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第七話
え? これって夢じゃないの???
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「そうなの。ここはね、水琴窟の音で癒されながら自然の恵みをふんだんに使った飲み物や食事、スイーツをゆったりと味わって貰う場所なの。天然石のアイテムでお守り効果や夢を叶える力をサポートしたりね」
小野小町さんが篁さんの後を引き継いだ。
「ヒーリングハウスみたいな感じですか?」
「そんな感じね、天然石のアクセサリーは、お願い事に合わせたり、誰かにプレゼントしたいとかリクエストにお応えしてオリジナルも作成してるの」
紫式部さんが説明してくれた。
「素敵ですね!」
本当にそう思った。夢じゃなくて本当にこんなお店あったら良いのに。平安コスプレもユニークで良いじゃん。
『りつか』ちゃんて素敵なお名前ね」
小野小町さんはそう言って笑顔を向けてくれた。
「確かに! どんな字を書くの?」
紫式部さんが身を乗り出す。あたしはいつの間にか篁さんがに勧められるままに、丸テーブルを皆で囲んで椅子に座っていた。
「有難うございます。立つ夏と書いて立夏です」
夏に生まれたからそう名付けたそうです、とは言わなかった。言えば自分の就活状況、ツイてない事が立て続けにあった事に触れてしまいかねないからだ。
「なるほど、生き生きとした感じで良いわね」
「フレッシュで元気貰えそう」
「有難うございます」
夢ならいつ覚めるか分からないし、質問してみちゃおうかな。だって気になるもん。
「ところで、皆さんの源氏名はその人物に特別な思い入れがあるのですか?」
……え? あたし、なんか拙い事聞いた? だって皆、一斉に黙ってしまって。それぞれの顔を見合わせてる。こんな気拙い雰囲気で目が覚めるの嫌だなぁ。すると三人は一斉に頷き合ってあたしを見つめた。六つの瞳に真顔で凝視されるのは無言の圧力を感じるぞ。篁さんが口を開いた。
「あのですね、立夏さんはもしかたら夢だと思っていませんかね?」
凄い、初めての夢だ。夢の中で夢の登場人物が夢だと思ってませんか、なんて聞いてくるなんて! 何だか早口言葉みたい。
「はい、夢ですよね」
「どうしてそう思うのでしょう?」
何だかどんどん変な夢になって来たなぁ。
「だって、少し前まで『三千院』に居たんですよ。それが、庭で苔を堪能していて。水琴窟の音に惹かれて行ってみたら木漏れ日が燦燦と降り注いでいて。軽い気持ちで光のカーテンを開ける仕草をしたら本当にカーテンみたいに開いてそしたらこちらの建物の前に立っていたんですもの。どう考えても夢ですよね?」
夢の中で夢の登場人物に夢ですよね? なんて変な夢。
「まぁ、そう考えるのも無理もありません。最初に言いましたね? あなたは導かれて来た、と」
「はい、これは確かに聞きました」
「こちらの館は、必要なご縁がある方しか来れないようになっていまして。特に定休日にいらして頂くなんて相当のご縁なのです。余程こちらに来る必要があったのでしょう」
「えっと、あの……」
よく分からないけど、御縁とか必要な人が導かれてとか、まさか……まさか怪しいカルト団体とか? いやいやいや、てか夢だし。
「まぁ、にわかには信じられないというのもよく分かります。ですがこれは夢でもなんでもなく紛れも現実なんですよ。……そうですね、軽く頬をつねってみると分かると思いますよ」
そうだ、そうしてみよう。どうせ夢だし、右手で右頬をつねって……
「痛っ!」
え? 本当に痛い。まさか……
「ほら、これで分かりましたか?」
篁さんも小町さんも紫式部さんも、ニコニコしながらあたしを見つめている。まさか、まさか……
「え? これって夢じゃないの???」
あたしは立ち上がってそう叫んでいた。
小野小町さんが篁さんの後を引き継いだ。
「ヒーリングハウスみたいな感じですか?」
「そんな感じね、天然石のアクセサリーは、お願い事に合わせたり、誰かにプレゼントしたいとかリクエストにお応えしてオリジナルも作成してるの」
紫式部さんが説明してくれた。
「素敵ですね!」
本当にそう思った。夢じゃなくて本当にこんなお店あったら良いのに。平安コスプレもユニークで良いじゃん。
『りつか』ちゃんて素敵なお名前ね」
小野小町さんはそう言って笑顔を向けてくれた。
「確かに! どんな字を書くの?」
紫式部さんが身を乗り出す。あたしはいつの間にか篁さんがに勧められるままに、丸テーブルを皆で囲んで椅子に座っていた。
「有難うございます。立つ夏と書いて立夏です」
夏に生まれたからそう名付けたそうです、とは言わなかった。言えば自分の就活状況、ツイてない事が立て続けにあった事に触れてしまいかねないからだ。
「なるほど、生き生きとした感じで良いわね」
「フレッシュで元気貰えそう」
「有難うございます」
夢ならいつ覚めるか分からないし、質問してみちゃおうかな。だって気になるもん。
「ところで、皆さんの源氏名はその人物に特別な思い入れがあるのですか?」
……え? あたし、なんか拙い事聞いた? だって皆、一斉に黙ってしまって。それぞれの顔を見合わせてる。こんな気拙い雰囲気で目が覚めるの嫌だなぁ。すると三人は一斉に頷き合ってあたしを見つめた。六つの瞳に真顔で凝視されるのは無言の圧力を感じるぞ。篁さんが口を開いた。
「あのですね、立夏さんはもしかたら夢だと思っていませんかね?」
凄い、初めての夢だ。夢の中で夢の登場人物が夢だと思ってませんか、なんて聞いてくるなんて! 何だか早口言葉みたい。
「はい、夢ですよね」
「どうしてそう思うのでしょう?」
何だかどんどん変な夢になって来たなぁ。
「だって、少し前まで『三千院』に居たんですよ。それが、庭で苔を堪能していて。水琴窟の音に惹かれて行ってみたら木漏れ日が燦燦と降り注いでいて。軽い気持ちで光のカーテンを開ける仕草をしたら本当にカーテンみたいに開いてそしたらこちらの建物の前に立っていたんですもの。どう考えても夢ですよね?」
夢の中で夢の登場人物に夢ですよね? なんて変な夢。
「まぁ、そう考えるのも無理もありません。最初に言いましたね? あなたは導かれて来た、と」
「はい、これは確かに聞きました」
「こちらの館は、必要なご縁がある方しか来れないようになっていまして。特に定休日にいらして頂くなんて相当のご縁なのです。余程こちらに来る必要があったのでしょう」
「えっと、あの……」
よく分からないけど、御縁とか必要な人が導かれてとか、まさか……まさか怪しいカルト団体とか? いやいやいや、てか夢だし。
「まぁ、にわかには信じられないというのもよく分かります。ですがこれは夢でもなんでもなく紛れも現実なんですよ。……そうですね、軽く頬をつねってみると分かると思いますよ」
そうだ、そうしてみよう。どうせ夢だし、右手で右頬をつねって……
「痛っ!」
え? 本当に痛い。まさか……
「ほら、これで分かりましたか?」
篁さんも小町さんも紫式部さんも、ニコニコしながらあたしを見つめている。まさか、まさか……
「え? これって夢じゃないの???」
あたしは立ち上がってそう叫んでいた。
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