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第四話
不思議な館・前編
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「あれ? ここはどこ?」
驚いて声が裏返る。だって、光のカーテンを開けたらいきなり視界が開けて。そしたら街並みに立っていたんだもの。目の前にある建物は……
トン、と背中に何かがぶつかる。「ごめんなさい」通りを歩いていた女の人が声をかける。「すみません」と慌てて謝る。改めて通りを歩いている人は結構居て。というかここ、どこなの? さっきまで『苔むす庭』に居たのに。とりあえず、邪魔にならないようにカートをピタリと右脇につけて、目の前の建物の広場に移動しよう。広場は駐車場かな。よく手入れされたお庭みたいな感じで、周りは花木や花壇なんかで綺麗に囲ってあるけど。今日は定休日なのか誰も居なそうだ。ほら、入り口に『本日定休日』って看板掲げてるじゃない。
この建物、見たところ三階建ての瑠璃色の洋館みたいな感じだけど、何だろう? ドアも、もしかして……。変わった素材で出来ているような……。近づいて壁を触ってみる。もしかしてこれ……
「そう、この館はね、天然石で出来てるんだ」
「ひっ!」
突然背後からかけられた男の人の声にドキッとして短い悲鳴をあげちゃった。
「ごめんごめん、ビックリさせちゃったね」
だけど凄く優しそうでそれでいてよく通る声、どこかで聞いた事あるような……。恐る恐る振り返ると、そこに居たのは……
「いいえ、私こそ勝手に触ろうとしてすみません」
と謝罪しつつ、一目見て驚いた。細身で背の高いその人は束帯装束に身を包んでいたからだ。色白で端正な顔立ちは束帯装束が妙に似合う。黒々とした涼やかな目元は澄み切っていて、研磨された黒水晶ってこんな感じだろうな、と思わせる。あまりにも深く澄んでいて、じっと見つめていたら吸い込まれてしまいそうだ。まだ若そうに見えるけど、幾つくらいなんだろう?
「とんでもない!」
と、男の人は気さくに笑いかけた。釣られて自然に口元が綻ぶ。
「この壁はね、まずはしっかりと鉄筋コンクリートで骨組みを作って。その周りを天然石で囲んで創ってあるんだよ。勿論、雨風雪が凌げるように特殊加工してね」
と右目を軽く閉じてウィンクした。天然石の館? 密かに天然石マニアだったあたしは俄然興味が湧いた。
「全部天然石ですか?」
「そうだよ」
「じゃぁ、もしかしたら屋根はラピスラズリですか?」
「ご名答!」
「じゃあ、壁は煙水晶? ドアノブは金針水晶?」
「うんうん、正解だ! じゃぁ、壁は何だか分かるかい?」
「うーん……」
あたしは更に壁に近付いた。上品にキラキラ輝く白っぽい壁。
「真珠、ですか?」
「当たりだ! もしかして天然石が大好きなの?」
「はい、大好きです」
「そうか、それは良かった。それなら中に入ってみるかい? 天然石とかハーブとか、色々置いてあるから」
正直言って物凄く惹かれる。でも……
「え? 良いんですか? でも、定休日なんじゃ……」
「気にしないで。君は導かれて来たみたいだし。あ、そうそう。私は小野篁」
……小野篁? 平安時代の?……
「そう、君たちで言えば平安時代の人物だね」
とその人はにっこり笑った。何だかちょっと妖しい? コスプレ館なのかしら。さっきまで『苔むす庭』に居たのに……夢だわ、きっと。うん、そう。夢を見ているに違いないわ。
「おいで、小野小町も紫式部もいるよ」
え? やっぱり平安コスプレ館なの? でも、不審感よりも好奇心が勝った! だって夢だもの。 行ってみよう!
驚いて声が裏返る。だって、光のカーテンを開けたらいきなり視界が開けて。そしたら街並みに立っていたんだもの。目の前にある建物は……
トン、と背中に何かがぶつかる。「ごめんなさい」通りを歩いていた女の人が声をかける。「すみません」と慌てて謝る。改めて通りを歩いている人は結構居て。というかここ、どこなの? さっきまで『苔むす庭』に居たのに。とりあえず、邪魔にならないようにカートをピタリと右脇につけて、目の前の建物の広場に移動しよう。広場は駐車場かな。よく手入れされたお庭みたいな感じで、周りは花木や花壇なんかで綺麗に囲ってあるけど。今日は定休日なのか誰も居なそうだ。ほら、入り口に『本日定休日』って看板掲げてるじゃない。
この建物、見たところ三階建ての瑠璃色の洋館みたいな感じだけど、何だろう? ドアも、もしかして……。変わった素材で出来ているような……。近づいて壁を触ってみる。もしかしてこれ……
「そう、この館はね、天然石で出来てるんだ」
「ひっ!」
突然背後からかけられた男の人の声にドキッとして短い悲鳴をあげちゃった。
「ごめんごめん、ビックリさせちゃったね」
だけど凄く優しそうでそれでいてよく通る声、どこかで聞いた事あるような……。恐る恐る振り返ると、そこに居たのは……
「いいえ、私こそ勝手に触ろうとしてすみません」
と謝罪しつつ、一目見て驚いた。細身で背の高いその人は束帯装束に身を包んでいたからだ。色白で端正な顔立ちは束帯装束が妙に似合う。黒々とした涼やかな目元は澄み切っていて、研磨された黒水晶ってこんな感じだろうな、と思わせる。あまりにも深く澄んでいて、じっと見つめていたら吸い込まれてしまいそうだ。まだ若そうに見えるけど、幾つくらいなんだろう?
「とんでもない!」
と、男の人は気さくに笑いかけた。釣られて自然に口元が綻ぶ。
「この壁はね、まずはしっかりと鉄筋コンクリートで骨組みを作って。その周りを天然石で囲んで創ってあるんだよ。勿論、雨風雪が凌げるように特殊加工してね」
と右目を軽く閉じてウィンクした。天然石の館? 密かに天然石マニアだったあたしは俄然興味が湧いた。
「全部天然石ですか?」
「そうだよ」
「じゃぁ、もしかしたら屋根はラピスラズリですか?」
「ご名答!」
「じゃあ、壁は煙水晶? ドアノブは金針水晶?」
「うんうん、正解だ! じゃぁ、壁は何だか分かるかい?」
「うーん……」
あたしは更に壁に近付いた。上品にキラキラ輝く白っぽい壁。
「真珠、ですか?」
「当たりだ! もしかして天然石が大好きなの?」
「はい、大好きです」
「そうか、それは良かった。それなら中に入ってみるかい? 天然石とかハーブとか、色々置いてあるから」
正直言って物凄く惹かれる。でも……
「え? 良いんですか? でも、定休日なんじゃ……」
「気にしないで。君は導かれて来たみたいだし。あ、そうそう。私は小野篁」
……小野篁? 平安時代の?……
「そう、君たちで言えば平安時代の人物だね」
とその人はにっこり笑った。何だかちょっと妖しい? コスプレ館なのかしら。さっきまで『苔むす庭』に居たのに……夢だわ、きっと。うん、そう。夢を見ているに違いないわ。
「おいで、小野小町も紫式部もいるよ」
え? やっぱり平安コスプレ館なの? でも、不審感よりも好奇心が勝った! だって夢だもの。 行ってみよう!
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