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第三話
光のカーテンと水琴窟
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(なんか、良いなぁ。本格的に京都に来ました!て感じがする)
そんな事思いながら、気取って抹茶を口に含んだ。お茶菓子を食べてみる。甘さ控えめで上品な美味しさだ。
ここに辿り着く前の景色もまた素晴らしかった。観光客が足を止めそうなお店が立ち並ぶ中、ひたすらお目当ての場所を目指す。一刻も早く一息ついて、癒されたかった。
(凄い、緑の楽園だ!)
そう実感するほど、自然豊かな森に囲まれていた。清流の音がまた、耳に心地良い。陽射しは強い筈なのに、樹木の葉が保護の役割を果たし、限り無く優しい木漏れ日となって地上に届く。そうして最初にやって来た場所は、『宝泉院』であった。そこで名物の『五葉松』を眺めながら抹茶を頂き、『水琴窟』で魂の浄化を計る事を目的としていた。
何故水琴窟に興味を持ったかというと、何気なくつけたテレビで癒しの音特集というものをやっていて、その中に含まれていたのだ。以来、いつか生で聞いてみたいと思っていた。
(樹齢七百歳かぁ。何だろう、仙人風の御老公様を想像しちゃうなぁ)
目の前に広がる『五葉松』を眺める。思いの外混雑はせず、静かにゆるりと抹茶と景色を堪能出来た。建物の天井は、有名な『血天井』だったが、少しも怪談めいた怖さは無い。むしろ畏敬の念を抱き、襟を正す想いがした。それは親しみ易い住職の人柄のせいもあるだろうか。そして軽やかで涼やかな音が耳に心地良い。
(これが『水琴窟』の音色なのかぁ。浄化と癒しの音色、て本当だ!)
初めて聞く音にうっとりした。文字通り、少し琴の音に似ている。「天上界の琴の調べ」だ、と思った。
(きっと、天上界のお琴はね、水で出来た糸で出来ているんだよ)
そんな風に空想してみる。直接水琴窟を見に行こうと席を立った。
「うわぁ!素敵、これは癒される。『緑』じゃなくて『翠』だ!」
声に出して感想を述べる。次に訪れた場所は『三千院』。そこは安らぎの翠の地だった。まさに『天然の翠のベルベッド』が敷き詰められた大地だった。観光客はかなり居たが、それすらも気にならないほど『苔むす庭』に夢中だった。周りを囲む木々も優しく柔らかな緑で、陽射しを優しく吸収し木漏れ日として地上に降り注いでいる。まるで『天使の梯子』のようだ。
「お地蔵さんもなんて可愛らしい。どれ、えーと、失礼します! お写真撮らせて頂きます!」
人目も気にせずはしゃいでいる。屈み込んで携帯を構え、苔を纏った地蔵の写真を撮る。それから何となく自らの服装を改めて確認してみた。パステルグリーンと白のストライプのTシャツワンピースに藍色のカラーパンツ、セピア色のスニーカーといういでたちのあたし。何とこの雰囲気に溶け込んでいるのだろう、と恍惚として天を仰ぐ。クスッと笑った。
(何だか森の妖精になった気分)
本当にそんな気がした。しばらく目を閉じて清らかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。息を吐く度に、嫉妬心や何をやっても駄目な自分への怒りなど、淀んだ感情を吐き出す。そして息を吸い込む時は、翠の癒しと浄化の力を吸い込むように、ゆっくりと、何度も。少しずつ、興奮していた感情が穏やかになっていく。そして、観光客の話し声なども周りの音も気にならなくなっていく。やがて静寂が訪れた。
(これが、無の境地というものなのかな)
ぼんやりと感じる。
ふと、水琴窟の音色が響いて来た。
(あれ? ここにも水琴窟ってあったのかな? 新しく出来た、とか。宝泉院の水琴窟の音が、風に乗ってここまで来たとか?)
興味をそそられて目を開けた。左奥の、音のする方へ近づく。
「あれ? さっきこんな風になっていたっけ? 光線の加減かな?」
思わず声を張り上げた。その場所は、少し奥にいぶし銀を思わせる色の水琴窟があるではないか。しかも、木々の隙間から一斉に木漏れ日が差し、まるで地上に降り立った天使の梯子のようになっている。惹き込まれるようにその場所を目指した。その場所一部分だけ別空間のようだ。しかも誰もいない。水琴窟の音が、殊更誘うように耳に響く。
「素敵! 光のカーテンみたい。ここを開けると異世界転移、とか。なーんてね、うふふふふ。本物の光のカーテンだったりして」
と笑いながら光のカーテンのように見える部分に右手で触れる。
「えっ? 嘘っ? どうなってるの?」
光に触れただけの筈が、実際に絹のような感触があったのだ。そのまま右に引いてカーテンを開けるような仕草をしてみる。水琴窟の音がそれに合わせて鳴るように響いた。
「本当に開くんだ。光のカーテンだったの? どういう仕掛け?」
半ばパニックになりつつも、心の中ではドッキリ体験等と仕掛けの演出なのだろう思っていた。その空間に足を踏み入れる。
そんな事思いながら、気取って抹茶を口に含んだ。お茶菓子を食べてみる。甘さ控えめで上品な美味しさだ。
ここに辿り着く前の景色もまた素晴らしかった。観光客が足を止めそうなお店が立ち並ぶ中、ひたすらお目当ての場所を目指す。一刻も早く一息ついて、癒されたかった。
(凄い、緑の楽園だ!)
そう実感するほど、自然豊かな森に囲まれていた。清流の音がまた、耳に心地良い。陽射しは強い筈なのに、樹木の葉が保護の役割を果たし、限り無く優しい木漏れ日となって地上に届く。そうして最初にやって来た場所は、『宝泉院』であった。そこで名物の『五葉松』を眺めながら抹茶を頂き、『水琴窟』で魂の浄化を計る事を目的としていた。
何故水琴窟に興味を持ったかというと、何気なくつけたテレビで癒しの音特集というものをやっていて、その中に含まれていたのだ。以来、いつか生で聞いてみたいと思っていた。
(樹齢七百歳かぁ。何だろう、仙人風の御老公様を想像しちゃうなぁ)
目の前に広がる『五葉松』を眺める。思いの外混雑はせず、静かにゆるりと抹茶と景色を堪能出来た。建物の天井は、有名な『血天井』だったが、少しも怪談めいた怖さは無い。むしろ畏敬の念を抱き、襟を正す想いがした。それは親しみ易い住職の人柄のせいもあるだろうか。そして軽やかで涼やかな音が耳に心地良い。
(これが『水琴窟』の音色なのかぁ。浄化と癒しの音色、て本当だ!)
初めて聞く音にうっとりした。文字通り、少し琴の音に似ている。「天上界の琴の調べ」だ、と思った。
(きっと、天上界のお琴はね、水で出来た糸で出来ているんだよ)
そんな風に空想してみる。直接水琴窟を見に行こうと席を立った。
「うわぁ!素敵、これは癒される。『緑』じゃなくて『翠』だ!」
声に出して感想を述べる。次に訪れた場所は『三千院』。そこは安らぎの翠の地だった。まさに『天然の翠のベルベッド』が敷き詰められた大地だった。観光客はかなり居たが、それすらも気にならないほど『苔むす庭』に夢中だった。周りを囲む木々も優しく柔らかな緑で、陽射しを優しく吸収し木漏れ日として地上に降り注いでいる。まるで『天使の梯子』のようだ。
「お地蔵さんもなんて可愛らしい。どれ、えーと、失礼します! お写真撮らせて頂きます!」
人目も気にせずはしゃいでいる。屈み込んで携帯を構え、苔を纏った地蔵の写真を撮る。それから何となく自らの服装を改めて確認してみた。パステルグリーンと白のストライプのTシャツワンピースに藍色のカラーパンツ、セピア色のスニーカーといういでたちのあたし。何とこの雰囲気に溶け込んでいるのだろう、と恍惚として天を仰ぐ。クスッと笑った。
(何だか森の妖精になった気分)
本当にそんな気がした。しばらく目を閉じて清らかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。息を吐く度に、嫉妬心や何をやっても駄目な自分への怒りなど、淀んだ感情を吐き出す。そして息を吸い込む時は、翠の癒しと浄化の力を吸い込むように、ゆっくりと、何度も。少しずつ、興奮していた感情が穏やかになっていく。そして、観光客の話し声なども周りの音も気にならなくなっていく。やがて静寂が訪れた。
(これが、無の境地というものなのかな)
ぼんやりと感じる。
ふと、水琴窟の音色が響いて来た。
(あれ? ここにも水琴窟ってあったのかな? 新しく出来た、とか。宝泉院の水琴窟の音が、風に乗ってここまで来たとか?)
興味をそそられて目を開けた。左奥の、音のする方へ近づく。
「あれ? さっきこんな風になっていたっけ? 光線の加減かな?」
思わず声を張り上げた。その場所は、少し奥にいぶし銀を思わせる色の水琴窟があるではないか。しかも、木々の隙間から一斉に木漏れ日が差し、まるで地上に降り立った天使の梯子のようになっている。惹き込まれるようにその場所を目指した。その場所一部分だけ別空間のようだ。しかも誰もいない。水琴窟の音が、殊更誘うように耳に響く。
「素敵! 光のカーテンみたい。ここを開けると異世界転移、とか。なーんてね、うふふふふ。本物の光のカーテンだったりして」
と笑いながら光のカーテンのように見える部分に右手で触れる。
「えっ? 嘘っ? どうなってるの?」
光に触れただけの筈が、実際に絹のような感触があったのだ。そのまま右に引いてカーテンを開けるような仕草をしてみる。水琴窟の音がそれに合わせて鳴るように響いた。
「本当に開くんだ。光のカーテンだったの? どういう仕掛け?」
半ばパニックになりつつも、心の中ではドッキリ体験等と仕掛けの演出なのだろう思っていた。その空間に足を踏み入れる。
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