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第二十話
恵茉、新しい仕事を覚える・その二
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「まさかさすがに何の知識も無く占え、はねぇよ」
とベリアルは笑う。
「正午から夜8時までの間、二時間枠で一時間おきに予約が入ってる。その空いている時間に、今待機している占い師から基本を教われ。今日から二日間だ。鑑定中は浮いて上から見物すると良い」
と説明する。
「魔族の占い師なの?」
やや不安気に問いかける恵茉。
「ああ、占い専門の奴らさ」
とベリアルはニヤリと笑った。
「さて、中に入るぞ」
と言って消えた。次に恵茉の目に入ったのはシャンデリアだった。どうやら室内の電気付近に出現したらしい。
中はちょうどマンションの3LDKのようになっており、部屋が3つあった。フローリングの床。入ってすぐ入り口の左側に、高さ1m、幅20cm、奥行き15cm程のアメジストのドーム型原石が置かれている。真ん中の部屋には白いテーブルと椅子が4脚置かれており、テーブルには大きな紫色の高級座布団の上に、高さ1m、幅80cm、奥行き60cm程の水晶の原石が置かれていた。そして静かに下に降りる。
…カチャッ…恵茉がベリアルから降りると同時に、一番入り口に近いドアが開く。
「ヒッ!」
思わず悲鳴を上げて、ベリアルの背中に隠れる恵茉。
「その子が見習いか?」
その男は外見に似あわず、テノール歌手のような美声でベリアルに問いかけた。恐る恐る、ベリアルの背に隠れつつ、声の主をもう一度しっかり見ようとする恵茉。その男は身の丈約2m程ほど。ガッチリした体形を濃紺のローブで覆い、左腰にノコギリのような剣を差す。髪は炎に包まれ赤々と燃え、いや、炎自体が髪の毛なのか。顔は皮膚が無く、筋肉や血管が透けて見えていた。ギョロッとした瞳は虚ろな闇色だ。
「恵茉、怖がる事は無い。今は真の姿だが、コイツは美女から紳士、子供まで、ありとあらゆる姿に変身できる」
とベリアルは背後の恵茉を見下ろした。
「俺の名はアミ―。占い全般を司る。ま、主に黒魔術、と言われる方のな」
と言うと、男の頭の炎が一気に全身を包み、すぐに消えると
「わぁ……」
恵茉は感嘆の声を上げ、ベリアルの前に歩み出た。炎が消えたその男の姿は、高身長、長い手足、細身の色白。
淡い金髪の髪は首のあたりまで伸ばされ、サラサラふわふわと空気に舞う。淡いブルーの瞳はとても優し気だ。何やら天使を連想させる、甘いマスクの男に変貌を遂げていた。
「俺の得意分野は、占星術と文法・修辞学・弁証法・算術・幾何学天文学・音楽の自由七科だ。それと、召喚者に良い使い魔を与える事が出来る。他には、精霊達が守る財宝を奪い取る事も出来る。恵茉、と言ったか。お前にはこの二日間で、タロットと簡単な西洋占星術と数秘術を教える。後は、俺がどうやって客を取り込むのかしっかり研究しろ」
アミ―はゆっくりと説明をした。恵茉は大きく頷きながら、メモを取っている。
「良かった! 自由七科? だかを勉強させられるのかとウンザリしていたの。使い魔って、欲しいって言えば貰えるの? 代償は何? 精霊さんのお宝を泥棒しちゃうの?」
と何やら嬉しそうに一気に捲し立て、質問をしてくる。そんな様子に唖然とするアミ―に、苦笑するベリアル。
だが、アミ―はすぐに冷静さを取り戻すと、
「質問に答えよう。正式に手続きを踏んで召喚された場合に限り、希望すれば使い魔を与える。勿論、本人の寿命、または命より大切なものを代償にな。泥棒、まぁそういう事だ」
と落ち着いて答えた。恵茉はふむふむ、と頷きながらメモを取る。
「あ! そういえば代償に貰った命とか、その人間の運気とか美貌とか、その貰った代償はどうしているの?何かに使うの?」
と矢継ぎ早に質問する恵茉。再び唖然とするアミー。すまんな、というように彼の背中を軽く叩くベリアル。ゴホン、とアミーは咳払いをし、仕切り直しをはかると
「俺達の言う代償とは、お前達人間でいうところの報酬だ。そう考えると、分かりやすいだろう。代償に貰ったものは、魔族それぞれにより使い方は異なる。あるものは食らい、あるものは好きなものに加工して飾ったり。またあるものは『魔界換金所』人間の金や魔族の金に変えたり。そんな感じだ。ちなみに俺は気分次第で金にしたり食ったりと色々だ」
と締めくくった。恵茉は満足そうに微笑む。ホッとしたアミーは、
「今から一時間半後に最初の客が来る。それまでに少し勉強だ」
と言うと、胸の前で両手の平を軽く合わせる。まるで小さな毬を持つような感じだ。すると闇色と小さな金色の光の粒子が交じり合ったようなオーラが両掌から溢れ出しそれは徐々に、単行本のような形を象る。その光が消えると、闇色の表紙の本と、黒のスエードの巾着袋が彼の手に乗っていた。
「とりあえず一通り目を通せ。それとこの巾着袋の中に、タロットカード二種類が入っている。マルセイユ版とウェイト版だ」
と言って恵茉に差し出した。
「わーい! 有難う!! タロット二種類もついてるオリジナル教科書だー!」
と嬉しそうに受け取る恵茉だった。そしてアミ―は自分が出てきた部屋に恵末とベリアルを招き入れ、二人に座るようにソファーを指さした。
とベリアルは笑う。
「正午から夜8時までの間、二時間枠で一時間おきに予約が入ってる。その空いている時間に、今待機している占い師から基本を教われ。今日から二日間だ。鑑定中は浮いて上から見物すると良い」
と説明する。
「魔族の占い師なの?」
やや不安気に問いかける恵茉。
「ああ、占い専門の奴らさ」
とベリアルはニヤリと笑った。
「さて、中に入るぞ」
と言って消えた。次に恵茉の目に入ったのはシャンデリアだった。どうやら室内の電気付近に出現したらしい。
中はちょうどマンションの3LDKのようになっており、部屋が3つあった。フローリングの床。入ってすぐ入り口の左側に、高さ1m、幅20cm、奥行き15cm程のアメジストのドーム型原石が置かれている。真ん中の部屋には白いテーブルと椅子が4脚置かれており、テーブルには大きな紫色の高級座布団の上に、高さ1m、幅80cm、奥行き60cm程の水晶の原石が置かれていた。そして静かに下に降りる。
…カチャッ…恵茉がベリアルから降りると同時に、一番入り口に近いドアが開く。
「ヒッ!」
思わず悲鳴を上げて、ベリアルの背中に隠れる恵茉。
「その子が見習いか?」
その男は外見に似あわず、テノール歌手のような美声でベリアルに問いかけた。恐る恐る、ベリアルの背に隠れつつ、声の主をもう一度しっかり見ようとする恵茉。その男は身の丈約2m程ほど。ガッチリした体形を濃紺のローブで覆い、左腰にノコギリのような剣を差す。髪は炎に包まれ赤々と燃え、いや、炎自体が髪の毛なのか。顔は皮膚が無く、筋肉や血管が透けて見えていた。ギョロッとした瞳は虚ろな闇色だ。
「恵茉、怖がる事は無い。今は真の姿だが、コイツは美女から紳士、子供まで、ありとあらゆる姿に変身できる」
とベリアルは背後の恵茉を見下ろした。
「俺の名はアミ―。占い全般を司る。ま、主に黒魔術、と言われる方のな」
と言うと、男の頭の炎が一気に全身を包み、すぐに消えると
「わぁ……」
恵茉は感嘆の声を上げ、ベリアルの前に歩み出た。炎が消えたその男の姿は、高身長、長い手足、細身の色白。
淡い金髪の髪は首のあたりまで伸ばされ、サラサラふわふわと空気に舞う。淡いブルーの瞳はとても優し気だ。何やら天使を連想させる、甘いマスクの男に変貌を遂げていた。
「俺の得意分野は、占星術と文法・修辞学・弁証法・算術・幾何学天文学・音楽の自由七科だ。それと、召喚者に良い使い魔を与える事が出来る。他には、精霊達が守る財宝を奪い取る事も出来る。恵茉、と言ったか。お前にはこの二日間で、タロットと簡単な西洋占星術と数秘術を教える。後は、俺がどうやって客を取り込むのかしっかり研究しろ」
アミ―はゆっくりと説明をした。恵茉は大きく頷きながら、メモを取っている。
「良かった! 自由七科? だかを勉強させられるのかとウンザリしていたの。使い魔って、欲しいって言えば貰えるの? 代償は何? 精霊さんのお宝を泥棒しちゃうの?」
と何やら嬉しそうに一気に捲し立て、質問をしてくる。そんな様子に唖然とするアミ―に、苦笑するベリアル。
だが、アミ―はすぐに冷静さを取り戻すと、
「質問に答えよう。正式に手続きを踏んで召喚された場合に限り、希望すれば使い魔を与える。勿論、本人の寿命、または命より大切なものを代償にな。泥棒、まぁそういう事だ」
と落ち着いて答えた。恵茉はふむふむ、と頷きながらメモを取る。
「あ! そういえば代償に貰った命とか、その人間の運気とか美貌とか、その貰った代償はどうしているの?何かに使うの?」
と矢継ぎ早に質問する恵茉。再び唖然とするアミー。すまんな、というように彼の背中を軽く叩くベリアル。ゴホン、とアミーは咳払いをし、仕切り直しをはかると
「俺達の言う代償とは、お前達人間でいうところの報酬だ。そう考えると、分かりやすいだろう。代償に貰ったものは、魔族それぞれにより使い方は異なる。あるものは食らい、あるものは好きなものに加工して飾ったり。またあるものは『魔界換金所』人間の金や魔族の金に変えたり。そんな感じだ。ちなみに俺は気分次第で金にしたり食ったりと色々だ」
と締めくくった。恵茉は満足そうに微笑む。ホッとしたアミーは、
「今から一時間半後に最初の客が来る。それまでに少し勉強だ」
と言うと、胸の前で両手の平を軽く合わせる。まるで小さな毬を持つような感じだ。すると闇色と小さな金色の光の粒子が交じり合ったようなオーラが両掌から溢れ出しそれは徐々に、単行本のような形を象る。その光が消えると、闇色の表紙の本と、黒のスエードの巾着袋が彼の手に乗っていた。
「とりあえず一通り目を通せ。それとこの巾着袋の中に、タロットカード二種類が入っている。マルセイユ版とウェイト版だ」
と言って恵茉に差し出した。
「わーい! 有難う!! タロット二種類もついてるオリジナル教科書だー!」
と嬉しそうに受け取る恵茉だった。そしてアミ―は自分が出てきた部屋に恵末とベリアルを招き入れ、二人に座るようにソファーを指さした。
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