。左肩に乗せてる感じ。背景は星空に三日月。こんな感じで良いかな」

 サラサラと鉛筆でラフ画を描く。

「そうそう、お絵描きグッズ、あったかしら?」

 と寝室の本棚に向かう。そこには漫画やライトノベル、文豪と呼ばれる人々が書いた純文学まで揃っていた。そして……

「わー!パステル、水彩絵の具、アクリル画と揃ってる!しっかり画用紙まである!! 本当! 至れり尽くせりだわ」

 と歓声をあげた。今回はパステルと水彩絵の具でふんわりタッチで描く事にした。

 こうして、見習い魔女スモールリリスと相棒の黒猫ノワールは今日も修行中。随時質問を受付中、との事である。それでは諸君! コメント、お待ち申し上げている!
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